JR東日本はインバウンド(訪日外国人)向けビジネスを強化した。7月1日、東京駅改札内にあるエキナカ商業施設内の66店舗で免税販売を開始。これら66店舗で買ったものならば、免税手続きを一括して行うことができる免税カウンターを設置して、訪日旅行客の利便性を高めた。
観光庁は今年4月、消費税免税店(輸出物品販売場)の制度を改正した。これまで専門店が個別に行う必要のあった免税販売手続きを、商業施設で一括して行うことができるようになった。この免税手続き一括カウンターを設置すれば、客は1店ごとに手続きをする必要がなくなるため、買い回りがしやすくなる。正式には「手続委託型輸出物品販売場制度」という。
複数店舗で買った商品を合算できるので、免税対象金額に届きやすいというメリットもある。例えば、家電製品や衣類など一般物品であれば1日に対象施設での合計購入金額が税抜きで1万1円以上、消耗品(食品・飲料、化粧品、医薬品)でも同5001円以上50万円以下という条件をクリアすれば、手続き後にその場で消費税分が現金で返ってくる。小額の買い物でも、複数の店舗で買い物をすれば合計が免税対象になりやすい。訪日旅行客にとってお得感があり、店側にも客の囲い込みにつながる利点がある。
この免税手続き一括カウンターは、導入当初はアウトレットやイオンを始めとする大型のショッピングセンターが取り入れる動きが目立っていた。しかし、最近は東京駅の駅ナカの導入に代表されるように、駅周辺でカウンター設置の動きが広がっている。
例えばJR東日本系の駅ビル「ルミネ」では、5月11日から新宿店や有楽町店など首都圏の5館7カ所に免税手続き一括カウンターを設置している。
訪日した旅行客向けのサービスが駅周辺で強化されている理由に、個人で旅行する外国人が増えていることが挙げられる。団体ツアー客はバスを主な移動手段としているが、FIT(=Foreign Independent Tour、個人旅行客)は、電車や地下鉄など公共交通機関を使って移動するのが特徴だ。そのためエキナカや駅ビルで買い物をする機会が増えているのである。
経済産業省が岡山の取り組みを大々的にアピール
例えば東京駅改札内地下1階グランスタ内に設けられた、総合案内カウンター「ステーションコンシェルジュ東京」における訪日外国人の利用件数は2012年度以降右肩上がりで伸びている。東日本大震災が起きる前の2010年度と比べても、2014年度は約5割増しとなった。
このように、都心部の買い物環境はどんどん良くなってきている。一方、地方はどうだろうか。免税手続き一括カウンターは地方活性化の起爆剤になると期待されているが、実際はあまり広がっていないのが実情だ。
経済産業省は5月27日、岡山市の表町商店街とロマンチック通り商店街に、全国で初めて商店街における免税手続き一括カウンターを設置したことを大々的に発表した。
百貨店の天満屋岡山本店にカウンターを置くことで、商店街と百貨店が連携。訪日旅行客がより広いエリアでショッピングを楽しめるように工夫した。両商店街に加盟している20店舗が対象となり、免税店数は一般型免税店10店舗と合わせて30店舗に拡大した。
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