『Storied Places』 Kenneth Pattengale
昨年末にCDBabyで見つけてはまったSSW、ケネス・パッテンゲイルの新作が出た。前のは2008年の6位にしてしまったけれど2007年のリリースだったようで。しかもそれがデビュー作か2枚目くらいに思っていたが、この新作が6枚目になるそう。めちゃめちゃ良いです。
前作は聞いてすぐにジョー・ヘンリーとトム・ウェイツを思い浮かべたが、ブックレットの“Thanks欄”にはその二人に加え、トムの奥さんキャスリーン・ブレナン、ギリアン・ウェルチとデヴィッド・ロウリングス、クリス・スミザー、そしてラウドン・ウェインライト3世の名前が、インスピレーションの元になった人たちとして挙げられている。フォーク、カントリー、リズム&ブルース、オールド・ジャズといったアメリカの古い音楽に対する愛情に溢れたサウンドはヴィンテージな音色も相まって温もりたっぷりだが、上のようなSSWの系譜ではアウトサイダー的な立ち位置の人をフェイヴァリットに挙げるだけあって、温かいなかにもじわりと苦みを忍ばせた、どこか屈折した歌を聞かせる。
アコギやピアノをメインに、アコーディオン、チェロ、マンドリン、管楽器の響きをささやかに添えた曲はどれも絶品。軽快なC&W調「Charlie」、オールド・ジャズ的な「Freckles」と続き、「Dig This Hole」「Desert」(エミリー・シモンのカヴァー)ではトム・ウェイツ/ジョー・ヘンリー的なダークなジャズ解釈を聞かせる。「Memories of an Owned Dog」ではランディ・ニューマンの語り口を借りてきて、アコギとアコーディオン、トロンボーンが絶妙に絡む「July 24」は1920~30年代の香りが漂い、ヴィンテージな手触りのバラード「On the Mend」「Last One To Know」あたりは同じくルーツ愛に溢れたザ・バンドにすらつながっていく。
身も蓋も無いことを言ってしまえば、曲が異常に良い。メロディもアレンジも完璧。アコギ始め、楽器の音色も素晴らしいし、かすれたケネスのヴォーカルもたまらなく良い。少なくとも、ジョー・ヘンリー、トム・ウェイツが好きな人には聞いてもらいたいです。僕は一生ものの一枚になりそうです。
「Freckles」1曲だけ映像あった。
【BEST ALBUM 2009 ロック/ポップス部門】
1. 『Storied Places』Kenneth Pattengale
2. 『Easy Come, Easy Go』Marianne Faithfull
ここで試聴できます。
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