TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

文楽 11月大阪公演『仮名手本忠臣蔵』大序〜七段目、『靱猿』 国立文楽劇場

11月公演は、『仮名手本忠臣蔵』大序〜七段目までの通し上演。コロナ禍以来、初の終日通し演目企画。大阪では久々の二部制だったこともあって、文楽を代表する大作らしいボリュームを感じた。そして、以前に通し上演された頃とはいろいろなことが大きく変わ…

文楽 10月地方公演『二人三番叟』『絵本太功記』『近頃河原の達引』神奈川県立青少年センター

秋の地方公演、横浜会場へ行った。 ◾️ 昼の部は2本立て。1つ目、二人三番叟。 人形はこなれた雰囲気。検非違使のほうの三番叟は、枝葉を落とし、洗練された雰囲気。無意識の部分も多分にあるだろうが、「踊り慣れている人物」というキャラクターが成立してい…

文楽 和生・勘十郎・玉男三人会『一谷嫰軍記』『伽羅先代萩』紀尾井ホール

おととしから毎年開催されている「和生・勘十郎・玉男三人会」の3回目にして最終年、今回は玉男さんの回。昨年までとは異なり、今年は本人の得意役+本人初役の演目という意外性をもたせたプログラムとなっていた。 ◾️ 一谷嫰軍記、熊谷陣屋の段 。「前」の…

文楽 9月東京鑑賞教室公演『伊達娘恋緋鹿子』『夏祭浪花鑑』新国立劇場小劇場

今年の鑑賞教室公演は会期が9月へ移動し、会場は新国立劇場となった。東京の鑑賞教室は、例年、出演者を2グループに分け、ダブルキャストとすることが多いが、今回はA・B・Cの3グループに分けてのトリプルキャスト。そして、幹部と高齢の技芸員を抜いての編…

文楽 7・8月大阪公演『ひょうたん池の大なまず』『西遊記』五行山の段、一つ家の段 国立文楽劇場

第一部は「親子劇場」。 展示室にそもそも「西遊記」とはなにかという解説パネルが置かれるなど、おこさま客にも話が理解しやすいような施策がなされていた。その登場人物紹介パネルを読み上げて子供に聞かせてあげていたお母さんが、「三蔵法師の肉食べると…

文楽 7・8月大阪公演『生写朝顔話』宇治川蛍狩の段、明石浦船別れの段、浜松小屋の段、嶋田宿笑い薬の段、宿屋の段、大井川の段 国立文楽劇場

あるトークで、SKRさんが(この世の真実に気づいてしまったツメ人形の顔で)「文楽劇場は暑い。冷房代をケチってクレームがこないギリギリの高め温度に設定しているに違いない」ということをおっしゃっていた。文楽劇場場内、特に前方席は、まさにそんな温度…

ちいかわ文楽 ちいかわ手本忠臣蔵 古本屋腹切の段〈切〉

ちいかわが文楽化したら……その3 後編です。 前編→ ちいかわ文楽 ちいかわ手本忠臣蔵 古本屋腹切の段〈前〉 - TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

ちいかわ文楽 ちいかわ手本忠臣蔵 古本屋腹切の段〈前〉

ちいかわが文楽化したら……その3 前編です。 つづき

文楽 6月大阪鑑賞教室公演『二人三番叟』『菅原伝授手習鑑』寺入りの段、寺子屋の段 国立文楽劇場

今年の大阪鑑賞教室はAプロだけ見た。 ◾️ 二人三番叟。 久しぶりに「二人組」らしい三番叟を見た。いつも人形の振りが合っておらず、タイミー発注で偶然やってきた人同士状態になっているが(失礼)、曲に対する間合いの取り方、ペアになる演技のタイミング…

文楽 5月東京公演『寿柱立万歳』『和田合戦女舞鶴』市若初陣の段『近頃河原の達引』堀川猿廻しの段、道行涙の編笠 シアター1010

5月東京公演、Aプロ。 ■ 寿柱立万歳。 冒頭に入れ事(アレンジ)で、若太夫襲名の祝儀が入っていた。人形はやや古風というか、どこかひなびたところがあるのが面白かった。昔の映画の文楽のシーンや、あるいは旅芝居のシーンにありそうな感じ。祝いに呼ばれ…

