さくやこのはな

まんがやアニメの元ネタっていうか、作品世界に織り込まれた神話・伝説・古典をゆるい感じで考察するよー。 いまのところ『咲―saki―』重点。忍殺もあるよ(予定)。

2014年01月

 明日、1月12日は有珠山高校二年、本内成香ちゃんのお誕生日です!


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司祭さまやシスター方はよく仰います。「イエス様が私たちに与えて下さったいちばん大きくて大切な掟、それは『隣人を自分のように愛しなさい』ということです」と。
でも…。
私は「隣人」を「愛」するどころか、傍にいてくれるひとの足を引っ張ったり、どんどん不幸にしている気がします。そして、それを良しとしている悪魔のような自分が心の奥のほうにいます。
こんな私はなんのために生きているんでしょうか?
もう、生きることをやめたほうがいいんじゃないでしょうか?

ねえ…

ごめんね、チカちゃん。



【有珠山高校・学生寮】
成香「チカちゃん…」
チカ「だいじょうぶ。熱だって38度台まで下がったし、昨日よりはだいぶ楽になったよ。それより成香のほうは…体調はどう?」
成香「…私は元気になりました」
チカ「そっか、今日から授業に出たんだよね…コホッ…麻雀部のみんな、どうしてた?」
成香「チカちゃんが風邪って聞いて、心配してた。そのうちお見舞いに行くかもって。あとユキちゃんは、お祈りしますって」
チカ「あはは。信仰熱心なユキらしいね…ケホッ」
成香「うん…」


【回想】
爽「そりゃあ大変な年末年始だったなあ…成香が風邪で倒れて、帰省できなくなちゃって、成香が治ったと思ったら今度は残って看病してた誓子が倒れるなんて」
ユキ「風邪を甘く見てはいけません。そもそも、多くの人々が研究に研究を重ねたにもかかわらず、いまだに風邪の特効薬は発明されていないんですから」
揺杏「マジで?でも薬局に行くとパブロンとか、ルル三錠とか…」
ユキ「あれは症状を抑える薬に過ぎないんですよ」
爽「ま、誓子は推薦で道内の短大受かってるし、この時期はゆっくり休めるからいいんじゃないか?」
成香「いちおう…センターも、受けるみたいですけど」
爽「それはしょうがないんだわ。ウチの学校、卒業の条件の中に『センターを五教科七科目受けるか卒業レポートを原稿用紙50枚以上書く』ってのがあるから」
揺杏「なんでそんな面倒なことを求めるんだろうね~」
ユキ「三年生が三学期に勉強しなくなると困るからでしょう」
爽「適当にマーク塗っときゃいいだけだから、そんなに大変でもないけどな」
揺杏「それはともかく、明日にでも麻雀部の精鋭連れてお見舞いに行くよ~。誓子先輩の負担じゃなさそうなら、だけど」
ユキ「そうですね。それと、私、先輩が良くなるようお祈りしますから」
成香「…」


【回想終了】
チカ「…ね、成香、日本史の用語集、私の机の上から持ってきて。あと、英語のイディオム集も」
成香「でも、まだ休んでいなきゃ…」
チカ「センターが終わってもいないのに勉強を休むなんて落ち着かなくって」
成香「うん…」
チカ「それと、机のいちばん上の抽斗に、ピンク色の包みが入ってると思うんだ。それも持ってきてくれる?」
成香「勝手に机を開けることになるよ?」
チカ「いいからいいから」


私は知っています。チカちゃんが近くの短大ではなく、東京の大学に行きたいと思っていることを。

四年間、看護師になるための勉強をしっかりするとともに、麻雀部に入って、もっともっと自分の麻雀の力を高めてみたい、そう考えていることを。
もしチカちゃんが東京の大学に合格したら…私たちは一年間、離れ離れ。そして私の両親は、進学先はうちから通える範囲にするように、そうでなければ学費は出さない、と言います。
だから私はユキちゃんのように、チカちゃんの回復を素直にお祈りすることができません。

