さくやこのはな

まんがやアニメの元ネタっていうか、作品世界に織り込まれた神話・伝説・古典をゆるい感じで考察するよー。 いまのところ『咲―saki―』重点。忍殺もあるよ(予定)。

2012年12月

あおいです。
急に忙しくなってしまったので、これが年内最後の更新になりそう。時間ができたらまた何か書くかもしれませんが・・・ということで、若干振り返りなどを。

まず、咲―saki―まとめアンテナさま、そしてここを見てくださる皆様に深い感謝を。
意見や感想表出の機会、同じ作品を享受しているひとと交流する機会がもてたことは本当にありがたいです。来年もよろしくお願いいたします。

さて、『咲―saki―』の元ネタ考察をいくつか書いてみましたが、まったくもってこういうのは難しい。
前回の記事でもそうですが、「元ネタの可能性」はいくらでも出せる。でも、作者がこのネタを作品に織り込んだんだ!と証明することは・・・。
こじつけようと思えばいくらだってこじつけられてしまいます。

たとえば、前からちょくちょく話に出している『伊勢物語』23段奈良の幼馴染カップルの話ですが、その女性の名前を「あこ」とし、お姉さんがいると記述する鎌倉期の資料があります。
幼馴染の男女が大きくなってから歌を交わし、お互いの気持ちを確かめる際に、女が「振り分け髪も肩すぎぬ」と、伸びた髪の毛に言及しているところもなんだか憧ちゃんっぽい。憧ちゃんって、髪の毛に触れる描写がかなり多いですしね。
 
また、南北朝時代に書かれた『秋夜長物語』という作品には「園城寺の美しい稚児(寺院に仕える少年。坊さんの慰みものになることが多いです)が天狗にさらわれるが、竜神に助けられる」という場面があります。その稚児は最終的に命を絶ってしまうんですけども、怜と儚いところが似ている、と言われればそんな感じも(しないか)。

うーむ。
口ではなんとでも言えてしまうんだよなあ。

現時点では、「実はこのキャラの元ネタは○○だったんだよ!」「な、なんだってェー?!」みたいなスタンスではなく、 ゆるく可能性を提示して、皆様の会話や議論の足しにできるようなブログでありたいと思っています。
というわけで、来年もよろしくお願いします。新年一個目の更新はYG感想と有珠山の能力考察になる予定。


そうだ、秘本衆道会様の『魔法少女まどか☆マギカ』同人誌『読本 魔法少女 惑乎紛乎』(冬コミ三日目に東パ-37bで頒布されるそうですので、興味のあるかたはぜひ!)が私の中ではすごいインパクトで。ええ。
で、『咲―saki―』でこういうの書けないかどうなのか、と考えながら東京堂出版の『お伽草子事典』をめくっておりましたら、『京太郎物語』という室町時代の作品を発見。よりによって!何このド直球なタイトル!
皇太子が自分の身分を隠して『京太郎」と名乗り、美女をもとめて九州、大宰府にいくというお話。人々「キャー!京太郎さんステキー!」京太郎「俺、実は王子だったんだ☆」人々「王子ステキー!」って展開らしいです。これは二次創作の枠組みとして使えるかもしれん。舞台は交易の拠点である大宰府ですから、中国から麻雀めいたものが齎されていたとしてしまうことも可能でしょう。知らんけど。

しかし、闘牌描写を古語で綴るのって難しそう!挫折!

・・・だ、誰か余力のある方、いかがですか?

※ちょっと記事を修正しました

こんばんは。あおいです。

今日は永水女子のメンバーについて適当に考察するよ!どこかのブログと被ってたらごめんなさい・・・そして「あ、コイツの記事○○さんのと被ってるぞ」とお気づきの方はお教えいただけるとありがたいかな、って・・・

私はわりと妖怪や神話伝承が好きで、twitterで日本の妖怪を二時間おきに紹介してくれる「瓶詰妖怪」というアカウントをフォローしております。ある日そのツイートをぼーっと眺めていたら、少し気になるものがありました。 

天降女子【アモレオナグ】:鹿児島県奄美大島に伝わる。男を見ると笑って艶かしく誘惑し、これに負けると命を取られるという。また、水の入った柄杓を持っていて、これを飲むと命を取られるともいう。睨みつけて根負けさせれば助かるという。(昇曙夢『旅と伝説』通巻一号「あもれをなぐの伝説」など)

  部長に対して微笑するはるる。塞さんが見つめた相手(はっちゃん)の手を塞ぐ。 このあたりを連想させるっような内容じゃないでしょうか。どう?

永水のメンバーは「六女仙」を名乗っていて、基本的には「鹿児島の山中に住む仙女」のイメージが強いんですけど、はるるとはっちゃんの造型や副将戦にはこの「天降女子」のイメージが投影されている・・・可能性・・・があるかも。知らんけど。キャラクター設定の中に、いろいろな伝承が複合されてるのかな?

あとwikiの「天降女子」の記事(典拠がうまくたどれなかったんですけど、 参考文献として挙がっている村上健司氏の『妖怪事典』だと思います。手元にないのではっきりしたことは言えませんが)によれば、「天降女子」とは天女で、現れた際にはどんな好天の日でも小雨が降るのだとか。
えっと、二回戦も雨でしたね。で、大将戦の前半が終わった時点で止んでるんですよね。単行本10巻141ページで、シロが休憩に入った豊音に「雨止んでるね」と話しかけています。考えすぎといわれたらそれまでですけど、雨が止んだことと永水の敗退には関係がある・・・のかもしれません。このあと霞さんが「恐ろしいもの」を降ろして絶一門状態がはじまるんですけども。

霞さんが降ろしてる存在も気になりますね。イメージ映像だと女神っぽかったけど、あの世界だと姫様が降ろす「九面」も「女神」といわれています。九面ってサルタヒコ(男神)なども入っていたと思うんですけど・・・というわけで、「女神」というしばりで考えない方がいいのかもしれない。

宮崎県には霧島神宮と縁の深い「霞神社」があります。しかし、特に「恐ろしいもの」を想起させるような伝承はありません。その社殿の後方の岩の中に、霧島六所権現(霧島にある六つの神社。霧島神宮も含む)の使神「白蛇様」がいるとのことですが、こちらは「拝むと幸せになる」のだそう。

九州の伝承の中から恐ろしそうな存在を探してみると、おなじく宮崎県は高千穂の「鬼八」伝承が引っかかります。この鬼八には「乳ケ窟」という場所を根城としていたという話死して後もその荒ぶる霊が若い娘のいけにえを要求したという話があります。そういえば「恐ろしいもの」はどうも霞さんのおもちに宿っている感じでしたね。・・・でも宮崎だしな。霧島関連、あるいは天孫降臨関連の神話伝承を丹念に辿ってゆけば正解にたどり着けそうな気もするんですけど。うーむ。
絵の感じからすると「恐ろしいもの」は複数いそうでしたし、よくわからないですね・・・。