文楽 5月東京公演『ひらかな盛衰記』義仲館の段、楊枝屋の段、大津宿屋の段、笹引の段、松右衛門内の段、逆櫓の段 シアター1010

5月公演は、久しぶりの2部制で開催。Aプロは襲名披露、Bプロは『ひらかな盛衰記』の半通し上演が設定された。 Bプロ『ひらかな盛衰記』は、近年でも屈指の出来だった。 「松右衛門内」は、立つべきところがしっかりと立ち、人形・床が引き立て合って、観客も…

「映画と義太夫――旧劇映画の声と音」早稲田大学小野記念講堂

戦前期にあった、義太夫伴奏をともなっていたでろうサイレント映画(旧劇映画)についてのシンポジウムへ行った。 映画のサイレント時代、映画館には「活動弁士」がいて、彼らが音声部分を担当し、セリフや状況を語り聞かせていたというのは広く知られており…

文楽 4月大阪公演『団子売』『和田合戦女舞鶴』市若初陣の段、『釣女』 国立文楽劇場

今月、3部ともメインがすべて時代物、かつ親による子殺し・見殺しを描いた演目。しかも親殺しもあり。うーん、これぞ文楽。 (第二部は口上含め4演目の上演がありましたが、上演順ではなく、書きたい順に書かせていただきます) ■ 『和田合戦女舞鶴』市若初…

文楽 4月大阪公演『絵本太功記』二条城配膳の段、千本通光秀館の段、夕顔棚の段、尼ヶ崎の段 国立文楽劇場

文楽劇場の場内アナウンス、「尼ヶ崎の段」の「あまがさき」が訛ってるような気がする。大阪公演だから? 第一部、絵本太功記。『絵本太功記』は近年何度も出ている演目のため、感動的な展開!このシーンに震えた!このフリがカッコイイ!とかの素直感想は書…

文楽 4月大阪公演『御所桜堀川夜討』弁慶上使の段、『増補大江山』戻り橋の段 国立文楽劇場

ロビーに弁慶の生首が爆誕していた。なぜ弁慶? 弁慶にしても、なぜ「勧進帳」ではなく、「五条橋」「大物浦」?? でも、お客さんがツメ人形のように「弁慶さんやーーー!」とたかっていたので、良かった。 ◾️ 第三部、御所桜堀川夜討、弁慶上使の段。 「弁…

文楽 『和田合戦女舞鶴』全段のあらすじと整理

2024年4月大阪公演、5月東京公演で上演される『和田合戦女舞鶴』の全段の解説です。公演では断片的な上演となり、内容がわかりづらくなるため、全体を通した内容を紹介します。 contents ┃ 概要 理法権 女性主人公・板額 門破り ┃ 登場人物 ┃ あらすじ 初段 …

ちいかわ文楽 ちいかわ千本桜 ジューシー屋の段

ちいかわが文楽化したら……その2です。 前編→ ちいかわ文楽 ちいかわ手本忠臣蔵 古本屋腹切の段〈前〉 - TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

ちいかわ文楽 一谷ちいかわ軍記 モモンガ陣屋の段

ちいかわが文楽化したら……その1です。

映画へ〈改作〉される古典芸能:『妖刀物語 花の吉原百人斬り』  1 歌舞伎『籠釣瓶花街酔醒』からの改変点

映画『妖刀物語 花の吉原百人斬り』がアマプラの東映オンデマンドで配信開始されているのを見つけた。 『妖刀物語 花の吉原百人斬り』 監督 内田吐夢 脚本 依田義賢 制作・配給 東映 公開 1960年9月 VHSあり/Amazon Primeビデオ〈東映オンデマンド〉、U-NEX…

文楽 3月地方公演『義経千本桜』椎の木の段、すしやの段 府中の森芸術劇場

権太は、悪から善へと変じた人物なのだろうか? 私は当初、権太をそのように理解していた。前半は「実は小心者のゴロツキ」、後半は「親想いの善人」であるという解釈が正しいと。その転換点が「椎の木の段」の一度目の引っ込みと二度目の出のあいだ、あるい…

