児童ポルノ規制に関する
奈良県,京都府,大阪府の各条例比較解説
曽我部真裕(京都大学)
1.はじめに
近年,児童ポルノ[1]の被害の深刻さが広く認識されるようになり,児童ポルノ規制法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)に基づく検挙が積極的に行われているほか,法律が規制対象としていない行為を罰則等によって規制する都道府県条例が制定される例が見られる。
その最初の例は,2005年制定の奈良県の子どもを犯罪の被害から守る条例(以下「奈良県条例」という。)であるが,その後,2011年にはより包括的な京都府・児童ポルノの規制等に関する条例(以下「京都府条例」という。)が制定され,2012年には大阪府や栃木県でもこの種の規制の可否が検討された。このうち,大阪府においては,青少年健全育成審議会の特別部会において児童ポルノの規制を強化するための青少年健全育成条例(以下「大阪府条例」という。)改正の是非について検討が行われたが,国の立法の動きが見られたことを理由に,現在,検討は中断している。他方,本稿では副次的に触れるに留めるが,栃木県では,2013年3月に子どもを犯罪の被害から守る条例が制定された(同年7月1日施行予定)。
本稿では,奈良県と京都府の条例とを,大阪府での検討内容の紹介も交えて比較検討し,この問題を考えるための素材を提供したい。なお,筆者は,大阪府の上記特別部会の委員として検討に加わった者であるが,以下の記述内容は,もちろん個人的な見解である。