「Another」SSです。柿沼さんは出ません。
配役的には大野くん→恒一、鳴ちゃん→野口さん、杉山くん→勅使河原、丸尾くん→赤沢さん、長山くん→望月。①はこちら。

キートン「翌日」

まるこ(なんだか居心地が悪いなあ…みんなも同じみたい。いつもはあんなに騒がしいクラスなのに、今日は静まり返っているよ…)
まるこ(野口さん、どうしているだろう…ああ、野口さんの方を見たい。でも、そうしたら、野口さんを『いるもの』として扱ってしまうことになる…)
まるこ(そういえば今日は丸尾くんがお休みだねえ…)

先生、入ってくる。
先生「おはようございます。みなさん、今日もクラスの決めごとはきちんと守りましょうね」
みんな「はーい…」
まるこ(みんな元気がないねえ)
先生「さてみなさん、大野君がきょうからこのクラスに戻ってきます。大野君、入ってください」
大野「みんな、久しぶり!」
みんな、反応に困っている様子。
大野「―なんか新学期早々事故に遭っちゃって、まだ怪我が治りきってないけど、夏ごろにはサッカーもできるようになるからよ!よろしくな!」
控えめに拍手がある。大野、戸惑う。
大野「先生、なんかあったんですか?」
先生「では、大野君はこちらの、さくらさんの隣に座ってください」
大野「はーい」
先生「みなさん。大野君にいろいろ教えてあげてくださいね。今日は丸尾君がお休みですが、クラスの決めごとはきちんと守るようにしましょう」

休み時間。
大野「それでさ、びっくりしたよ―トラックがさ、目の前にどーんって!」
杉山「ほんと大変だったよな。サッカーできないし、大野の怪我が治るまで、教室の中でできる遊びを考えようぜ」
関口「教室の中でできる遊びかぁ…」
ブ―太郎「メンコはどうだブー」
はまじ「学校に持ってきちゃいけないって言われてるだろ」
まるこ「そうだ、牛乳瓶のふたをメンコにするってのは?」
杉山「さくら、たまにはいいこと思いつくじゃないか!」
はまじ「それなら学校にあっても怒られないもんな」
まるこ「へへっ」
大野「よし、頑張るぜ!」

教室の隅の汚れた古い机に野口さんが座っている。それは前日に先生がどこかから持ってきたもの。『いないもの』は代々、この机を使うのが決まりらしい。

大野「なあ、あれ」
杉山「どうした?」
大野「なんか野口の机、めちゃくちゃ汚くねえ?なんであんなの使ってんの?」
杉山(顔をそむけて黙る)
大野「杉山?」
みんな、大野君と目を合わせないようにして黙っている。
大野「どうしたんだよ…まあいいか。おい、野口!」
はまじ「おい、まずくないか(小声)」
ブ―太郎「どうしようブー。丸尾君は休みだブー」
関口「先生はちゃんと説明してないのかよ」
杉山「なんか、生徒同士のほうがいいからって言われたんだけど…説明するタイミングを逃しちゃって」
まるこ「ああ…どうするんだよ…」
大野「その机なんだよ?もっときれいなのと取り換えればいいのに。そこの城ヶ崎の机と取り換えちゃえば?つーか、先生に言った?」
野口「…」
大野「机になに書いてんの?―死者は、誰?ってどういう意味?」
まるこ(大野君はなにも知らないんだ…でもこれ、大丈夫なのかなあ…大野君は野口さんのことを『いるもの』として扱ってるわけで…)

 お姉ちゃん「お母さんだって危ないんだからねっ!」

まるこ(昨日は野口さんかわいそう、と思ったけど…でも、あたしゃモモエちゃんに会うまでは死にたくないし、お父さんやお母さん、お姉ちゃんが死ぬのも嫌だよ…)
まるこ(ああ、どうしたら…)
大野「無視んなよなー!なんかみんな、今日はおかしいぞ?」
まるこ(丸尾君さえいてくれればなんとかなっただろうに…)

杉山「おい大野!『いないもの』の相手をするのはよせ!ヤバいんだよ、それ!」
大野「なに言ってんだ?」
杉山「えっと…なんていうか…とにかくこっち戻ってこいよ、そこから離れて!」
大野「なあ、みぎわ」

近くにいたみぎわさんを大野君が呼び止める。

大野「なあ、何でみんな、こんな変なことになってるの?野口になんか問題あるの?」
みぎわ「野口?誰なの?それ」
大野「野口だよ野口!ここにいるじゃん」
みぎわ「知らないわ!私そんな人知らない!そこには誰もいない!」
大野「え…?」
キートン「丸尾君が休んだせいで事情を知らされていない大野君は困惑するばかりなのであった」

キートン「翌日」
丸尾「みなさん!昨日はズバリ、申し訳なかったでしょう!一週間前の饅頭を食べたら中ってしまって…」
杉山(ヒソヒソ)
丸尾「な、なんとーーーーーー!ズバリ、それは大変なことになっているでしょう!」
杉山「どうしたらいい?」
丸尾「少し考えさせてください…」

先生「昨日言った通り、今日は分数のテストをします」
まるこ(うっかりだよ…野口さんや大野君のことで頭がいっぱいで、さっぱりテストのことを忘れていたよ…)
まるこ(どうしよう…一問目からさっぱりだよ…ああ、算数のテストをするとみんなが不幸になる、っていう現象が起きていたら、こんなテストなんてしなくても
よかったはずなのに…現象さんももう少し空気を読んでほしいよ)
キートン「まことに自分勝手なまるこである」
野口さん、教室を出て行く。
まるこ(あれ?トイレかな?)
それを追いかけて、大野君まで教室を出て行く。
杉山「大野!どこ行くんだよ!」
丸尾「ズバリヤバいことになったでしょう!」
まるこ(大野君…野口さんが心配なんだ…そりゃそうだよ、みんなが野口さんを無視してるなんて、『現象』のことを知らない大野君から見たらただのいじめに見えるもんね…
正義感の強い大野君が野口さんを気にするのは当たり前だよ…)
先生「みなさん、落ち着いてください!先生が大野君を追いかけますから…―?!」

教室のドアが開いて、教頭先生が入ってくる。

教頭「みぎわさん!三年三組のみぎわさんはここにいますか!」
みぎわ「はい、私ですが」
教頭「大変です!お母様が―」

まるこ(そのあとのことは、あたしは現場を見たわけじゃないんだけど―みぎわさんのお母さんが急に病気で倒れて、みぎわさんは病院に向かおうとした。でも、みぎわさんは辿り着けなかった。
階段で滑って、そのときみぎわさんが持っていたカサ、お気に入りのピンクのカサがみぎわさんの喉に突き刺さり―
みぎわさんのお母さんも同じころ、病院で亡くなったという…)

