Q.ユーザー企業の情報システム部門の責任者です。経理や人事業務はパッケージを利用しており、カスタマイズや追加プログラムの開発は大手IT企業のA社に発注しています。実際は、A社の下請けであるIT企業B社が対応します。今回新たに、サブシステムを追加することになりました。プロジェクト体制図から見るとプロジェクトリーダーはA社マネジャーですが、この人が顔を出すのは、定例会と費用提示のときぐらいです。付き合いの長いB社がいるので困ることはありません。開発費用の原価構造は分かっており、その点から見ても、丸投げにしてはプロジェクト管理費を含めて全体的に高いと思っています。
筆者の顧問先企業での話です。質問者はIT企業出身で、費用構造をよく理解しています。なによりB社との付き合いが深いので、原価も分かっているわけです。
打ち合わせからパッケージのパラメーター設定、追加プログラム開発、導入サポートまで対応しているのはB社であり、いわゆる「丸投げ」プロジェクトになります。
B社のSEは優秀であり、顧客から信頼されています。付き合いも長く確かだとのことです。A社にとっては、顧客に信頼されている下請けのB社に丸投げしておけばよいので、ある意味幸せなプロジェクトだといえます。
サブシステムの追加でA社に支払う開発費用を仮に5000万円だとします。B社の売り上げは、半分の2500万円程度のようです。2500万円の差額すべてが中抜きの利益ではないと思いたいところです。
A社のSEは顧客との打ち合わせに参加していません。提案書や見積書・体制図を見たところ、プロジェクト管理やテクニカル支援、内部レビューなどの項目があります。そこに顔の見えないA社のSEが存在するのかもしれませんが、上積みされているのか疑わしいところです。見積もり上の人月工数と期間からフェーズごとの投入人数が推測できます。「開発費用一式○○○○万円」というような提案書や見積書だとしても、概算工数の提示は求めるはずです。投入人数と顔の見えるSEとの差が、顔の見えないSEの人数です。
費用(=工数)を納得できるまで説明してもらう
顧客側はシステム刷新のとき、複数のIT企業に提案や見積もりを依頼します。提案書や開発フェーズごとの見積もりからSEやプログラマーの単価が分かります。SEの1人月単金は、上級SEが200万円、SEで150万円といったところでしょうか。システム刷新で大規模システムの新規開発では、200万円を超える単金の場合も多いです。
見積もりはA社の単金で算出されています。B社のSEやプログラマーの単金との差額が、A社の利益になります。本稿では以下、単金の考え方の是非ではなく、見積もり根拠となる工数の妥当性について述べます。
費用(=工数)については、納得できるまでA社に説明を求めてください。単純な値引き交渉はするが、詳細な説明を求める姿勢がない顧客はなめられます。「あの会社は理解があって何も言わないので、良い会社だ」というような感じです。もちろん、褒め言葉ではありません。
システム開発費用の見積もりは、開発フェーズごとの工数の積み上げです。IT企業側は、1時間当たりの単価や生産性指標を少し変えるだけで、魔法のように見積額を上下させ調整することができます。提示される顧客側は、工数の算出根拠について念入りに確認しておくべきです。
IT企業は顧客に対し、システム運用期間が長くなるほど、保守や改造費用の投資を重ねているので他社に乗り換えられることはないと考えて提案してきます。同じものでも、顧客によって金額が変わることがあるということです。とことん説明を受けて吟味してください。納得できるか否かが大事なポイントですので、不明な点は必ず確認してください。