ワールドカップのPK戦で高校部活組とユース育ち組の比較が話題となった。
その高校生カテゴリのトップリーグである「高円宮杯プレミアリーグ」で衝撃的な事件が起きた。2011年にプリンスリーグを格上げする形で作られたこのリーグは「Jクラブのユース7~8割、部活チーム2~3割」という状況が続いたが、2023年はユース11チーム、部活チーム13チームと史上初めて部活チームが多くなるという事象が起きている。特に下部となるプリンスリーグとの入れ替え戦では部活チームが全勝(部活チーム同士の対戦は除く)。
高校サッカーの世界で、ユースから部活への回帰が進んでいると言う話は数年前からあったが、それは育成のトップリーグにまで波及したことになる。
まずは練習環境面。Jクラブのユースチームは専用の練習場を持っていないことが多く(トップチームが優先的に使える公共施設を共用、と言うケースが多い)、地域内のグラウンドを他の地域クラブと取り合いになるケースが珍しくない。あるJ1強豪クラブのユースチームは練習場の件で地元と常に揉めていると言う話もあるくらいだ。一方で部活チームは、強豪ならだいたい専用グラウンドを持っている。練習段階で地元ともめることはまずない。
それと大会の注目度の違いに起因する学校生活のしやすさの違い。世間の注目度はどうしても高校サッカー選手権>>>>>越えられない壁>>>>>クラブユース選手権(ユースの全国大会)、高円宮プレミア・・・となってしまう。ユースの選手たちとは言っても日中帯は部活組と同じく普通の高校生だ。ユース組は頑張って結果出しても「ふーん、良かったね」で終わってしまうが、部活組は高校サッカー選手権で結果出したら一躍スターである。それと部活組はサッカーを通じた学校の宣伝もミッションの1つであることから学業面でもだいぶ考慮してもらえるが、ユース組にはそのような恩恵はない。
地元と揉めがちで、サッカーで活躍しても認められない、学業面でも考慮してもらえないユース組。地元に支持され、活躍したら一躍スター、学業面でも考慮してもらえる部活組、どちらが「良い」高校生活を過ごせるかは言うまでもない。
本田圭佑や中村俊輔は中学校までJクラブのジュニアユースで活動していて、ユースに昇格することが出来なかったため部活動に移行してプロになったが、近年はユース昇格を「選手側が断る」ケースが非常に増えているのだ。
部活動の地域移行が盛んに議論されているが、その思惑と真逆の事象がサッカー界で起きていることは知っておいた方が良いだろう。
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・ユース:学校の部活とは別の高校生年代のチーム。Jリーグチームはユース組織を持つことが義務付けられているため(そうでないとJ2以上に昇格できない)Jリーグチームの下部組織が多いが、三菱養和SCのようにJリーグチームとは直接関係がないチームもある。なお中学生年代のチームは「ジュニアユース」と呼ばれる
・高円宮杯プレミアリーグ:高校生年代のリーグ戦の最上位カテゴリ。その下はプリンスリーグ(1部と2部)、都道府県リーグ・・・と続く。学校の部活チームとユースチーム両方出られる。カテゴリが別々なら同一校やユースから複数チーム出すことも可能。1軍をAチームとして、D,Eチームまで作るケースも珍しくなく、中にはHチーム(9軍)まで作って公式戦に出してる学校もある。これがあるため近年の高校サッカーの部活は「補欠が試合経験を積めない」問題はだいぶ改善されている。一方でJリーグユースは1軍しかないところが大半で、あっても2軍まで。
・高校サッカー選手権:毎年冬に行われる、学校の部活チームだけが出られるトーナメント制の全国大会。前後半終了後即行われるPK戦が名物。代表は都道府県別(東京都だけ2チーム)。都道府県予選の決勝は地元TV局、全国大会も1回戦から日本テレビ系列で放送され、決勝戦はほぼ毎年4-5万人の観衆を集めるなど注目度は高い。一般人にとっては「箱根駅伝生中継後に放送される番組」のイメージが強いかも。
・クラブユース選手権:毎年秋に行われる、ユースチームだけが出られるトーナメント制の全国大会。決勝はテレビ朝日系列で生放送されるが観衆は1万人行けば良い方で(会場は高校サッカー選手権と同じことが多いので空席が目立つ)注目度は低い。
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【追記2】
ブコメより
>それ聞くとなんでユースは練習環境整えないんだ?ってなるけど。資金力とか、子供にサッカー教えた後のリターン考えると高校に比べてユースが手を抜くの変じゃない?