せとだ文楽 『二人三番叟』『傾城阿波の鳴門』巡礼歌の段 ベル・カントホール

広島県の生口島で行われた「せとだ文楽」へ行ってきた。 生口島は、瀬戸内海の中ほどに浮かぶ大きな島。広島県に属し、本州(広島県尾道市)四国(愛媛県今治市)をつなぐ「しまなみ海道」上に所在している。東京からは新幹線でも飛行機でも、およそ5時間ほ…

文楽 『木下蔭狭間合戦』竹中砦の段 まつもと市民芸術館

『木下蔭狭間合戦(このしたかげはざまがっせん)』の松本公演へ行った。 地方自治体の独立した自主企画公演だが、文楽座としては、3年前にロームシアター京都の企画で復活された同演目の再演という体裁になっている。これは、京都公演の際のプロデューサー…

文楽3月地方公演 三重県会場[津市久居アルスプラザ]様 展示企画にイラストを提供しました

文楽3月地方公演 三重県会場・津市久居アルスプラザ様の展示企画 『あなたのしらない文楽の世界』 に、私の描いたイラストを展示いただいています。 展示は、文楽のほか、『桂川連理柵』について詳しく知ることができる内容になっているそうです。施設の入場…

文楽 2月東京公演『艶容女舞衣』『戻駕色相方』『五条橋』『双蝶々曲輪日記』 日本青年館

◼︎ 2月東京公演は、神宮外苑にある日本青年館で上演。日本青年館てこんな場所やったっけ??と思ったら、2017年の建て替え時に場所ごと微妙に移動してたのね。 最近知ったのだが、日本青年館という施設は大正時代からあり、そもそもは明治神宮造営とともに計…

文楽 1月初春大阪公演『伽羅先代萩』竹の間の段、御殿の段、政岡忠義の段、床下の段 国立文楽劇場

◾️ 初春公演、第二部、伽羅先代萩。 1月は、『先代萩』がいちばん良かった。 これぞ文楽の誇る格調高き世界。63万石を誇る大藩の奥御殿、その洗練が舞台上にあらわれていた。政岡・和生さん、沖の井・勘彌さん、八汐・玉志さんという洗練された方が重要な役…

文楽 双蝶々曲輪日記 全段のあらすじと整理

2024年2月東京公演・第三部で上演される、『双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)』の全段の内容について解説します。 ┃ INDEX ┃概要 ┃舞台MAP ┃時間経過 ┃登場人物 ┃あらすじ 初段 浮瀬の居続けに合図の笛売り[大坂・天王寺浮瀬篇] 二段目 …

文楽 1月初春大阪公演『平家女護島』鬼界が島の段、『伊達娘恋緋鹿子』八百屋内の段、火の見櫓の段 国立文楽劇場

◾️ 初春公演、第三部、一つめ、平家女護島、鬼界が島の段。 近年繰り返し出ており、「いつも同じような配役」でやっていた演目だが、今回は人形俊寛役の玉男さん以外を大幅に刷新。よく言えば、演者の態度としては非常に真面目なたたずまいの舞台となってい…

文楽 1月初春大阪公演『七福神宝の入舩』、『近頃河原の達引』四条河原の段、堀川猿廻しの段 国立文楽劇場

正月の第一部がこの番組編成……、本当に大丈夫なのか? と不安にさせる初春公演へ行ってきた。 ◾️ 1月大阪初春公演、第一部、一つめ、七福神宝の入舩。 七福神が宝船の上で芸を披露するという景事。舞台いっぱいの巨大な宝船の上で、寿老人は三味線で琴の音色…

文楽 12月東京公演『源平布引滝』竹生島遊覧の段、九郎助住家の段/鑑賞教室公演『団子売』『傾城恋飛脚』新口村の段 シアター1010

今年の12月公演は北千住の劇場「シアター1010」(足立区芸術文化劇場)で開催。会場は、駅すぐ横の商業ビル(マルイ)の最上階に入っている。ビルの11階ゆえにエレベーター待ち等にかなり時間がかかるため、駅直結といっても結構早めに行かなくてはならない…

『双蝶々曲輪日記』十次兵衛の二重身分、帯刀について [文楽あいうえお]

ごくたまに、文楽鑑賞のための豆知識メモ「文楽あいうえお」をtwitterに投稿しています。twitterだとイラストで説明するコンテンツには便利なのですが、文章での説明が長いものは書けないので、テキスト主体の拡大版を、ブログに載せていこうと思います。 は…