諸橋轍次とは? わかりやすく解説

もろはし‐てつじ【諸橋轍次】

読み方:もろはしてつじ

[1883〜1982漢学者新潟生まれ東京文理科教授静嘉堂文庫長などを歴任昭和2年(1927)から同35年にかけて「大漢和辞典」全13巻完成した文化勲章受章


諸橋轍次

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/18 09:01 UTC 版)

諸橋 轍次
人物情報
生誕 (1883-06-04) 1883年6月4日
日本新潟県南蒲原郡
死没 1982年12月8日(1982-12-08)(99歳没)
出身校 東京高等師範学校
学問
研究分野 漢文学
テンプレートを表示

諸橋 轍次(もろはし てつじ、1883年明治16年〉6月4日[1] - 1982年昭和57年〉12月8日[1])は、日本漢学者漢字学者止軒[注釈 1]学位は、文学博士東京文理科大学名誉教授都留短期大学学長・都留文科大学初代学長[注釈 2]を歴任。大著『大漢和辞典』、『広漢和辞典』(各・大修館書店刊)の編者代表として知られる。直江兼続子孫を称した。

人物・生涯

新潟県南蒲原郡庭月村(後に四ツ沢村森町村下田村、現在の三条市庭月)の大庄屋の二男に生まれた[1][2]1908年東京高等師範学校卒業[3]後、漢学の教員として同校に勤める。青年時代には中国留学したが、このときに満足できる辞書がなかったことが、後の『大漢和辞典』の製作に繋がっていった[注釈 3]

1925年、大修館の鈴木一平が諸橋のもとを訪れ、全漢字を網羅した「漢和辞典」の構想を持ちかけられる。この『大漢和辞典』の本格的な製作は1929年から始まった。

1929年1月に文学博士を授与される[4]。博士論文の題は「儒学の目的と儒(慶暦慶元百六十年間)の活動」[5]1930年東京文理科大学教授[1]となる。 1943年、『大漢和辞典』第1巻が完成し、これにより翌年朝日賞を受賞した。しかし1945年東京大空襲で大修館が罹災し、組み上がっていた印刷用の版が全て溶けてしまったため、太平洋戦争後、完成していた巻と校正刷りをもとに再スタートを切った。

1946年、諸橋は長年の無理が祟って右目を失明、左目も明暗がやっとわかる程度にまで悪化し、1955年に右目の開眼手術を受けた。

1948年國學院大學文学部教授となるも翌年退任した。1957年都留文科短期大学学長に就任し、2年後に退任した。1960年、短期大学の四年制大学への移行と同時に初代学長として就任、同職を1964年まで務めた。

1960年、『大漢和辞典』全13巻が完成した[1]。この功績により1965年文化勲章を受章した[1]。『大漢和辞典』は数十年にわたり修訂し刊行された[注釈 4]

1972年に『中国古典名言事典』(講談社、のち講談社学術文庫、各・多数重版)、1975年-1977年に『著作集』(全10巻 大修館書店)が刊行された。

1982年11月、大漢和の縮小版『広漢和辞典』を刊行し、同年の12月8日に99歳で大往生した。

顕彰

1962年、下田村名誉村民[1]。1992年、三条市は諸橋轍次記念館を開設したほか、三条市名誉市民として顕彰している[1]。2018年9月30日には第1回の「諸橋轍次記念漢字文化理解力検定」実施を公表している[6]

受賞・栄典

位階
勲章

家族・親族

著作

諸橋轍次記念館新潟県三条市庭月)

単著

共著

編著

  • 『春秋左氏伝人名索引』諸橋轍次編纂・白橋康秀校正、1928年5月。 

作品集等

著作集

編者代表は鎌田正米山寅太郎
  • 『第1巻 儒学の目的と宋儒慶暦至慶元百六十年間の活動』大修館書店〈諸橋轍次著作集〉、1975年6月。 
  • 『第2巻 経学研究序説、詩経研究』大修館書店〈諸橋轍次著作集〉、1976年9月。 
  • 『第3巻 経史論考』大修館書店〈諸橋轍次著作集〉、1975年12月。 
  • 『第4巻 支那の家族制、儒教講話』大修館書店〈諸橋轍次著作集〉、1977年3月。 
  • 『第5巻 論語の講義、現代に生きる『大学』』大修館書店〈諸橋轍次著作集〉、1976年3月。 
  • 『第6巻 如是我聞孔子伝、如是我聞孔子伝拾遺、論語と私、論語心講』大修館書店〈諸橋轍次著作集〉、1976年12月。 
  • 『第7巻 論語人物考、論語に関する故事逸話、孔子と老子』大修館書店〈諸橋轍次著作集〉、1977年6月。 
  • 『第8巻 老子の講義、荘子物語、孟子の話』大修館書店〈諸橋轍次著作集〉、1976年6月。 
  • 『第9巻 遊支雑筆、十二支物語、漢字漢語談義』大修館書店〈諸橋轍次著作集〉、1975年9月。 
  • 『第10巻 古典のかがみ、続・古典のかがみ、止軒詩艸、回顧、教育・随想、対談・挨拶、序・跋等』大修館書店〈諸橋轍次著作集〉、1977年9月。 

