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  2. 統計的考察

基礎研究 豪ドルの1日の値幅(レンジ)について

AUD/USDの1日の値幅、つまりその日の高値と安値の差を考え、
その値が長期間に渡り何か特徴を持つかどうかを調べてみました。

まず研究対象とする値は、
値幅 = 高値 - 安値 の代わりに

r1 = 100 × Ln(高値/安値) 

とします。

※ Ln:自然対数


このr1についてエクセルを使用し、
1999年から直近までの基本統計量を調べると以下のような表になります。
FXシステムトレード研究

平均値は1.21%、つまり豪ドルは1日で平均1.21%ほど上下に変動することがわかります。

尖度や歪度の値に注目すると、両方とも0から離れた値をとっています。

つまり、豪ドルの1日分レンジの分布は正規分布からかけ離れていることを示しています。

実際ヒストグラムにしてみると以下のようになり、
右に長いテールが見られます。
FXシステムトレード研究

ちょっと見づらいのですが、最も右の8.4%付近でも頻度は0にはなっていません。
非常に稀ですが、1日5%以上の大きな変動が過去に何度か訪れています。
今流行りの言葉で言うと「想定外」ってやつです。


ここで、上で求めたr1にさらにLogをとった

r2 = Ln(r1)

を考えてみます。


r2についての基本統計量は以下の表になります。

FXシステムトレード研究

注目すべきは尖度や歪度の値です。
両方とも0に近くになっており、正規分布に近づいたことが示されています。


実際にヒストグラムを見てみると以下のグラフのように、
左右対称のベルシェイプ形の頻度分布が出てきます。
FXシステムトレード研究


最後に、(前日のr2, 当日のr2)を散布図にとってみると
非常に強い相関が確認できます。

FXシステムトレード研究



参考記事: 基本統計量で見るドル円相場の変化

一流システムトレーダーと三流システムトレーダーの違い

土屋氏の記事に紹介された「(普通の)科学者と(三流)ジャーナリストのまとめ」が秀逸でした。


オリジナルは上のリンクをたどって読んでいただくことにして、
本ブログでは、科学者とジャーナリストを「一流システムトレーダー」と「三流システムトレーダー」に勝手に置き換えて紹介してみます。

【1】
一流システムトレーダーは自説を否定する事例を探す。
三流システムトレーダーは自説を補強する事例を探す。

【2】
一流システムトレーダーは反例が見つかると自説は否定されたと考える。
三流システムトレーダーは反例を気にせず自説は証明されたと考える。

【3】
一流システムトレーダーはひとつの例では不安である。
三流システムトレーダーはひとつ例が見つかれば大満足である。

【4】
一流システムトレーダーは事実から論理を導き出す。
三流システムトレーダーは論理にあう事実を見つけ出す。なければ創り出すこともある。

【5】
一流システムトレーダーは相関関係が因果関係かどうかを考える。
三流システムトレーダーは相関関係は因果関係だと考える。ただし因果の方向は任意である。

【6】
一流システムトレーダーは抽出した標本が母集団を代表しているかどうかを考える。
三流システムトレーダーは抽出した標本が母集団を代表していると思いこむ。



追伸

結果的に株のやられも軽微で済みました。
運用を停止して様子をうかがっていたFXシステムの
パフォーマンスにも異常は見られなかったので先週木曜より運用を再開しています。

逆張り脳

個人投資家の逆張り好きについては昔からよく言われていることです。

トレンドフォローが体に染み付いた私からすると、非常に奇妙な傾向なのですが
一体なぜそんなに逆張りが好きなんだろうと考えてみました。

※ここでの「逆張り」とは統計的な裏付けもなく、単なる値頃感で
※価格の反転を期待して売買することを指すことにします


簡単に言うと、「逆張りが心地いい」のだと思います。

私が考える理由には2つあります。

(1)逆張るという行為が、他人と違う何か特別なことをしていると錯覚している

(2)確率の誤謬


(1)については、前回の記事「くりっく365逆張りシステム
を読んでいただければわかるように、けっして

× 逆張り = まわりと逆のことをやってる

わけではなく

逆張り = 実はまわりと同じことをやってる

ということがわかります。

と同時に、一貫して損失を被る方法だということがわかります
(一般論ではなく、くりっく365のドル円に関しての話ですが)。



(2)については、

コインの表が6回連続して出たら、それ以降は裏が出やすくなるような気がする
という潜在意識みたいなものがまだ頭の中のどこかに潜んでいるのが原因です。


そういうタイプの人は、
表が6回連続した後にさらに表にベットする行為について「心情的にやりづらい」なんて表現したりします。



確率を理解している人なら、

「そんなことわかってるさ、
コインの表が6回連続して出たとしても次に表が出る確率は1/2だ。」

と答えるでしょう。


しかしここで相手が次のように反論してきたらどうでしょう?