それどころか…。

成香「…はい、チカちゃん」
チカ「どうも。それと…こっちは成香のだよ。十七歳おめでとう、成香」
成香「え…わっ…これ…」
チカ「熱のせいで、成香の誕生日を忘れちゃうところだった。せっかくプレゼントを用意してたのに」


私はきれいにラッピングされた包みを開けてみます。小さな白い箱。そして更にその中には…
銀色の鎖の先に、金属とエナメルでつくられたちいさな白い花がいくつも咲いている、そんな愛らしいペンダントが入っていました。


成香「これ、高かったんじゃ」
チカ「十七歳は特別な歳だもん。奮発しなきゃ」
成香「…ありがとうね、チカちゃん」
チカ「札幌のデパートでこれを見つけたときさ、絶対成香に似合う!って思って…ってどうしたの?成香ぁ…いや、涙が出るほど喜んでもらえて嬉しいけど…」


私のどす黒い感情が、悪い風邪を招き寄せてしまったのかもしれない。そんなことをなにも知らずに、チカちゃんは、私のことをとても大事にしてくれる。
年末、私が高熱で帰省できないということを知ったチカちゃんは、寮に残って勉強したほうが集中できるから、と帰省を取りやめ、看病をしてくれました。
修道院のキッチンでおかゆやうどんなどを作ってくれたり、ポカリスエットやシャーベットを買ってきてくれたり、魘されているとき手を握っていてくれたり…
当然、自分の勉強は睡眠時間を削って、ということになります。

どうしてそんなにまで、このひとは私なんかのことを。
何のとりえもない私なんかのことを…。

わあわあ泣いてしまった私の頭を、ベッドに横たわったチカちゃんは優しく撫でてくれました。

「成香はほんとに、昔から泣き虫さんだね…」




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ナルチカ冬の陣(下)につづく。


あ、ご近所で北海道物産展をやっていたら、成香ちゃんのお誕生日ということで奮発して「カタラーナ」なるお菓子を買ってみてください。焼きプリンを冷凍したような感じのお菓子です。最高です。その上に自宅を建てたくなるレベル。っていうか穴掘ってそこに住みたい。カタラーナの中に住みたい。そういうものに私はなりたい。微生物とか。

 こんにちは。あおいです。
 日刊☆咲―Saki―さんで、面白い企画がはじまりました。それは、アニメ全国編をきっかけに「咲についてのブログをやってみたい!でも、どうすればいいんだろう?」と考えているあなたに捧げるブログ講座。咲ブログの作成と更新の方法を指南してやろうじゃないか!という企画です。
 その第三回は「『誰もお前の日記なんか読みたくない』考察記事の書き方について」。心に刺さるタイトルです。
 その最後の方で、恐ろしいことに、「出来れば咲ブログで考察記事書いてる他の方に「うちはこんな感じで考察記事書いてるよ!」って説明してもらえればなぁ、と。」ということで、拙ブログの名前が挙がっておりました。というわけで、需要がどのくらいあるのかわかりませんが、ちょっと頑張ってみます。ただ、最近方向性がよくわかんなくなっているので、半分ぐらいは自分用メモ。
 

◆「さくやこのはな」について◆
 まず、本題に入る前に、このブログの方向性、記事の内容について。
 このブログは、主にキャラクターの「名前」に注目し、そのキャラクター造型に影響したかもしれない神話や伝承、文学作品などについて考えるもの。名前に加えて、キャラクターの出身地、それから容姿、性格付け、作中で語られている(あるいは絵として提示されている)その能力、といったものを手掛かりに考察をすすめています。
 ただ、これを書いている人は麻雀があまり得意ではないので、闘牌描写についてはスルーすることが多いです。『咲』は麻雀漫画なので、そこにこそキャラクターを知るための重要な鍵がある気がしますが、変なことを申し上げてもいけないので他ブログさんにお任せしております。

 え?最近は有珠山高校を寵愛しすぎて記事がおかしなことになっている?ええ…そうですね、すみません。2014年はできるだけ公平な目で四校を見渡し、Bブロック準決勝の行き着く先を見届けたいと思います…