笹山「みぎわさんのこと…あれ、やっぱり、『現象』なのかな…」
城ヶ崎「『いないもの』を作ったのに、なんで『現象』が起こるのよっ!」
笹山「大野君…話しかけてたじゃない」
城ヶ崎「大野君のせいってこと?」
たまちゃん「大野君が悪いわけじゃないよ…だって、大野君はなにも知らなかったじゃない?」
まるこ「そうだよねえ、たまちゃん」
城ヶ崎「ええ。そうね、だとするとほんとうに悪いのは…」

山根「大野君、やっぱりこのクラスの雰囲気、おかしいと思ったよね?」
大野「ああ」
小杉「おい、山根!」
山根「もう犠牲者は出ちゃってるし…『いないもの』を作っても何の意味もなかったってことだろ。じゃあ、もうやめてもいいと思うんだ。ねえ大野君、何か聞きたいことない?
なんでも答えるよ」
大野「じゃあまず…野口のことについて。野口を無視するのはどうしてだ?」
山根「野口―野口さんは…その…」
山根、腹を押さえて急に苦しみだす。
山根「ぐっ!ぐはっ!がはっ!胃が!胃腸が!」
小杉「山根ええええええええ!」

まるこ(山根が死んだ翌日、大野君は野口さんと一緒に「いないもの」にされた。もうひとり「いないもの」を増やせば、もしかしたら「現象」から逃れられるかもしれないって誰かが言いだしたんだ)
まるこ(ふたりはいったいどんな気持ちだろう)
母「まるこ、ごはんよ」
まるこ「ううん…あんまり食べたくないんだ(布団を被る)」
母「そう…いろいろあって辛いのよね…」
ひろし「まるこ、みぎわさんと山根のことは…大変だったな」
母「続けてふたりもクラスメイトが亡くなるなんてねえ…」
ひろし「けどな、お前がそんなふうに、何も食べないで嘆いてばっかりじゃあの二人の供養にはならねぇぞ。お前は早く元気になって、あいつらの分まで生きねえとよ」
母「いまのまるこにはちょっと、難しいと思うわ…」
ひろし「みぎわさんも山根もきっともっと生きたかったんだよ!お前がなぁ、自分の命を粗末にしたらあの二人が悲しむじゃねえか!」
友蔵「まるこや…」
母「おじいちゃんは先にご飯食べててください」
友蔵「まるこやと 呼べども呼べども 初夏の宵 友蔵心の俳句」
まるこ(お父さんもお母さんもこんなに優しい…)
まるこ(ひろしなんてあんなにいつもウザいのに…やっぱりひろしはあたしの大事なお父さんだよ…大好きなみんなを死なせたくないよ…だから、あたしも、「いないもの」を作る気持ちはわかるよ…大野君を無視すれば、「現象」から逃れられるんだとすれば…)
まるこ(でも大野君も、野口さんも、あたしには大事な友達なんだ…どっちも大事で、どちらかを不幸にしないともう一方が助からないなんて…ああ、何かいい方法はないのかな)

 野口「でも、私が『いないもの』じゃなかったら、他の誰かを『いないもの』にしなきゃいけない…そんなのはもっと嫌だね」

まるこ(…!)

キートン「最近『翌日』としか言ってない気がするが、『翌日』」
たまちゃん「まるちゃん、おはよう」
まるこ「…」
たまちゃん「…?」
まるこ「野口さん、大野君、おはよう」
丸尾「…!さくらさん!」
城ヶ崎「ちょっと、何言ってるのよ!」
まるこ「決めた。あたしゃ『いないもの』になるよ」
みんな「ええっ!」
まるこ「あたしゃねえ、クラスメイトを『いないもの』にしてみんなで無視するなんて性に合わないんだ!それぐらいなら自分が『いないもの』になるよ!」
野口「クックックッ…」
まるこ「というわけで、よろしく頼むよお二人さん。みんなもあたしをしっかり無視してくれよ。たまちゃんもとしこちゃんもあたしに話しかけないでくれよ」
たまちゃん「まるちゃん…(ぐすん)」
花輪「こういうときはどうすればいいんだいベイビー」
丸尾「とりあえず、さくらさんの言い分を聞いて、それから先生の指示を…」
まるこ「ちょいと野口さん。野口さんってお笑いに詳しかったよね」
大野「へえ、意外」
まるこ「野口さんがおすすめする芸人は絶対に半年以内に売れるようになるんだよ」
野口「クックックッ…この目が教えてくれるんだよ。この左目が」
大野「なにそれ?」
野口「この左目はみんなには見えないふたつのものが見える目なのさ…クックックッ…ひとつはこれから売れる芸人のオーラ。それからもうひとつは」

先生が入ってくる。なんだか憔悴した様子。

丸尾「先生!実はさくらさんが…」
先生「おはようございます…みなさん…みなさんは、元気ですか?クラスの決めごとを、ちゃんと守っていますか?先生は…もう…疲れました…
先生はみんなでこの一年間を無事に過ごして、それで終業式の日までみんな元気で…そうありたかった、そうありたかったのに…もう駄目です、
こんなに犠牲者が出てしまった…ウワアアアアアアアア!」
丸尾「せ、先生ッ!」

先生、手に持っていた包丁で自分の喉を?っ切る。阿鼻叫喚。みんな、廊下に逃げる。
教室内に立ち尽くすまるこ、大野君、野口さん。

野口さん「…死の色」

キートン「数日後」
永沢「見事にクラスの大半が休んでいるね」
藤木「ああ」
永沢「女子なんてほとんどが来ていないよ」
藤木「花輪君も休みだね」
永沢「なんでも、『ある』年だってわかると、金持ちの奴は引っ越すらしいのさ。花輪君も引っ越したか、海外の別荘にでもいるんじゃないかな。城ヶ崎あたりもそのうち引っ越すだろうね」
藤木「(笹山さんはどうするのかな…)引っ越すと何かいいことがあるのかい?」
永沢「『現象』の範囲はこの清水市の中だけだって話さ。清水市から外に出れば死ぬことはないらしい」
藤木「そうか…」
永沢「僕は無理さ。うちにはそんなお金がないからね…ところで藤木君、いま君は、どうしたら引っ越せるか一生懸命考えていたね」
藤木「そ、そんなことないよ!僕はここで一生懸命頑張るつもりさ!永沢君、君と一緒にね!」
永沢「そういうところが卑怯だね、藤木君は。引っ越したいなら引っ越したいとはっきり言えばいいのさ」
藤木「うう…」
永沢「おや。『いないもの』がまた増えたようだよ」

