殺生
人間は、子供の頃と大人になってからではどちらが殺生を平気でできるでしょうか?小さい子供は純真無垢と言いますが、純真無垢だからこそ結構残忍性を秘めているかも知れません。
小学校の低学年の頃まで、色んな動物に対して残忍な行為をする子供が沢山います。自分の少年時代にもそんな子供は沢山いました。トンボの尻尾の先を切ってそこに細長いイネのような植物の茎を指して飛ばそうとする者。カエルの股を裂いてザリガニ釣りをしたり、カエルに爆竹を咥えさせて爆発させる者。蛇の尻尾を持ってグルグル回して地面に叩きつける者・・・このような残忍な行為をする子供は沢山いました。(直接見てはいない、自慢話として聞いた話もあります・・)・・私はどうだったかと言うと、それらの行為は可哀想だとは思いつつ、止める事はしませんでした。私は血や体液が出るような事は可哀想で出来ませんでしたが、小さい蟻に関しては、結構残酷な事をする子供でした。もっと大きな昆虫のように肉感的でなく、体液も殆どでないので、可哀想だと言う気持ちよりもいたずらしたいと言う気持ちが勝っていたんだと思います。アリの巣に石鹸水を流し込んだり、蟻が黒いのをいい事に、レンズで焼いたり、蟻地獄に入れて、蟻地獄の主のウスバカゲロウの幼虫が噛み付いたら蟻を引っ張ってウスバカゲロウの幼虫を釣ったり・・・色々残酷な遊びをしていました。ただの悪戯遊びでずいぶん蟻を殺したものです。純真な子供が残酷な殺生をするのは、猫が食べるわけでも無いネズミをゲームのように捕まえて殺すのに似ています。
・・・だから大人よりも理性がしっかり育つ前の子供の頃の方が殺生に対して罪悪感は小さい・・とも考えられます。しかし、私の蟻に対する無駄な殺生は大人になってからしないだけであって、やろうと思えば今でもそれほど罪悪感なく出来ると思います。私がやらなかったカエルや蛇、トンボに対する殺生を行っていた子供たちだって、大人になった今こそ、無駄な殺生はしないだろうけれど、やる気になったらあまり罪悪感がなく出来てしまうのでは無いでしょうか?
・・・と。言う事で、純真無垢な子供の方が、殺生に罪悪感が無いのかと思いきや、そうでもなさそうです。
大人でも、蚊や蠅、ゴキブリを潰すことに罪悪感を持っている人はあまりいないでしょう。私も蚊を手で潰す事に成功すると、ちょっと達成感こそあれ、殺生したと言う罪悪感は湧きません。たった今も何度も私の血を吸いにやってきた蚊をやっと空中で潰す事ができて小さな達成感を持っています。自分を痒くした蚊をやっつけたと言う満足感こそあれ、罪悪感はありません。不殺生戒を守るべき立場の仏教のお坊さん達はどうなんでしょうか?日本では、蚊や蠅、ゴキブリはお坊さんでも罪悪感なく殺生できてしまう方が多いんでは無いでしょうか?
一つ父に関する変で共感できなかったエピソードがあります。私が小学校の高学年の頃、部屋の直ぐ外の庭に黒い蠅か蜂・・・黒アナバチかなんかが、羽が斬られて土の上を歩いていました。羽が切られている・・・と言っても根本からもがれているのではなく、羽の真ん中で横に真っ直ぐに切られた感じです。
そこで、父に聞いてみると、この黒いハチだかハエが部屋に入ってきて飛び回るので、煩いから羽をハサミで真ん中から切って外の土の上に逃したそうです。・・・なんか逆に非常に残酷な事をしてるんじゃ無いかと思ってしまいました。私だったら・・と言うか多くの人は2択;潰して殺すか、そっと取って外に逃す・・で第3の選択;羽を切って逃す・・は無いでしょう。羽を切って土の上に放した場合は、逃すと言うよりも拷問に近いと感じてしまいます。生きているうちにアリに囲まれて体が八つ裂きにされてしまうかも知れません。そこまでしても生かすべきかどうかの私なりの答えは当時の父の歳を超えたいまでも見つかってません。。
そのような父の行為はその時しか目撃していませんが、いつも優しかった父が、その時は無邪気に残酷な行為をする子供のようにも見えました。今考えると戦争を体験したり大病を患って死にかけた父の命に関する哲学だったのかも知れません。よほど印象深い衝撃だったのか、何十年も経った今でもはっきり覚えています。
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