問題は人口動態だよ、馬鹿者!

というFT論説をGavyn Daviesが書いている(原題は「It’s the demography, stupid!」)。
そこで彼は、人口が自然利子率の低下に影響を与える経路として、以下の3つを挙げている*1。

  1. 労働供給の伸び率
    • 労働供給の伸び率が低下して、労働に比べて資本が過剰になれば、資本の収益率は下がり、新規投資の魅力も薄れる。これは実質金利を下げる。
  2. 依存人口比率
    • 労働者は退職者よりも貯蓄するため、依存人口比率が低いと、経済の貯蓄率が上がる。ベビーブーマーが労働力人口の一部だった2000年以前は、それによって先進国の貯蓄率が上がり、自然利子率は低下した。
    • ベビーブーマー退職後はこの傾向は逆転するはず。
  3. 平均寿命
    • 退職年齢が同じままで平均寿命が延びると、人々は老後に備えて、働いている間の貯蓄を増やす。これは貯蓄率を上げ、自然利子率を下げる。


また彼は、人口動態が自然利子率に与えた影響を定量的に示した論文として、以下の3つを挙げている。

  1. BOE(Lukasz Rachel and Thomas D Smith)
    • 過去30年間の自然利子率を約1%下げた。
  2. Carvalho, Ferrero and Nechio
    • 1990年以降の先進国の自然利子率を1.5%ポイント下げた。
  3. FRB(Etienne Gagnon, Benjamin K. Johannsen, and David Lopez-Salido)
    • 1980年以降の自然利子率とトレンドGDP成長率を1.25%ポイント下げた。


3つ目の論文の結果についてはスタンレー・フィッシャーが先週の講演で引用したとの由。

*1:この3つは最近の研究で浮かび上がったものだが、各要因の相対的な重要性に関してはコンセンサスが得られていないとの由。