杉山「よお、大野!」
大野「お前、俺と喋って大丈夫なのか?事情は野口とさくらから聞いたけど、―俺と喋るとヤバいんだろ?」
杉山「『いないもの』を増やしても『現象』が止まらないなら、俺がお前と喋ったところでこれ以上事態が悪化することはないだろ。これまで無視しちまってごめんな」
大野「いいよ。気持ちはわかるから…誰だって死にたくねぇよな」
長山「ねえ、僕も入れてくれない?丸尾君には連絡済みさ」
まるこ「一気に仲間が増えたねえ」
長山「妹を守りたいから君たちを『いないもの』にしていたけど…こうなった以上…ね。ふたりには本当に済まなかったと思うよ」
野口「クックックッ…」
たまちゃん「じゃあ私もまるちゃんと一緒に『いないもの』になるよ!」
まるこ「たまちゃん!」
たまちゃん「まるちゃんと私はずっと一緒だよ!」

大野「なあ、一度始まってしまった『現象』を止める方法ってないのかな」
まるこ「そんなのがあったとしたら、とっくに誰かが試してるよ…」
杉山「だよなあ」
長山「あのさ…僕、ちょっとこの件について調べてみたんだけど…実はね、上級生からある噂を聞いたんだ。一回、途中で現象が止まった年があるって」
大野「本当に?」
長山「それがね、2年前、さくらさんのお姉さんが三年三組だった年なんだ」
まるこ「お姉ちゃんが!そういえば、前、『あたしは助かったけど』って言ってた…」
長山「何があったのか、お姉さんに聞いてもらえないかな」
まるこ「うん!」

まるこ、家に帰ってくる。
まるこ(とはいっても…どうやって切り出せばいいのかな…もうずっと、お姉ちゃん、口を利いてくれないし)
廊下でうろうろしていると友蔵がやってくる。
友蔵「おお、まるこや。どうしたんだい」
まるこ「おじいちゃん」
友蔵「最近は本当に大変じゃな、まるこ。先生も亡くなったと聞いたぞ。おじいちゃんはもうこの年じゃから友達を見送ることも多いが…まだ若いまるこには本当に辛いことじゃ…」
まるこ「…うん」
友蔵「みぎわさんや山根君のおじいちゃんおばあちゃんも辛いじゃろうなあ…未来のある小さな孫が死ぬのは…本当に、本当に悲しいことじゃよ…もうわしは、葬式なんか…葬式なんか…」ボロボロッ
まるこ「おじいちゃん、泣いてるの?」
友蔵「…感情移入しすぎてしもうた…そうじゃ、まるこが…まるこが死んでしまったらどうしようと思ってのう…」
まるこ「あたしゃ死なないよ!これから、まるこもお父さんもお母さんもお姉ちゃんもみんな元気で幸せに暮らす方法を考えるんだ!」
友蔵(わしが入ってないぞ、まるこよ…)
まるこ「ちょっとお姉ちゃんと話してくるね」
友蔵「お、おう」
友蔵(まるこやい わしは死んでも いいのかい 友蔵心の俳句)

まるこ「お姉ちゃん…」
お姉ちゃん「…なによ」
まるこ「お姉ちゃんも、三年三組だったんだね…」
お姉ちゃん「なんであんたがそんなことを知ってるのよ…」
まるこ「友達がこのことを調べてて、それで聞いたんだ…ねえお姉ちゃん、お姉ちゃんの年は途中で『現象』が止まったんだよね?どうして止まったの?」
お姉ちゃん「え…?…ああ、そうだ、確かに…でも…なんだか霧がかかったみたいで…思いだせない…」
まるこ「…」
お姉ちゃん「夏…そうだ、林間学校…林間学校に行ったときに何かがあって、それで…そうだ、あのときに、何かを」
まるこ「林間学校?!」
お姉ちゃん「そう…あたしが、止めたの」
まるこ「お姉ちゃんが?!」
お姉ちゃん「死者を、……に」
お姉ちゃん、倒れる。
まるこ「お母さん、おかあさーん!お姉ちゃんが!」

病院。
お母さん「お医者さんによれば、命に別条はないそうよ」
まるこ「よかったぁ…」
お姉ちゃん「ま…こ…」
まるこ「どうしたの?大丈夫?」
お姉ちゃん「まる…こ…教室に…アレを…隠したの…探して…」

長山「さくらさんのお姉さんは『あたしが止めた』『教室にアレを隠した』って、たしかに言ったんだね」
まるこ「う、うん…」
長山「とすると、さくらさんのお姉さんは『現象』を止めることに関わるなにかを、この教室に隠したってことだ」
杉山「なにかってなんだよ?」
大野「道具とか…?」
たまちゃん「でもすごい前進だね!まさかまるちゃんのお姉さんが『現象』を止めたなんて!」
大野「よし、教室の中をみんなで手分けして探してみようぜ!」

教室の中を探し回る一同。

まるこ「野口さん、頭に何付けてるの」
野口「クックックッ…」
杉山「ないなー」
長山「机の中やロッカーの中じゃすぐに見つかって処分されてしまうから『隠した』ことにはならないよね…もっと人目につきにくくて、そして次に三年三組になる
生徒に確実に渡る場所…」
大野「…!掃除用具入れ!」
大野は掃除用具入れを漁り、その天井にガムテープで貼り付けられたカセットテープを見つけ出す。
長山「これだ!」

テープを聞いてみる一同。それは「お姉ちゃん」による、この先三年三組で理不尽な「現象」に対峙しなければならない後輩たちへのメッセージであり、そして、罪の告白でもあった。

 三年前の林間学校で「現象」の犠牲者がたくさん出て、クラスメイトはみんなパニック状態になった。そしてお姉ちゃんは友人とちょっとした口論の果てにつかみ合いのけんかになり、相手を階段から突き落としてしまった。相手の頭からは血がたくさん出て動かなくなってしまった。お姉ちゃんは恐怖のあまりそのまま部屋に逃げ帰り、一晩中布団をかぶって過ごしたという。
 翌日、様子を見に行ってみると、そこには倒れた友人も、血痕もなかった。ああ、死んだわけじゃないんだ、部屋に戻ったんだ、と思ったらしいが、朝食の時間になってもその友人はいない。そして不思議なことに、だれもその友人のことを記憶していないのだ。みんなの記憶から、その友人の存在が抜け落ちてしまっていた。
 お姉ちゃんが家に帰ってから名簿を見ると、その子の名前はどこにもなかった…
 
お姉ちゃん「あの子が死者だったの。あたしはクラスに紛れ込んでいる死者を殺した。それによって『現象』が止まったの…いい?『現象』を止める方法はただひとつ、死者を死に還すこと。死者を、もう一度、死なせることよ」