◆神は細部に宿るんですよ!◆
 考察系の記事を書く方法については、私的素敵ジャンクのhannoverさんが既に秀逸なエントリを書かれておられます。
 私的素敵ジャンク―自分なりの咲―Saki―考察記事の作成方法について その1 その2

 ありがとうございます。とても参考になります。平身低頭。
 この中で深く同意させられたのは、コミックスは何度も読み返すべき、という見解、そして「一見ただのギャグシーンや能力描写にしか見えないようなシーンにこそ意味があると考えてみましょう。ひょっとしたら、それが大きな発見につながるかもしれないですよ。」という記述。
 『咲』では、キャラクター造型の元ネタが、とんでもない部分に反映されていることがあります。たとえばシズの能力の伏線は、すでに阿知賀編外伝において提示されていました。ここではシズのお母さんが、シズがいつも山を駆け回っていること、時には熊野まで行ってしまうということを語ります。

 吉野から熊野まで行くとかwwwwwwwwwなにそれwwwwwwwww体力おかしいwwwwwwwwwww
 シズったらまったく体力バカなんだからぁ!
 ジャージに運動靴、ポニーテールとかいかにも体育会系の外見だけどwwwこれはないわwwwww

 こんな風に軽く流していたひとがわりと多いんじゃないでしょうか。
 でも、実際はそうではありませんでした。シズは山を支配する能力を発揮し、「深山幽谷の化身」となって大星淡たちを圧倒します。その背中には、吉野金峯山寺の秘仏・金剛蔵王権現の光背がありました。阿知賀編最終話における衣ちゃんの台詞「修験者が修行のために歩いた深山路 そこを修行ではなく庭のように駆け回っていた」と、アニメ最終話の予告にあった「奥、崖道だから」という台詞から考えて、その能力は、吉野から熊野までの道―山伏が修行に使う「奥駈道」を駆け回る中で感得されたものであろうと推測されます。
 つまり、あのシズ母の台詞はギャグや誇張表現ではなく、シズの能力に関する重要な情報を提示するものだったのです。

 というわけで、どうでもよさそうな描写を軽く流してはいけない。細部に忍ばせられた重大な情報を見落とさないように。周囲が「深読みしすぎじゃねwwww」と鼻で笑ってもしずかに耐えましょう。『咲』は、決して深読みしすぎてしすぎることはない作品なのですから。
 

◆考察記事の書き方っぽい?◆
 日刊☆咲―Saki―さんが用意してくれたテンプレートに則って。
 すっごく適当なのと、わりとよく予想を外すので、あまりあてにはしないでください。ただ、自分の文章の書き方を見つめ直したほうがいいなあと最近折に触れて思うので、反省を込めつつ振り返ってみます。

1.考察記事を書くのに使っている資料は
・『咲』に関するもの…『咲』の正編、外伝、スピンオフが掲載されている雑誌。それが纏められたコミックス。アニメの録画。それからいろんな咲ブログさんの記事とコメント欄。あとはTwitterのブロガーさんなどの発言。たまに2chやふたばの咲スレなども見てます。
・考察を広げるための資料…まずはGoogle。ググって雰囲気や関連することばを頭に入れる。そのあと家にある本(主に辞典・事典類)を見たり、図書館で調べるという感じ。超適当。

 
2.考察記事を書き始めるキッカケ
 この娘の名前、この娘の通っている学校名にはどんな意味があるんだろう?その名前の背後にあるイメージが、キャラクターの造型、物語の展開とどんなふうに結びついているんだろう?なんてことをぼんやりと考える。そこが出発点です。

3.考察記事を書き上げるまでの手順
 たとえば、さくやこのはな―大星淡ちゃんについて考える。 この記事を書くに至るまでの一連の流れを振り返ってみます。
 まずは、先行の淡ちゃんについて考察されたブログ記事を読みます。そこで指摘されていることを頭に入れます。このころは天江衣・宮永照・大星淡・神代小蒔の名前の一文字ずつを取ると「天照大神」になる、という説がわりと広く流布していました。ふんふむ。やっと「天照大神」の「大」にあたる子が登場したのかあー。そりゃあ強者に違いないよなあ。

