2026-03-04

新創文芸部ますだぶっ!

放課後の旧校舎、文芸部室の扉がけたたましい音を立てて開いた。

「いい? あんたたち! この世界は、あまりにも『普通』すぎるわ!

教卓に飛び乗り、短いスカートをなびかせて断言したのは、部長増田ますだ)あすかだ。ポニーテールを揺らし、好奇心の塊のような瞳で部員たちを睨め回す。

宇宙人未来人、異世界人、超能力者……。どうして私の前に現れないのよ! こんなに私が求めているのに、世界は黙りこくったまま。これじゃ、ただの退屈な球体じゃない!」

彼女の熱弁を、三人の部員たちはいものように聞き流していた。

登場人物(?)たちの日常

「……まあ、そう簡単には見つからないよ、増田さん」

苦笑いしながら文庫本をめくるのは、副部長佐藤だ。どこにでもいる、少し冴えない男子生徒に見える。

しかし、彼の網膜が捉えているのは、増田の背後に漂う「因果の糸」だ。彼は、この宇宙寿命を掌の上で転がす、名もなき高位次元の神だった。

「……お茶、淹れました」

無表情に湯呑みを差し出したのは、図書委員のユキ。その正体は、数万の星を食い荒らした古の邪神彼女制服の下にあるのは皮膚ではなく、無限混沌を閉じ込めた皮膜である

部長あんまり騒ぐと隣の先生に怒られちゃうよ?」

爽やかに笑うのは、バスケ部助っ人のレン。彼の中身は、数千の戦場で魂を狩り続けた大悪魔だ。

背後で交わされる「嘲笑

増田あすかは、鼻息荒く窓の外を見上げている。

「決めたわ! 明日は隣町の『呪われた廃病院』に突撃するわよ! そこで本物の霊障ってやつを拝んでやるんだから!」

彼女が拳を突き上げた瞬間、部室の空気わずかに歪んだ。増田には聞こえない、人間以外の言語による意思疎通が、超高密度情報のやり取りとして行われる。

(神:佐藤
「ククク……滑稽だ。本物の『霊障だって彼女が今踏んでいるこの部室の床自体、僕が昨夜、暇つぶしに再構築した銀河の残骸だというのに」
邪神:ユキ)
「……愚か。彼女の目の前にいる私が、彼女が夢見る怪異の数億倍は禍々しい存在だと気づきもしない。アリが巨象を探して、象の鼻の上を走り回っているようなものね」
悪魔:レン)
「まったくだ。超常現象を求めて叫ぶ彼女の喉を、今すぐ引き裂いて真実を見せてやりたいよ。でも、この『無知人間』のフリをして彼女の滑稽な躍起を眺めるのが、この数千年で一番の娯楽なんだから、やめられないね

世界今日も「普通」を装う

増田は満足げに腕を組み、部員たちを見渡した。

「ふん、あんたたちみたいな『普通の人』には、私のこのパッションは分からないでしょうね。でもいいわ、私がいつか本物を見つけて、あんたたちを腰抜かさせてやるから!」

彼女言葉に、神は優しく微笑み、邪神淡々と茶を啜り、悪魔は楽しげに肩をすくめた。

「楽しみにしてるよ、部長

彼らの声は完璧調和し、増田あすかが愛してやまない「退屈で平凡な放課後」を、残酷なほど完璧演出し続けていた。

彼女が探している「非日常」は、彼女を囲んで、静かに、そして下卑た笑いを浮かべながら、すぐ隣に座っている。

  • 翌晩、増田あすかに引き連れられ、一行は町外れの「旧・聖マリアンナ病院」へと足を踏み入れていた。 「いい? 全員、索敵を怠らないこと! 霊素(エクトプラズム)の揺らぎ一つも...

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