まるこ「お姉ちゃん…お姉ちゃんがそんなことをしたっていうの…?」
たまちゃん「私怖いよ、まるちゃん」
大野「でも、これをすれば…災厄は止まる」
杉山「やるしかないんだ…」
長山「でもどうやって『死者』を見つけ出せばいいんだろう…?僕たちには、それがわからないよ…」
野口「クックックック…」

キートン「後半へつづく!」

 実はこのあたりで原作の11話を見てしまい「コレ無理だよぉ・・・」という気分になってしまったので、SSはここで終わっております。俺たちの戦いはこれからだEND。 続きが読みたい人が多ければ考えます。

ドーモ。あおいです。
開始から一ヶ月足らず、現時点ではほとんど咲ブログと化しているこの「さくやこのはな」ですが、私が昔書いたSSなんかもアップしていきたいなと思っております。というわけで今年のはじめに書いたAnotherSSをひっそりアップ。

鳴ちゃんは出ません。

松井さんと金木さんも出ません。

「ちびまる子ちゃん」の世界で「現象」が起きたら?というお話です。 クラスの座席表はこちらとかこちらを参照のこと。

「ここに描いた40人以外にもクラスメイトは十数人在籍しており、ときどきクラスのメンバーが入れ替わってます。座席は40人しかないのに数えてみると42人出演していた話もありました…^^;」そのクラス確実に「いないもの」混ざってるじゃん。「Another」ならみんな死んでた。
えっと、あと「けいおん!!」バージョンも見てみたいので誰か頼むぜ。

では以下からどーんとどーぞ!

商店街を歩いている藤木&長沢。

藤木「明日から三年生だね、永沢君」
永沢「そうだな、藤木君」
藤木「一緒のクラスになれるといいね」
永沢「僕は藤木君の面倒を見るなんてこりごりだけどね。僕は忙しいんだ、藤木君ごときに構っちゃいられないよ」
藤木「…」
永沢「ところで藤木君、君はもし自分が三年三組になってしまったらどうするつもりだい?」
藤木「三年三組?」
永沢「藤木君、まさか知らないのかい?三年三組の呪いを」

キートン山田「そのころ」

空き地にいるブー太郎、はまじ、小杉。
 
ブー太郎「なあ、ミサキって知ってるかブー。三年三組のミサキ。それにまつわる話」
はまじ「ミサキ…人の名前か~?」
ブー太郎「昔、そんな名前の生徒がいたらしいブー。そいつはすごい人気者だったらしいブー」
はまじ「そいつがどうしたんだ?」
小杉「俺知ってるぞ。そいつ、三年生のときに死んじゃったんだよな」
はまじ「ええっ?!」
ブー太郎「でも、みんな、ミサキが死んだことを受け入れられなかったらしいブー」
小杉「それで、みんなで、ミサキが生きているふりをして一年間過ごしたんだってさ」
はまじ「そんなことできるもんなのか?俺、ぜったい無理だぜ」
小杉「でも先生も協力してみんなで一年間やったらしいぞ。でさー、ここからが怖いんだよな」
ブー太郎「そうだブー」
はまじ「うわああああ聞きたくねええええええ」
ブー太郎「それは終業式の日のことだったブー」
小杉「みんなで撮った写真を現像してみると」
はまじ「うわああああああ」
小杉「そこには」
ブー太郎「ミサキの姿がうっすら映っていたらしいブー!」
はまじ(なんて話だよ…夜中に小便に行けなくなるじゃねーかよ…)

キートン「翌日」

たまちゃん「まるちゃん、見てみて!また一緒のクラスだよ!三年三組!」
まるこ「三年三組…」
たまちゃん「どうしたの?まるちゃん?」
まるこ「なんでもないよ…」

まるこ(昨日、お姉ちゃんが変なことを言ってたんだよね…)

お姉ちゃん「ねえまるこ。あんた明日から三年生よね…」
まるこ「そうだよ」
お姉ちゃん「三年三組にだけはならないでよね…なったらあたし、あんたのお姉ちゃんやめる」
まるこ「えっ!」
キートン「なんとも唐突である」
お姉ちゃん「おねがい、三年三組にだけはならないで…怖いの!もうあんな思いをするのはイヤなの!」
まるこ「お姉ちゃん、どうしたの…?」
お姉ちゃん「あたしは助かったけど…ああ、どうしてお母さんはまるこを生んだのかしら。一人っ子ならよかったのに…」
お母さん「こらっ!何を言ってるの!」
お姉ちゃん「お母さんだって危ないんだからねっ!でも、お母さんにはわかんないよっ!」ダダダッ
お母さん「ちょっと待ちなさい!」


キートン「しかし見事に三年三組になってしまったまるこであった」

丸尾(名簿を片手に)「40人…と。それではそこの花輪君!ズバリこの教室にある机の数を数えてください!」
花輪「どうしたんだい丸尾クン。机の数なんてどうでもいいじゃないか」
丸尾「ズバリこれは大事な問題でしょう!この丸尾末男、今年は『対策係』に任命されてやる気満々なのです!もし『ある年』だったとしても
だれひとり犠牲者を出さずにみんなで四年生に上がることを目標としてがんばるのです!」
山根「…40個だったよ」
花輪「ボクが数えても同じ結果だったよ、ベイビー」
丸尾「おお!」
山根「40個だったらどうだっていうんだい。なにか問題でもあるのかい?」
丸尾「ズバリこれで一安心でしょう!」

先生が入ってくる。

丸尾「先生!名簿によればズバリクラスは40人!そして机の数は40個でぴったりなのでしょう!」
先生「(小声)そうですか、それはよかったですね」

先生は野口さんをちらりと見る。

先生「(小声)では、〈いないもの〉を作る必要はなさそうです。彼女とは普通に接してください」
丸尾「ズバリ了解しましたでしょう!」

まるこ「丸尾くんは何を喜んでいるんだろうね」
たまちゃん「なんか、クラスの人数と机の数がぴったり合ったんだって」
まるこ「変なことに喜ぶ人だねえ。そんなの、隣のクラスからあまったのを貰ってくれば済む話なのに」
丸尾「野口さん!ズバリおはようでしょう!」
野口「クックックックッ…」
たまちゃん「野口さんも同じクラスなんだね。―おはよう、野口さん」

たまちゃん、まるこ、野口さんの傍に行く。

野口「クックックックッ…さくらさん、穂波さん、おはよう」
まるこ「一年間よろしくね野口さん」
野口「安心しない方がいい…気を付けて…もう、始まってるかもしれない…」
まるこ・たまちゃん「…?」
野口「クックックックッ…」