 で。

 それらの記事内容をいったん、全 部 忘 れ ま す 。

 いや、実際には忘れてないんだけど、忘れたことにします。気持ちをリセットして「大星淡」という名前や、原作における描写を眺めてみます。これが実はすっごく大事。そうすると、「天照大神」のひとり、というイメージに縛られていたときには見えてこなかった、「大星」ということばが引っかかってくる。確かに宇宙空間のような昏いオーラを出し、その中で金髪を広げている淡ちゃんはなんだか星っぽい。
 しかし「大星」って何だ?「大きな星」と解していいのだろうか?ということでGoogleで検索してみると、古来日本で「大星」と呼称されてきた星や、「大星神社」という神社があることがわかる。大星と呼ばれていたのは金星、シリウス、北極星。じゃあ、この三つの星のうち、淡ちゃんのイメージに近いのは?と考えてみると、「金星」が比較的近いかなあ…という結論が出る。そこで今度は、古来から「金星」がどんなイメージで捉えられてきたかについて調べてみると、なんだか淡ちゃんの邪悪カワイイ感じとなんとなく合致しそう…。

 ここで、いったん忘れた(つもりになった)先行のブログ記事の内容を思い出し、もう一度読み返します。自分の思いついたネタと同じことを言っているブログはあるでしょうか。

YES…題材を変える、あるいはもう少し調べてみます。あるいは、先行のブログ記事を、自分の得たデータによってさらに深めることができないか考える。深められそうならそれを記事にします。もちろん、「○○さんのこの記事のこの部分をもっと深めてみました!」と最初に言及しますが…。
NO…もしかすると、2chとかふたばの過去ログに言及があるかもしれないので軽く検索して確認します。見つからなければ、この内容で記事を書きます。どうしても書きたいときは、「過去に2chなどで指摘があるのだけど、埋もれているみたいなので自分なりに纏め直してみた」というスタンスで記事を書く…という感じ。

 さて。ここまでで記事を一本書いてもいいと思います。ただ、私はもう少し考えを広げてみました。『咲』のキャラクター造型には日本の神話や伝承が利用されることが多いです。じゃあ、日本における星神ってどういう存在なのだろう?というところまで。そうすると、淡ちゃんに関係ありそうなちょっと面白い発見がありました。というわけでその話もくっつけたのが、前述した淡ちゃんについての記事です。
 うう…ためになることを書きたかったのですが、冗長な漫談みたいになっている…

  
4.考察記事を書くときに気をつけていること
 偉大なるアラフォーは言いました。「人は予想を超えてくる」。立先生も人間です。我々の予想をはるかに超えた、斜め上の展開を持ってくることだってあります。というわけで、のちのち自分がドヤ顔で書いた考察記事が的外れな内容であることがわかっても、心を折らないようにしています…可能な限り…
 中途半端な記事を書きたくない場合は、闘牌においてすべての力を出し尽くし、きれいに敗退したキャラについて考察したほうがいいんですよね。これ以上新たな設定が追加されませんから、全体を把握したうえで論じることができます。そしてもっと厳密にやりたいなら、『咲』の連載終了後にブログを作るべき。ただ、設定が出てから考察記事を作成するまでの時間が短いほど、アクセス数は増えます。自分のプライドと承認欲求とのあいだで、上手に折り合いをつける必要があると思っております…。

 あと、承認欲求といえば、ネタを思いついてから記事を書くまでの間に、そのネタによって自分の承認欲求を充足させる行為は可能なかぎり慎むべきですね…(自戒を込めて)。具体的には、Twitterにそのネタのさわりだけを書く、同好の士にそのネタについて熱く語る、などです。
 恐ろしいことに、この段階である程度の反応をもらってしまうと、記事を書く意欲が低下することがあります。だって、もうじゅうぶん自分の「誰かにこのネタを伝えて面白いねって言われたい!」という欲望は満たされてしまいますから…キヲツケテネ!
 承認欲求ってネガティヴな側面ばかりが注目されがちだけど、なんだかんだ言って、ものづくりの原動力のひとつなんだよなー…


