「難しいなー」。ホンダと日産自動車が経営統合へ向けた協議が始まったことを正式に発表した23日の記者会見。記者から「相手のどこに引かれたのか」と問われたホンダの三部敏宏社長は、たじろいだ様子で小さくつぶやいた。
少し時間を置いてから、三部社長は「伝統があり尊敬に値する会社」と答えたものの、それまで歯切れの良い様子とは一転した、会見を象徴するひと幕となった。この問いの質問者であるモータージャーナリストの島下泰久氏の目には、両社がどのように映ったのか。島下氏に話を聞いた。
ホンダ、日産自動車の経営統合に向けた動きを聞いて、どのような印象を持ちましたか。
モータージャーナリスト・島下泰久氏(以下、島下氏):やはり、企業文化の面でうまくいきそうなのか、「?(はてな)」でした。現時点で何を補完し合えるのか、何が共通しているのかが見えにくい。どちらかの製品を共有化したとしても、何か画期的なものが生まれそうではない。お互いに作ってきたものの精神、クルマ作りがあまりにも違うので、最初聞いた時にはうまくいくのか、疑問でした。
意外と悪くない
ただ、2030年より先にカーボンニュートラル(CN、温暖化ガス排出量実質ゼロ)や自動化が進んでいくのであろう自動車市場を見た時に、この統合は意外と悪くないのではないかと思っています。両社の描いている未来のモビリティー像がかけ離れていない。今はもしかしたら、化けて面白いことになるのではないかという気がしています。
具体的に、両社はどのようなモビリティー像を描いているのでしょうか。
島下氏:両社は、これまで同じようなことをやってきています。電気自動車(EV)の次世代電池の本命とされる「全固体電池」について、ホンダは24年11月、栃木県にある実証拠点を公開しました。日産自動車も22年に公開しています。ホンダは電動化を掲げており、日産自動車もいち早く量産EV「リーフ」を発売するなど、早くからEVの未来に懸けてきました。
自動運転についても、ホンダは投資を加速しており、日産自動車も横浜市周辺での実証実験を繰り返しています。電動で、自動運転のクルマが行き交う世の中という未来像を描き、米テスラや中国の比亜迪(BYD)に負けないぞという取り組みをしてきています。同じようなことをやってきたので、バッティングするという見方もできますが、お互いの知見を持ち寄れば技術を加速させることもできます。
EV、自動運転でいずれもテスラや中国勢に後れを取っているのではないでしょうか。両社が競争力を持つ技術は何でしょうか。
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