藤木「どうやら今年は『ない年』みたいだね。あー、なんだかほっとしたよ」
山根「もし『ある年』だったらこんなに暢気にしていられないよね。毎月クラスの関係者が死んじゃうっていうし」
藤木「春の日差しが一段と暖かく感じられるなぁ…ねえ、今日の帰りはプラモデルを見に行こうよ永沢君」
永沢「藤木君は暢気だな。僕らは助かるかもしれないけれど、来年、再来年の三年生は『ある年』に当たってしまうかもしれないじゃないか。自分が安全圏に入ったからって浮かれていいことじゃないと思うんだけどなあ。藤木君、そういうところ、本当にイヤらしいね」
藤木「うう」

城ヶ崎「もしクラスの人数がひとり増えてたら、クラスの中の誰かを〈いないもの〉にしなきゃけなかったのよね」
笹山「なんか大変な話だよね。一人を一年間、延々無視するなんて」
かよ「〈いないもの〉は春休み中に、先生と対策係の丸尾君が候補を決めたって聞いたけど…誰だったのかな」
みぎわ「花輪君だったら困っちゃうわ…!花輪君と話せなくなっちゃうもの…!どうしよう…!」
城ヶ崎「それはないでしょ」
笹山「たぶんそれ、野口さん、だったんじゃないかな」
三人「…やっぱり?」
かよ「変わってるもんね、野口さん。友達少なそうだし」
城ヶ崎「話しかけても、なんか冷たいっていうか醒めてるのよね」
みぎわ「花輪君は優しいから野口さんにも話しかけてるけど…はっきりいって、ああいうタイプって私、苦手なのよね~」
城ヶ崎「私も」
かよ「まるちゃんたちは普通に接してるみたいだけど、ほんとは私も、ちょっとね…」

杉山「そういや、去年転校していった大野がこっちに帰って来るんだよ」
まる子「ええっ、大野君が帰ってくるの!」
杉山「昨日電話があったよ。ほんとは新学期からこっちの学校に通うはずだったけど、あいつちょっと怪我しちまってさ、転入するのはもうしばらく後になるらしい」
まる子「怪我?!そりゃあ心配だねえ…」
杉山「こっちに戻ってきて、さっそく空き地でサッカーしてるところに居眠り運転の車が突っ込んできて、撥ねられたんだってさ。命に別条はないってよ。まだ入院してて様子をみなきゃいけないから、いつ戻ってくるのかはわかんないんだけどさ。いろいろ大変だから、俺と同じクラスになれるようお願いしてるっておばさんが言ってたぜ」
冬田「大変!大野君…!どうしよう!ああ、大野君のお見舞いにいかなくっちゃあ!」
丸尾「ズバリ!この丸尾末男!謹んで大野君のお見舞いに行かせていただきます!」
杉山「お前大野と仲良かったっけ」
丸尾「…え?いや、その、大野君がもしこのクラスに入ってくるのであれば、この丸尾末男を学級委員に選んでくれるよう、お願いにいかねばならないでしょう!
これはズバリ選挙活動でしょう!」

チャイムが鳴る。授業中。
先生「では、この問題がわかる人はいますか?」
沈黙。
先生「みなさんはもう三年生になったんですから、こういうときは積極的に手をあげるようにしましょうね。周りの行動を見て自分をそれに合わせようとするばかりではいけませんよ。こういうときに目立つのは何も悪いことではありません」
沈黙。
先生「仕方ないですね。今日は15日なので、出席番号が15番のひと、前に出てこの問題を解いてください」
まるこ(うわぁ…15番ってあたしだよ…どうしよう、困ったよ、ぜんぜんわからないよ…)
先生「15番のひとはだれですか?」
まるこ「うう…はい!私です!」
関口「オレです!」
まるこ・関口「…え?」
関口「15番はオレだぞ。何言ってるんだ、さくら」
たまちゃん「まるちゃん、出席番号を間違えたんじゃない?」
先生「みなさん、新しい出席番号にはやく慣れてくださいね」
まるこ「あはは…(ちょっと恥ずかしいけど助かったよ)」
まるこ(でも、あたしは確か15番だった気が…?)

まるこ、たまちゃん、廊下を歩いている。
 
まるこ「あれ…?」
 
先生と何やら話している野口さん。

先生「大野君が、……なので、………を、お願いできますか?」
野口「…」
先生「あなたにしてみればある意味、大変に理不尽な話になります。つらく感じることも多いでしょうが…大丈夫ですか。協力してくれますか」
野口「―ここで私が『いやです』と言ったら、やめてもらえるんですか」
先生「それは―」
野口「いいです。分かってます。協力します。クックックッ」
まるこ(どうしたんだろう…先生も野口さんもずいぶん深刻そうな顔をしているよ)
まるこ(大野君が転校してくることが、なにか関係あるのかねえ)
まるこ(それに―)
たまちゃん「どうしたのまるちゃん、急に立ち止まったりして」
まるこ「い、いや、なんでもないよ」
たまちゃん「行こっ」
まるこ「う、うん」
たまちゃん「最近のまるちゃん、なんだか変だよ?急に立ち止まったり、それからこのあいだも何か考え込んでたし」
まるこ「ううん…あたしもよくわからないんだよ。三年生になってから、何か変な感じなんだ。たまちゃんはどう?」
たまちゃん「そうかなあ…でもまるちゃんがそう思うなら、何かがあるのかもしれないね」

その日の帰りの会。
先生「みなさん。今日は大事な話があります。みなさんとみなさんのご家族に大きくかかわってくる話ですので、ちゃんと聞いて、決めごとをきちんと守るようにしてくださいね。
わからないことがあれば、先生とここにいる対策係の丸尾君に質問するようにしてください。いいですか」
丸尾「この丸尾末男、ズバリ、みなさんをしっかりサポートしてゆきたいでしょう!」
みんな「はーい」
 
山田「対策係って~何をする係なんだ~?タイ焼きがたくさん食べられるのか~?」
ブー太郎「ありえないブー」
はまじ「そんな係だったら俺も率先してなってるよ」
まるこ「何だろうね」
としこ「ね」
 
先生「なお、このことはみなさんのご家族や近所のひとたちには絶対に話してはいけません。このクラスの中だけの秘密にしてください」
 
まるこ(なんだか気味が悪いねえ)
山根「緊張して胃腸が…」
 
先生「皆さんは今年、三年三組になりました。この三年三組というクラスは、ある事情で、何年かに一回、『死に近い』場所になってしまうことがあります。
これは呪いだという話もありますが、原因は特定できていません。何年かに一度、クラスの中に、以前死んだひとが一人混ざる、という現象が起こります。そのためにクラス全体が『死に近』くなってしまう、と思ってください。
『死に近い』という表現では、みなさんには少しわかりにくいかもしれませんね。端的にいうと、この現象が起こってしまうと、事故や病気で死んでしまう可能性が高くなるんです。しかもそれはこのクラスの皆さんだけではありません。みなさんのお父さん、お母さん、御兄弟も『死に近い』状況に追いやられてしまうんです」
 