5.一つの考察記事を書くのにどれぐらい時間をかけるか
 ものによりますが、だいたい2、3時間ぐらいでしょうか。調べ物も執筆も細切れにやることが多いので、トータルの時間はあまりよくわかりません。


6.その他(他にあれば)
 キャラクターの元ネタとなった神話伝承などに「敬意をもって」接することを心掛ける…かな。
 ある人にとっては「咲キャラの元ネタっぽい」以上のものではなくても、別の人にとっては「信仰・敬愛の対象」である、ってことを忘れないでいたいです。

 以上です。
 将棋の駒の成香は六方向に動けるけどそういえばアイヌにおいて6は重要な数らしいとか、アーモンドは杏の仲間でその木を揺らして実を落とすとか、アーモンドをデザインした燭台があるんだぜとか、だから岩館揺杏は火力が高いに違いないぜという内容の過去のブログ記事については、できれば忘れていただけると助かります。



 
 私が最近はまっている漫画、坂本眞一の『イノサン』についてすこし書いてみようと思います。集英社・週刊ヤングジャンプ連載中。現在単行本は三巻まで出ています。
 題名の「イノサン」とは英語でいう「innocent」、純真・純粋、といった意味のフランス語です。その内容はと言えば、安達正勝の『死刑執行人サンソン―国王ルイ十六世の首を刎ねた男』(集英社新書、2003年)に拠りながら、フランス全土の処刑人の頭領である「ムッシュー・ド・パリ」として、ルイ十六世やマリー・アントワネットの処刑を執り行ったシャルル=アンリ・サンソンの生涯を描くというもの。フランス革命前後の時代を描くにあたり、マリー・アントワネットのような「歴史の主役となった人物」ではなく、それを処刑した人物に焦点をあてて物語を展開させる…というのは、非常に興味深い試みだと思います。

 バーバラ・レヴィ『パリの断頭台』(文化放送、1977年)は、シャルル=アンリについて以下のように述べています。

…革命に際して最も脚光を浴びた存在の一人であったこのパリの処刑人が、もっとも名を伏せた存在の域を出なかったということも、同じくらい(筆者注:革命期に民衆がシャルル=アンリの首を要求しなかったという事態と同じくらい)不思議である。当時のスケッチ、油彩、エッチング(および数多くの記録、日記、回想記)などで、彼はただ「処刑人」と呼ばれているだけで、その名もその顔も出て来ない。
 

 ここにはおそらく、シャルル=アンリを名前と人格を持つ「人間」ではなく、「処刑」というシステムの一構成要素と見なす、という意識がはたらいていたのでしょう。また、当時のパリ市民の「処刑人」に対するイメージ、迷信などの影響もあったかもしれません。サンソン家は副業として医師をしており、貧者への施しも行っていたようですから、上述したような事態が決して彼に対するネガティヴな感情のみによって引き起こされたのではないとは思いますが…ともかく、シャルル=アンリが従来「名前を記されない・顔を描かれない」存在であったことに留意しておきたいと思います。

 『イノサン』は、そのような彼を「純真(イノサン)」な心を持つ美青年として描きシャルル=アンリという名の「人間」が処刑に際して抱く感情―戸惑い、拒絶、逡巡、決断などを丁寧に綴ってゆきます。革命期のテキストにおいて、名前も顔も徹底的に隠されていた彼の姿が、「漫画」の主人公に据えられることで活き活きと立ち上がってくる。
 またこの『イノサン』は、死刑が廃止された現代のフランスを起点として、シャルル=アンリの「処刑人でありながら死刑廃止論者」という人物像を捉え直す、という大胆な試みを行ってもいます。3巻におけるダミアンの八つ裂き刑の場面では、処刑の場におけるシャルルの決意とふるまいが、20世紀の「死刑廃止」に繋がっていくように描かれているのです。
 そうそう、当時の「処刑」って、民衆を熱狂させる「見せ物」としての側面があったんですよね。現代の「死刑」に対する感覚と随分違いますよね…。