資金力は学校の方があることが大きい。学校なら宣伝目的でお金投入できるし、OBや地元企業からの寄付金も集められるし、浅野がいた四中工のような県立高だと県の税金も使える(これには例の共産党も反対しない)。市立船橋高のように独自にスポンサーを集めることもできる。ユースはそのいずれも難しい。あくまでもトップチームが主でありユースは従だから。
ユースの知識がアオアシしかないので勉強になりました。
アオアシもちょっと知識が古くて、「ユースに行けなかった部活組」という描写があるんだよな 近年は「ユースを断った部活組」のほうが多いくらいなのに ちなみにアオアシのモデルと...
アオアシの連載開始は2015年だしなぁ
ああ2015年からだったか。なら仕方ないかなあ
サッカーはワールドカップくらいしか見ないから、ユースの意味がさっぱりわからない 部活じゃない、外部のチームに入るってことなんかな
公立と私立みたいな感じ
Jリーグクラブの下部組織やね、鹿島アントラーズとか川崎フロンターレとかの 一般的にプロ目指してる子の選択肢だし、実際そのままプロ入りするケースも多いから「プロサッカー選手...
最近はユースからトップチームへの昇格を断って大学に進学するケースも増えてるんだよね 高卒後即プロ入りしてもすぐに出場機会が得られず(場合によっては練習機会すら満足に得ら...
ユースっていうのはプロのサッカークラブがそれぞれ抱えてるジュニア育成チームのこと
日本の私立高校ってほんとに金あるよなぁ Jリーグよりも環境良い高校とか普通 そしてサッカー強豪校の8割くらいは野球にも力入れてて別途立派な野球部用のグラウンドやトレーニング...
もしサッカー部OBが海外移籍したら移籍金の1.5%がその高校に連帯貢献金として入ってくるからな 浅野が広島からアーセナルに移籍した時には四中工に1000万円が連帯貢献金として支払われ...
高校部活サッカーが良くなってる、強くなってるのは大筋で異論は無いけど、 エリートレベルの一部超強豪校が、クラブチーム化して成功している(例えば、中学のチームをジュニアチ...
来年からプレミアに上がる昌平高校は正にそのパターンだけど、中学からの一貫校である神村学園や青森山田ですら半分程度は中学は別のユースチームだったりするので、一概に高校傘...
うーん、ちょっと言葉足らずだったけど、 ジュニアチームだけでなく、 専門性の高いスタッフ(指導者、トレーナーとか)、より良い設備、Jリーグチームに2種登録したりの連携とか...
従来の部活の枠を超えてる部分はあるけど、専用のスタッフや良い設備については今に始まった話じゃないし。もちろんここ10年の間に進化していったのは否定しない。 あと2種登録っ...
もちろんここ10年の間に もろちんこ
増田に聞いてもわからんかもしれないけど、 久保くんとか中井くんみたいに海外のユースに行くスーパーエリートは、 わざわざスペインとかまで行ってセレクション受けてんの? それ...
日本でセレクションがあってそこで選ばれたから (毎年夏頃に子供向けのサッカー講習みたいなのをやってる)
大昔には、贔屓チームのジュニアユースから毎年高校に流出してたなあ。近年は地域の高校が弱体化したことでそういうこともなくなったけど。 全国的に見ても、練習環境も注目度も今...
Jのユースより高校サッカー部のほうが指導者の質が高いケースが出始めてるね Jのユース指導者はトップチームコーチや監督への昇格を見据えた経験の浅い人(高確率でチームOB)が担当...
anond:20221213141418 の続き。 今年になって、部活動>ユースチームであることが明確化してきている。 今年の高円宮杯プレミアリーグ(高校年代の最高峰のリーグ戦で、クラブユースのチ...