ざわつく教室。
 
山田「ええ~っ?おいら死んじゃうのかい?嫌だよぅ、怖いよぅ、死にたくないよーぅ!」
冬田「怖いわ怖いわ。うわーん!」
前田「ち、ちょっとあんたたち、お、落ち着きなさいよ…ね、ねえ」
永沢「前田は自分が落ち着くべきだね」
藤木「噂は本当だったんだ…」
まるこ「お姉ちゃんが言ってたのは…このこと…?」

お姉ちゃん「おねがい、三年三組にだけはならないで…怖いの!もうあんな思いをするのはイヤなの!」
お姉ちゃん「あたしは助かったけど…」
お姉ちゃん「お母さんだって危ないんだからねっ!」

花輪「でも丸尾君、キミは今年は現象が『ない』年だって言ってたじゃないかベイビー!机の数とクラスメイトの数が一致する年は『ない』年なんだろう?」
丸尾「落ち着いて!落ち着いてくださいみなさん!ズバリ落ち着いてくださいでしょう!たしかにわたくしは年度のはじめに、今年は現象が『ない』年だと判断しました。現象が『ある』年は、クラスの人数と机の数が合わないんです。ズバリ、机よりクラスの人数のほうが一人多いのです!今年はそんなことがありませんでした!
しかし!五月に入ったら大野君がこのクラスに入ってきます!大野君を合わせればクラスの人数はズバリ41人!対して机の数は、ズバリ、40個でしょう!」
先生「念のため、今年は『ある』年かもしれない、ということで、みなさんに準備をしていただきたいんです」
はまじ「準備って何の準備だよー!」
関口「心の準備のことなのかー?!」
冬田「死者が混ざっているなんてこわーい!」
先生「皆さんの中にはもうご存じのひともいるかもしれませんね。もし現象が『ある』年だとしても、きちんとした準備をすれば、みなさんやみなさんのご家族が死ぬことを防ぐことができます。それは、このクラスにひとり、『いないもの』を作ることです」
先生「クラスの中のひとりを選び、一年間、みんなでその一人が存在していないかのように振舞います。その一人と口をきいたり、一緒に遊んだり、帰ったり、給食を配膳したりしてはいけません。とにかく完全に、その一人がこの教室にいないかのようにして行動してください。そうすれば、クラスの人数は40人に戻り、机とクラスの人数が一致することになります」
山田「やだっ、おいら給食食べたいよ~!」
先生「山田君。山田君を『いないもの』にしませんから、安心してくださいね。このクラスで明日から『いないもの』になってもらうのは―野口さんです」
 
みんな、一斉に野口さんを見る。
 
先生「いいですか。みなさん。明日からも、野口さんは学校に登校してきます。しかし決して口をきいたり、一緒に遊んではいけません。彼女がこのクラスにいないかのように振る舞い、何か話しかけられても無視してください。野口さんも、クラスの誰にも話しかけないようにしてください。トラブルのもとになりますので、みんなからは離れて行動してくださいね。成績は先生が適当に付けますから、テストなども受けないで、ただ授業を聞くだけにしてください」
「そんな、ひどいよ」「でも野口さんなら…」「もともとあまり存在感ないしねー」「できるかなあ、俺」「忘れちゃいそー」
丸尾「いいですか!野口さんを『いないもの』にしないと、ズバリ、みなさんの命が危ないのですよ!先生のおっしゃったことは、きちんと守ってください!」
長山「先生、いつまでそれを続けるんですか?」
先生「三月までです。みなさんが三年三組にいる間は、野口さんを『いないもの』にしなければなりません。なお、野口さんを『いないもの』にしたあと、『いないもの』について話をするのもいけませんよ」
先生「では、何か質問はありませんか?―ないようなら、これで帰りの会を終わります。もし何かあれば今日のうちに、先生のところか丸尾君のところまでお願いしますね」

帰り道。
まるこ(野口さん…野口さんを無視すればみんな助かるっていうけど…でも…それでいいのかなぁ…)
まるこ(野口さんはいま、いったいどんな気持ちなんだろう。一年間も誰とも口を利けないなんて、想像ができないよ…たまちゃんともとしこちゃんとも、はまじやブー太郎とも
話せないなんて…それに給食もよそってもらえないなんて、悲惨な話だよ…)
まるこ(給食、どうするんだろう。お弁当でも持ってくるのかなあ…でも、家の人には言っちゃいけないんだよね…じゃあもしかして、野口さんはこれからお昼抜き?一年間?そんなの…そんなのって…)
キートン「『いないもの』にされることよりも、給食抜きのほうが気になるまるこである」

まるこ、野口さんの後ろ姿を見つける。
まるこ(野口さんを『いないもの』にするのは明日からだって言ってたよね…じゃあ、今日は話しかけても大丈夫だってことだ)

まるこ「おーい、野口さーん」
野口「…」

野口さん、振り向く。

まるこ「今日は話しかけてもいいんでしょ?」
野口(無言でうなずく)
まるこ「えっと…なんていうか…このたびは…災難だったねえ…その…」
野口「『いないもの』にされたこと?」
まるこ「給食だって食べられないし…」
キートン「給食以外のことは気にならないのか、まるこよ」
野口「クックックックッ…給食は給食当番が全員に配ったあと、自分でとりにいけばいいんだよ…」
まるこ「あっなるほど」
野口「クックックックッ…」
まるこ「でもさ、野口さんアンタ、嫌じゃないのかい?」
野口「別に。クックックックッ…」
まるこ「あたしゃ絶対嫌だよ、『いないもの』なんて!今からでも先生や丸尾君に言って、それで、」
野口「でも、私が『いないもの』じゃなかったら、他の誰かを『いないもの』にしなきゃいけない…そんなのはもっと嫌だね」
まるこ「…野口さん」
野口「明日からはちゃんと『いないもの』として扱っておくれよ、さくらさん。うっかり話しかけちゃいけないよ」
まるこ「…うん(涙ぐむ)」

に続く。

たとえ需要がなくても!
臨海女子×『美味しんぼ』SS ダヴァン「ラーメン三銃士」後編、はっじまっるよー!
(前編はこちら)