 現在ではフランス革命よりはるか以前、シャルル=アンリの十代・二十代の物語が語られているにすぎませんが、このあと『イノサン』がフランス革命をどう描くのか。王党派でありながら、王と王妃の首を刎ねることを余儀なくされたシャルル=アンリが、何を考えどのように振る舞うのか。民衆はシャルル=アンリと王によって紡がれる「見せ物」をどのように享受するのか。興味は尽きません。


 えっと…そういうわけで、私個人としては『イノサン』読者がもっと増えたらいいなあ、と思っていますが、実際のところ、これ、かなり読者を選ぶ作品です。
 まず、主人公が処刑人ですから当然死刑の描写がばんばん出てきます。また、男同士の濃厚な(ホモセクシュアルの)絡みがめちゃくちゃ多いです。男女の絡みもいろいろとありますが、だいたいインモラルな雰囲気。というわけで、グロテスクな描写や、主に男性同士のエロティックな雰囲気が苦手な方にはあまりおすすめしません。正直、「グッドルッキングなニンジャとニンジャの顔が近い!」でおなじみ、『ニンジャスレイヤー・グラマラス・キラーズ』よりずっと男性同士の顔が近いです。

 なお、「史実」からの逸脱が気になる方も要注意。革命前夜のパリの雰囲気はきちんと再現できている感じですが、登場人物に関わるエピソードの大胆なアレンジが散見されます。主要人物に関するアレンジの詳細はネタバレになるので省きますが…。個人的に気になったのは、ジャコモ・カサノヴァが自伝に書き留めている「バルコニーを借りて何人かで処刑を見てたら、なんかテンション上がったのか隣の男女が事に及んでいた」というエピソードが彼自身の事績として描かれていたことでしょうか(2chのイノサンスレでは「冤罪」といわれていた)。

 でもまあ、面白いので、興味を持った方は書店にGO!
 というか、多くのひとに興味を持っていただかないと、物語がフランス革命に入る前に打ち切られてしまうかもしれない…

 こんにちは。あおいです。旧年中、身内に不幸がありましたので新年をことほぐご挨拶は遠慮させていただきます。本年もよろしくお願いしますねー!

 さて、お正月ということで皆様、お節やおもちなどを召しあがっていらっしゃるかと思います。…これを書いている人は正月二日目にしておもちから横須賀海軍カレーに切り替えたダメ人間兼横鎮提督ですが、おもちってイイですよね。つきたてのおもちに小豆を載せて食べると最高ですよね。後述する隠語としての「おもち」との関係で変な想像をした人は前に出なさい。

 さて、おもちと言えば阿知賀女子二年の松実玄=サン!
 玄ちゃんにとって「おもち」とは豊満な女性の胸部を指す語でありますが、食品としてのおもちについてはどう思っているんだろう?好物なのかな?まあ、彼女にとっての「おもち」は褒め言葉、何としてでも触りたいと指先が疼くもののようですし、きっと食品のおもちも好きなんでしょう…と予想していますが。
 しかし、玄ちゃんって正月にどんなふうにおもちを食べているの?こんな些細な疑問を抱いて適当に検索してみたところ、面白い発見がありましたのでご報告させていただきます。『咲』本編とは一ミリも関係なさそうですが。

 お正月のおもちの食べ方といえば、お雑煮。お雑煮のヴァリエーションは県や地方によって千差万別。角餅か丸餅か、餅は焼いて載せるのか具材と一緒に煮るのか、出汁はどうする、澄ましにするか味噌にするか…など、よく諍いの種になるところでもあります。
 そして奈良県、吉野地方でどんなお雑煮が食べられているのかというと…家によりますが、味噌仕立てのお雑煮の中に入っている丸餅を取り出し、きなこを付けて食べるのだそうで。

