進化の不思議

 おれはあまり体が強いほうではなく、痛みや痒み、だるさを感じることが多い。

 あらためて考えると、こうした不愉快な感覚というのは多くの場合、体からの信号である。痛いというのはその場所で何かの異変が起きているという信号で、痛みという不快感は「早くなんとかせねばならない」と脳神経方面に感じさせる手段なのだと思う。

 こうした体の反応が、生命が生まれてから進化を続けて出来上がってきたというのは不思議でしょうがない。何しろ、放っておいたらというか、競争だ、適者生存(不適者敗退)だ、などとやっていたら、精妙な体の仕組みができあがってきたのだ。

 たとえば、出血しても、しばらく放っておくと血が固まり、カサブタができ、やがて剥がれ落ちる。当たり前のように思っているけど、こういう生化学方面の仕組みが自然にできあがったというのはすごいことではないか。

 免疫方面というのは今も研究が続けられていて、複雑にいろいろなものが絡み合い、人間の恒常性を保つ仕組みができあがっているとわかってきた。放っておいたら、免疫の仕組みができてしまったというのはこれまたなんとも不思議である。

 不思議だからといって、造物主がどうのこうの、と言い出すのもちょっと飛躍がある。

 多細胞動物が登場したのが6億年前だとして(おそらく研究によって時期はいろいろだろう)、6億年という時間と進化のシステムがあると、今の我々のように複雑精妙な体の仕組みが自然にできあがったというのは、何度も繰り返すが、不思議でしょうがない。