「でもだよ、確率的にはコインは投げた回数の半分だけ裏が出るはずだろ?」
「なのに今6回も表が出て裏が1回も出ないなんておかしいじゃないか?、確率的には半々なはずなのに」
「だから、もっと投げていれば今度は帳尻を合わすように裏が出やすくなって最終的には半々になるはずだろう。」
「もしそうならないんだったら、確率的に半々になるということさえも違うってことじゃないか?」


一見もっともらしいこの反論にうまく答えることができるでしょうか?


繰り返しになりますが、表が6回連続して出たとしても
それ以降裏が出やすくなるなんてことはありません。

わかりやすく言うと、コインはその後表が10000回、裏が10000回出て、
合計として見れば表が10006回、裏が10000回となります。

このとき表が出た回数は全体の50.015%、裏が出た回数は49.985%

半々になるという理論値に収束し、何も矛盾をきたさないのです。

基本統計量で見るドル円相場の変化

ここ何回か市場間分析をテーマに記事を書いてきたのですが、
一部の方には反響があったものの全体的な要望とはちょっとかけ離れていたようなので、今回はエクセルを使った分析の話をしたいと思います。


エクセルの「ツール」→「分析ツール」の中に「基本統計量」という項目がありますが
今回はこれを使います。

1.ドル円の日足終値をエクセルファイルとして用意する。

2.ドル円の5日間のリターン時系列を作る。

リターンの計算には、Ln(当日終値/5日前終値)を使用。
Lnは自然対数(Logの底がeになってるやつです)

3.2006年以降1年ごとに、5日間のリターン時系列に対する基本統計量を調べる。


調べた結果は以下のような表になります。

FXシステムトレード研究


表にはさまざまな統計的な指標が表示されますが、
もしこれらの中で知らないものがあれば、まずはwikipediaで調べてみましょう。
もしwikiの解説が抽象的すぎてわからない場合は、その意味がわかるまでググってみることです。

以前にも言いましたが、それが統計の簡単な勉強法です。



ここでは、尖度(せんど)歪度(わいど)について簡単に説明します。

この2つの統計量は、いま調べているドル円のリターンの頻度分布が
通常の正規分布のベルシェイプに比べどのように変形しているかを教えてくれるものです。


尖度(せんど)が正であれば、正規分布に比べ中心まわりの分布が高く尖っており、
裾は長くなっていることを示します。

イメージ的には東京タワーに長い裾がくっついたような分布です。

※尖度(せんど)には定義が2つありますが、ここでは正規分布でゼロとなる定義を採用。

尖度が負の場合は、東京ドームのように裾が短く、中心部が低い形状です。

FXシステムトレード研究

※上図はwikipediaより引用


歪度(わいど)が正であれば、分布の中心が正寄りに(右に)に歪んでいることを示し、
逆に負であれば左に歪んでいることを示します。

一般的に株価など多くの金融データにおいて、
尖度は正の値をとり、歪度は負の値をとることが知られています。


尖度が正となるのは、
価格変動が長い静穏期と短い大荒れ期で構成されており、
正規分布を仮定すると1万分の1といったような理論上あり得ないような小さな確率の現象が実際には年に1回程度必ず起こっているということです。
実際トレードを行っていれば直観的理解が可能でしょう。


尖度が値が大きく、分布の両端が長く太くなればなるほど
トレンドフォロー戦略が優位に機能することもわかるかと思います。

※リターンの分布形状とトレンドフォロー戦略の関係性については重要ですので
※また別の記事で取り上げるかもしれません。


歪度が負となるのは、
簡単に言えば、「コツコツ上げて、ズトンと落ちる」というパターンだということです。
これについても経験から納得できることですね。


さて、以上の点をふまえてドル円の2006年から2010年9月までの
年ごとの尖度と歪度に注目してみます。


尖度は2007年から2009年まで正の値で、特に2008年には2.72とかなり大きな値をとっています。
この期間はトレンドフォローが機能しやすい時期だと言えます。