お雑煮マップ1 (三重・奈良・大阪) 
 ググってみたらこんな地図が見つかりました。丸の中に縦線が入ったマークによって示されているのが「きなこのお雑煮」が食べられている場所だそうです。阿知賀編の舞台となった吉野山周辺、憧ちゃんの実家のモデルとされている吉水神社付近にもこのマークが見られますね。
参考:やましろ☆探訪記 阿知賀レポート~第二話『始動』~

 というわけで、玄ちゃんをはじめとする阿知賀女子のメンバーは、お雑煮のおもちを取り出してきなこをまぶし、食べている可能性が高いです。それはつまり、丸餅味噌仕立ての雑煮を作り、おもちににきなこをまぶしながら食べると、俺の嫁であるところの阿知賀メンバーが作ってくれたお雑煮を食べているかのような錯覚を味わうことができる、ということです。
 玄ちゃんが、宥姉がアコちゃんが、灼ちゃんが、そしてシズが、あなたのお正月の食卓に降臨!好きなあの娘が自分のために作ってくれたと妄想するもよし、自分の目の前でシズとアコがお雑煮を食べさせあっている幻影を見るもよし…!お正月、(食品としての)おもちやお雑煮に飽きた方は是非きなこ雑煮を試してみてはいかがでしょう。試したことがないのでアレですが、味噌も黄粉も大豆からできているわけで、わりと美味しいんじゃないでしょうか。あと、地元では廃れつつある食べ方のようなので(上の地図にも、吉水神社付近の家では昔きなこをつけていたが今はやっていない旨のコメントがありました)、吉野に思い入れのある咲ファンが継承してゆくのもアリかもしれません。

 
◆付録 あの娘の食べているお雑煮はこれかもしれない!◆
・岩手県の沿岸部では、お雑煮のおもちを取り出し、黄粉ではなく甘い胡桃ダレで食べるそうです。あるいはお雑煮の中に胡桃ダレを入れたりも。もしかすると、宮守女子メンバーのお雑煮の「おもち」にも「胡桃」が掛かっている、あるいは絡められているかもしれません。充電、充電。
(既出でしたらすみません)

・島根県の出雲、松江あたりでは小豆の入ったお雑煮を食べるそうです。塩味の澄まし汁でつくったお雑煮に小豆を載せ、ハレの日の大事な御馳走であった砂糖をかけて食べるというもの。慕ちゃんがリチャードソンとふたりで迎えるはじめてのお正月、ふたりで食べたお雑煮はこの小豆雑煮だったかもしれません。あるいはリチャードソンが貧乏バンドマン時代、「金ねえけど正月だしせめて雑煮だけでも作ろうぜ」とか言って周藤(質屋)たち仲間と食べたお雑煮もこの小豆雑煮だったかもしれません。成長した慕が閑無・はやりんと三人で初詣に行った後、「今年こそは全国を目指そう!」と誓って啜るお雑煮もこの小豆雑煮かもしれません。でも、どれだけ時間が過ぎ、交友関係が広がっても、慕ちゃんがこのお雑煮を一緒に食べたいひとというのは…ううっ…砂糖をたくさん入れたはずなのにお雑煮がしょっぱいです…ね…。

・このブログは有珠山ファンブログなので有珠山メンバーが食べているであろう北海道の雑煮について調べなければならぬと思った。適当にググったら蟹やイクラの載った雑煮が出てきた。
「イメトレだ。これは髪型が蟹めいた愛宕姉や魚卵を好物とする雀明華と戦うにあたり、精神的に優位に立とう、奴等を雑煮にして食べてしまおう!ということで揺杏さんが作った雑煮なのだ。大丈夫。うちの地域の雑煮は澄まし汁の中に菜っ葉とおもちが入っただけの雑煮だが、別にソフィア・アンティポリスの申し子と戦う必要がない私の雑煮にイクラなど入れなくていいのだ」そう呟いてそっとブラウザを閉じた。現実は非情である。(気になる人はググってみてください)


 
参考:個性が光るお雑煮図鑑
列島あちこち 食べるぞ!B級グルメ―新春番外編 日本全国お雑煮図鑑(北海道・東北・関東編)
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