諸橋轍次選書

  • 『1 如是我聞孔子伝 上』大修館書店〈諸橋轍次選書〉、1990年3月。ISBN 978-4469120516 
  • 『2 如是我聞孔子伝 下』大修館書店〈諸橋轍次選書〉、1990年3月。ISBN 978-4469120523 
  • 『3 孟子の話』大修館書店〈諸橋轍次選書〉、1989年9月。ISBN 978-4469120530 
  • 『4 荘子物語』大修館書店〈諸橋轍次選書〉、1989年4月。ISBN 978-4469120547 
  • 『5 現代に生きる大学』大修館書店〈諸橋轍次選書〉、1989年6月。ISBN 978-4469120554 
  • 『6 古典のかがみ』大修館書店〈諸橋轍次選書〉、1989年11月。ISBN 978-4469120561 

辞書類

大漢和辞典

  • 『大漢和辞典』全13巻、大修館書店、1955年11月-1959年12月。
    • 「縮写版」全13巻、大修館書店、1966年5月-1968年5月。
    • 「修訂版」全13巻、大修館書店、1984年4月-1986年4月。
    • 「修訂第2版」全14巻、大修館書店、1989年4月-1990年4月。
    • 「補巻」鎌田正、米山寅太郎編、大修館書店、2000年4月。
    • デジタル版」大修館書店、2018年11月。

新漢和辞典

  • 『新漢和辞典』大修館書店、1963年2月。 
    • 『新漢和辞典』(改訂版)大修館書店、1967年1月。 
    • 『新漢和辞典』(3訂版)大修館書店、1973年3月。 
    • 『新漢和辞典』(4訂版)大修館書店、1975年12月。 

中国古典名言事典

広漢和辞典

  • 『広漢和辞典』全4巻、大修館書店、1981年11月-1982年10月。

関連書籍

  • 『諸橋博士古稀祝賀記念論文集』諸橋轍次先生古稀祝賀記念会、1953年10月。 

回想・伝記、出典

脚注

注釈

  1. ^ 止軒の止は、『荘子』の徳充符篇にある、「仲尼曰:人莫鑑於流水而鑑於水,…」(仲尼曰く、人は流水に鑑みること莫(な)くして、止水に鑑みる)からの引用(莊子/德充符)。「止水に鑑みる」とは、静止した水を鏡としてそこに姿をうつすことで、雑念のない虚静の心に物をうつして、その真実をとらえるという意味である。原田種成(はらだ たねしげ、1911年 - 1995年)は、「この止軒という号に先生の生き方をうかがうことができる。」と述べている(原田種成 p.109)。
  2. ^ 四年制大学としての初代学長。
  3. ^ 「中国では康熙字典はあるが熟字はなく、佩文韻府は成語は多いが解釈はない。では一つ自分がやってみようかと、おぼろげに感じた」(「私の履歴書」より)
  4. ^ 但し門下生の原田種成の回想[要文献特定詳細情報]では「高等師範の出身者は漢文の読解力が不足していたから『大漢和』の原稿作成に関与することはとうていできない」ため原田ら大東文化學院(現・大東文化大学)の出身者が実際の執筆に携わり、かつ諸橋轍次は大漢和辞典を一字も書いていないばかりか校正刷りすら見ていないという。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i 諸橋轍次|名誉市民”. www.city.sanjo.niigata.jp. 三条市. 2023年1月18日閲覧。
  2. ^ コレクション展示「諸橋轍次の父 諸橋安平展」※終了しました諸橋轍次記念館 2024年4月4日
  3. ^ 東京高等師範学校一覧 自明治41年4月至明治42年3月』東京高等師範学校、1908年、369頁。 
  4. ^ 『官報』第614号、昭和4年1月18日、p.329
  5. ^ 書誌事項(CiNii Dissertations)”. 国立情報学研究所. 2019年3月11日閲覧。
  6. ^ 諸橋轍次記念漢字文化理解力検定”. 三条市諸橋轍次記念館. 2021年3月23日閲覧。
  7. ^ 『官報』第5651号「叙任及辞令」1945年11月12日。
  8. ^ 『官報』第4456号「叙任及辞令」1941年11月14日。

関連項目

外部リンク




諸橋轍次と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

','','','','','','','','','','','','','','','','','',''];function getDictCodeItems(a){return dictCodeList[a]};

すべての辞書の索引

「諸橋轍次」の関連用語

1
大漢和辞典 デジタル大辞泉
78% |||||








9
38% |||||

10
36% |||||

諸橋轍次のお隣キーワード
検索ランキング
';function getSideRankTable(){return sideRankTable};

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



諸橋轍次のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの諸橋轍次 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS