『Easy Come, Easy Go』Marianne Faithfull
ルーファスの参加作を追っていたらたどり着いたマリアンヌ・フェイスフルの新作『イージー・カム、イージー・ゴー』。3枚組み(DVD1枚)なので価格も高く、UKだけでのリリースだったようで到着まで時間がかかるっぽかったので、欲しいなと思いつつスルーしていたけれど、アントニーが参加していると知ってとうとう買ってしまった。
マリアンヌ・フェイスフルの今、には特に興味が無いし、実際ここで聞ける声は62歳という年以上に老けたもので、歌もお世辞にも上手いとは言えない。けれど、プロデュースのハル・ウィルナー、バックを務めるマーク・リボー、グレッグ・コーエン、ジム・ホワイト(ドラムの方)、レニー・ピケット(TOP)、ルーファス・ウェインライトやルー・リードの近作にも参加するアート・バロン、スティーヴン・バーンスタイン、マキシム・モストン、ロブ・バーガーら熟練のミュージシャンが、マリアンヌの微妙な味わいを上手くサポートし、しっとりとした大人の音に。曲はすべてカヴァー。ドリー・パートンに始まり、エリントン「Solitude」、ベッシー・スミス、ブライアン・イーノ、ランディ・ニューマン、ジュディ・シル、モリッシー、サラ・ヴォーン、トラフィックのような古い曲のほか、ニーコ・ケイスら最近のミュージシャンの曲も。選曲は多岐にわたるものの、ジャズ、室内楽的な風合いをたっぷり含んだふくよかなアレンジによるサウンドはどれも聞きものだ。ゲストにはルーファス、アントニーに加え、キース・リチャーズ!、キャット・パワー、ショーン・レノン、ニック・ケイヴ、ジャーヴィス・コッカー、テディ・トンプソン、ジェニ・マルダー、ケイト&アンナ・マクギャリグルら、幅広いような狭いような(狭いか)面々が参加。二世が4人も、というかルーファス周りが多い。
お目当てのルーファスはフリー・フォーク系のバンド、エスパーズの「Children of Stone」にヴォーカルで参加しているが、サビにコーラスをかぶせているだけで、目立たず残念。代わりといっては何だけれど、アントニーが歌うミラクルズの「Ohh Baby Baby」が素晴らしい! ソウル史上屈指の美しいメロディを持つこの曲を、アントニーが熱唱する。グッとスロー・ダウンしたテンポ、マーク・リボーのワウ・カッティングとホーン隊の柔らかいアンサンブルに、スモーキー・ロビンソンとアントニーが美しく重なる。後半テンポを上げ、ゴスペル調になる展開も見事。文句なしにこのアルバムのベスト・トラックだ。キースは「Sing Me Back Home」で共演しているがずいぶんとささやか。
マリアンヌの歌は基本下手(というか怖い)だが、バックが醸しだす雰囲気で、ときにとても魅力的に聞こえる。特に「Solitude」やタイトル曲、「Somewhere(A Place For You)」のオールド・ジャズ的な音を伴うと、良い感じで陰影がついて味わい深い。
が、いっそ全曲ゲスト・ヴォーカルが欲しかったというのが本当のところ。DVDはまだ見てない。
かわいい声だったのにねー。
【BEST ALBUM 2009 ロック/ポップス部門】
1. 『Easy Come, Easy Go』Marianne Faithfull
2008年リリースだけど、ルーファス、アントニー好きとしては見逃せないので。
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