山上徹也被告の生い立ちは…安倍晋三元首相銃撃事件の被告 父と兄の死、母の入信で教団への恨み募らせ
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2022年7月、安倍晋三・元首相(当時67歳)が奈良市で街頭演説中に銃撃されて死亡した事件で、殺人罪などで起訴された山上徹也被告(45)の裁判員裁判が28日午後2時、奈良地裁で始まる。判決は2026年1月21日。

県内トップクラスの高校進学、その後に暗転
山上被告は1980年9月、裕福な家庭で育った母親と、建設関係の仕事をしていた父親との間に生まれた。大阪府東大阪市で暮らしていた幼少期、父親が自殺。母親と兄、妹との4人で、奈良市にある母親の実家に移り住んだ。中学校ではバスケットボール部に所属し、奈良県内トップクラスの県立高校に進んだ。
親族らによると、母親が統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に入信したのは91年。献金を重ね、99年には前年に亡くなった山上被告の祖父から相続した土地と家を売却し、家族で借家に引っ越した。2002年には破産宣告を受けた。
山上被告は、ほとんどの同級生が進学する中、大学に進まず、02年8月に任期制自衛官として海上自衛隊に入隊。しかし、精神的に不安定になり、自殺未遂騒動を起こした。
05年に海自を退職後、母親の元に戻るが、家賃を滞納するなど生活は苦しいままだった。15年頃、幼い頃から慕っていた一つ違いの兄が自ら命を絶ったという。

母親への思い
山上被告は自身のツイッター(現在のX)に「オレは母を信じたかった」と思いをつづりつつ、「(母親は)言葉では心配している、涙も見せる、だが現実にはどこまでも無関心。こんな人間に愛情を期待しても惨めになるだけ」と投稿していた。
安倍晋三・元首相を銃撃して逮捕された後には、奈良県警の調べに対して母親を「憎んでいるし、恨んでいる」「母親の入信で家庭生活がめちゃくちゃになった」と話したという。

なぜ安倍元首相に矛先を向けたか
捜査関係者によると、19年に来日した旧統一教会トップについて、山上被告は奈良県警の調べに「火炎瓶を使って襲おうとしたが近づけなかった」と供述したという。事件の直前に投函した手紙には、旧統一教会の創設者一族を名指しして「皆殺しにしたくとも、私にはそれが不可能な事は分かっています」と記していた。
手紙では、矛先を向けた安倍氏について「最も影響力のある統一教会シンパの一人に過ぎません」としている。そのうえで、「安倍(元首相)の死がもたらす政治的意味、結果、最早(もはや)それを考える余裕は私にはありません」と殺害をほのめかす記述もあった。安倍元首相銃撃後、県警の調べには「(同連合と)つながりがあると思った」と供述したという。
安倍元首相銃撃事件を巡る経緯と事件後の世の中の動き
1980年 山上被告が生まれる
1984年 山上被告の父親が自殺
1991年 山上被告の母親が旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に入信。その後、総額で約1億円を献金
2002年 山上被告の母親が破産宣告を受ける
2005年 山上被告が自殺を図る
2015年 山上被告の兄が自殺
2020年 山上被告が手製銃の密造を始める
2022年7月8日 安倍晋三・元首相が奈良市で街頭演説中に銃撃され、死亡。山上被告が現行犯逮捕される( 発生直後の記事はこちら )
2022年8月25日 警察庁が安倍氏の警護の検証結果を公表。警察庁長官と奈良県警本部長が辞意表明
2022年9月27日 安倍氏の国葬が営まれる( 様子を伝える記事はこちら )
2023年1月13日 奈良地検が山上被告を殺人罪などで起訴
2023年3月30日 奈良地検が山上被告を武器等製造法違反などで追起訴。捜査終結
2023年4月1日 悪質な寄付の勧誘を防ぐ「不当寄付勧誘防止法」が施行
2023年4月15日 和歌山市で岸田文雄首相(当時)が襲撃される事件が発生( 発生直後の記事はこちら )
2023年10月13日 文部科学相が旧統一教会に対する解散命令を東京地裁に請求
2024年7月14日 手製銃の規制を強化した改正銃刀法が施行
2025年3月25日 東京地裁が旧統一教会の解散命令を決定( 記事はこちら )。教団はその後、東京高裁に即時抗告
2025年10月28日 奈良地裁で初公判が開かれる
*山上被告の経緯は関係者への取材に基づく




