事実、適当なトレンドフォローシステムを作って検証してやれば
2007年~2009年は悪くない数字を出してくるでしょう。

一方で、2006年と2010年には尖度は負となります。
この期間ではトレンドフォローシステムは苦戦するはずです。
チャートを見なくとも、尖度の数値だけでそうした判断が可能です。


歪度についてはどうでしょうか。
2006年~2008年までは負の値ですが、2009、2010と直近2年の値は正となっています。

つまり、コツコツ上げてズドンと落ちるパターンから、
コツコツ下げてズドンを上げるパターンへと変化したことを意味しています。

もし過去の傾向に合わせて売り買いのルールを非対称的に作ったシステムがあったとすれば、ここ2年のパターン変化に対応できずにドローダウンを食らっているはずです。


2010年は尖度が負でトレンドフォローが機能しづらい時期ですが、
同時に歪度も正となっており、上で述べた一般的な金融データの特徴とは真逆の特徴を示しています。

尖度が負 歪度は正

こうした事例は1999年以降初めての現象です。

これは5日間のリターンをとった調査に限定しているので
他の観察期間でも調べてやる必要がありますが、いずれにせよ珍しいことだと言えます。


また2009年と2010年は、それ以前に比べ
尖度、歪度の絶対値の大きさが小さく、正規分布からさほど歪んでいないということも
注目すべき特徴だと言えます。



◆9月28日追記

記事では5日間リターンとありますが、
読者の方から4日間ではないかというご指摘がありました。

私のミスです。5日を4日に訂正してお読みください。

なお、4日か5日で、尖度、歪度の数値に少し違いは出ますが、
基本的な傾向は変わりませんので、それ以外の文章はそのままです。

トレード損益の分布は正規分布になるとは限らない?

トレード損益のヒストグラムについての話です。

例えば中期トレンドフォローのようなシステムでは通常

1 低勝率
2 高いペイオフレシオ

という特徴を持っています。

つまり、小さいマイナス損益の頻度が高く、
小さなプラス損益の頻度は稀で、大きなプラス損益の頻度が少しある

ような分布図が予想されるわけです。

損益のヒストグラムをとったときに下図のような感じの
分布になりがちで、正規分布とはかけ離れたものになります。

FXシステムトレード研究
              (横軸は獲得pips、縦軸はその頻度)

このような分布においては、1トレードあたりの平均損益やその標準偏差
はあまり意味を持たないことになり、システムの優位性を統計的な観点から
議論できなくなってしまいます。


ここで、1トレードの損益ではなく、
数回ごとの合計損益についてヒストグラムをとるとどうでしょう?

得られる損益分布の形も変わり、下図のようになります。

FXシステムトレード研究



はっきりと「正規分布である」と断言できるレベルにはありませんが、
「正規分布ではない」と断言できるレベルでもなく、
平均値や標準偏差を用いて大雑把な議論が可能のようにも見えますね。

===
1トレード損益の分布図が明らかに(対数)正規分布から外れているような
場合、数トレード毎の合計損益で分布を取り直してやることで
正規分布もどきの分布が得られることがある。
                      ===

果たしてこのような方法による解析がいいのかどうかわかりません。

何回のトレード損益を合計するのか、恣意的。
平均値や標準偏差を用いた議論が可能なのはどのレベルからなのか?

など、いろいろな問題があります。

リターンの対数が正規分布で近似できることを仮定した文献は
よく見ますが、今回の例のような損益分布での扱い方については
今後の課題ですね。


次回は、1トレード損益の分布が正規分布で近似できる場合の扱い
について書きたいと思っています。


   【FX システムトレード派はこちら

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プロフィール

Phai

Author:Phai
4年前に専業トレーダーに転身。
トレンドフォロー系のシステムをメインに複数のシステムで資産運用を行っています。
メンバー100名以上→【FC2限定システムトレードコミュニティを立ち上げました

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