歴史の中の日本 (中公文庫) 司馬 遼太郎 (1994/06) 中央公論社 この商品の詳細を見る |
今回は、司馬遼太郎氏のエッセイの中でも特に気に入っている作品を紹介したい。司馬氏があちこちの雑誌や新聞に寄稿した、日本史の小話から作品を書いたあとの心境、さらに著者の日常を書いたエッセイまでがガッと一冊にまとめられているのだが、何度読んでも面白くて、年2回のペースで読んでいる。
「大坂城の時代」という稿があるのだが、これを読むと、大坂の陣を描いた作品のタイトルが、何故『城塞』なのかがわかる。これだけでも読む価値あるよ、ホント。「白石と松陰の場合」では、“学問というのは、態度なのである”の一文に、何度読んでも感心しきり。この二篇が特に俺のお気に入りだな。
歴史以外のエッセイも面白く、読んだ人はわかると思うが、特に「私の愛妻記」は秀逸。奥さんの福田みどり氏との馴れ初めから結婚後の生活を赤裸々に書いちゃってる。この稿の文は、著者の照れがそのまま滲み出ていて、“司馬遼太郎の文”としては、他では見れない文体かも知れぬ。ほのぼのとしていて可愛い文章なのだ。これは読む価値あり。
歴史の知識に感心して吸収しつつ、司馬氏の意外な一面に触れられる、ステキな一冊。司馬遼太郎ファンは是非読んでいただきたい。しかし司馬遼太郎ファンは、紹介するまでもなく、既に読んでいると思われるので、ことさら俺が「読んでいただきたい」という必要もないような気もする。残念。