数日後、はるさんの店。ハオ・ネリー・ミョンファが所在無さげに座っている。
ハオ「先日の記者サン、ドウシテこんな所ニ・・・。」
ミョンファ「ワタシ、練習シタイ。時間が惜しイ。」
ネリー「帰りたイ。」
大家「なんだあいつら?態度が悪いなあ。」
はる「この子たちのせいでサトちゃんは悩んでいたのね。」
栗田「そう言わないで。このあいだは智葉ちゃんとメガンちゃんにしかご馳走できなかったから、今日はあなたたちにも美味しいものを食べてもらおうと思って呼んだのよ。」
ミョンファ「ノン、日本のゴハンは・・・」

三人、何かに気づく。

ハオ「イイニオイ。」
ネリー「コレハ・・・。」

山岡「さあ、熱いうちに食べてくれ。」

ハオ「雲呑麺?ワタシの故郷、香港名物の雲呑麺デス!」
ミョンファ「?!このスープは!コンソメ!」
ハオ「ホント。ラーメンの麺にコンソメが意外と合いマス!」あるみたいです。
ミョンファ「とても、懐かしいデス。小さい頃、メメ(おばあちゃん)がいつも、食べさせてくれた。」
ハオ「ワタシも子供時代思い出しましタ。お金ナカッタ、ダカラ屋台ノ雲呑麺、家族みんなで分けあって食べテマシタ。 」
ミョンファ「?この雲呑、チョットチガウ・・・。」
ハオ「この雲呑、お肉入りネ!中カラ、たくさん肉汁が!トッテモジューシィ。好喫! 好喫!」香港の雲呑麺はエビ入りであることが多いです。
ミョンファ「ハオの国の小龍包みたいネ。コンソメスープにとても合う! 」
ネリー「(ぐすんっ)ヒンカリ・・・。コレ、ワタシの大好きな、ヒンカリに似てる・・・。」
ミョンファ「ヒンカリ?」
ネリー「ワタシの国ノ食べ物。小麦粉の皮の中に、挽き肉で作った具を入れて茹でルモノ。ワタシの家族、ミンナ4年前に・・・。ダカラモウ、食べられナイと思ってタ・・・。」
ヒンカリの皮はわりと分厚いのでラーメンには合わない気がします。たぶんここではラーメンに合うよう特別な工夫をしているのでしょう。知らんけど。
 
山岡が促すと、奥から智葉とダヴァンが出てくる。

山岡「これ、実は智葉ちゃんとダヴァンが作った料理なんだ。」
ハオ「二人ガ?」
ミョンファ「ナンデ?」
ネリー「?」
智葉「私たちはみんな違う国の出身だ。育ってきた環境も、価値観も違う。だからお前たちは、ここで苦しんできた。だけど、私たちは同じ人間。どこかに共通点がある。それを知って欲しかった。ここはお前たちの故郷じゃないし、お前たちは少なくともこの一年は帰国できない決まりになってる。でも、心を閉ざして故郷をひたすら思うんじゃなくて、この国にもきっとお前たちの好きになれるものが転がってる。そして、お互いの中にも。それを探して欲しいって思ったんだ。」
ダヴァン「ワタシ、日本に来タ時寂しかッタ。でも、ガイトサンと会って、ラーメン食べて、チョットずつ日本のコト好きになっていッタ。だから、ミンナにもラーメンを知って、日本のこと、好きになっテ欲しかッタ。」
栗田「二人はこの一週間、部活が終わってからラーメン三銃士のところに通って、夜遅くまで一生懸命スープ、麺、具材の開発をしてきたのよ。」
山岡「あと、ラーメンを使ったのは、ダヴァンの好物だからというだけじゃなく、君たちのやっている麻雀とラーメンが似ていると思ったからさ。考えてもごらんよ、ラーメンも麻雀も、どちらも原型は中国にある。でもそれがいろんな国に伝わり、かたちを変えていった。ラーメンも麻雀も、いろんな国の文化を受け止め、柔軟に変化していく力があるものなんだ。それでいて、基本的なところは崩れていない。」
ハオ「文化を、受け止めル・・・。」
ミョンファ「変化・・・。」
ネリー「デモ、自分ノ国デ学んダ、大切なモノは、忘れなイ・・・。」

沈黙。

ダヴァン「(鼻声)サア!ドンドン食べて下サイ!ぬるくなっちゃいまスヨ!」
ハオ「ウン!」
ミョンファ「ツジガイトとダヴァンも座って。一緒に食べヨ?」
智葉「いや、しかし雲呑麺は三人分しか・・・。」
ハオ「器とお箸クダサイ!」
はる「はい。それぞれ二人分ね。」
ネリー「ダヴァン、スープ多めがイイ?麺多め?」

しばらく雲呑麺を分け合いつつ食べる。
 
大家「サトちゃんもメガちゃんも、もう大丈夫だな。」
栗田「よかったわね。」
山岡「さあ、育ち盛りの君たちはそれだけじゃ足らないだろう。ほかにもたくさんご馳走を用意したぞ!地区予選祝勝会と壮行会のやり直しだ、存分に食べてくれ!」
五人「わーい!」

決勝戦・先鋒戦
智葉「チャンピオン。今日はよろしくお願いします。」
照「こちらこそよろしく。万全のコンディションのあなたと戦えることを、心から嬉しく思ってる。」

東西新聞文化部(TVにて観戦中)
荒川「やったわ!」
三谷「チャンピオンの連続和了を、辻垣内さんが止めたわよ!」
部長「なかなかできることじゃないよ。しかも彼女は、東場で爆発的に稼ぐ清澄の片岡もしっかり抑えてる。」
山岡「その調子だ!」
栗田「頑張って、智葉ちゃん!」

インターハイ終了後
山岡「ん?今日はうちに大勢来てるみたいだが・・・?」
ダヴァン「オヒサシブリデス!」
チヨ「智葉ちゃんと、チームの子達が来てるのよ。」
智葉「おかげでインターハイではいい試合ができました。最後のインターハイ、優勝に手は届きませんでしたが悔いはありません。仲間たちと力いっぱい戦えたのですから。すべて山岡さんのおかげです」ぺっこりん
一同「アリガトゴザイマス!」
ネリー「山岡サン!イッショニウチマショウ!」
ハオ「麻雀楽しむネ!」
ミョンファ「ウィ。全自動卓持ってきましタ。どうぞコチラヘ!」
山岡「よし!大学の時に鍛えた腕前を見せてやろう!」
ネリー「ロン!(物理)」
ダヴァン「ツモ!」
ミョンファ「ロン!(物理)」
ハオ「ミョンファ!ツギ、ワタシ入るネ!」
智葉「じゃあネリーは私と交代だ。」
チヨ「さすがはインターハイ準優勝のチームね。士郎さん、まったく手も足も出ないわ。」
栗田「山岡さん、今夜は焼き鳥にしましょうか。」
士郎「おい!冗談じゃないぞ!」
 
一同笑う。
終わり。
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プロフィール

あおい

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