超メモ帳(Web式)@復活

小説書いたり、絵を描いたり、プログラムやったりするブログ。統失プログラマ。

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「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を観てきた。

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「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を観てきた。


今日は「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を嫁さんと一緒に観に行ってきた。端的に言うと、物凄く美麗で繊細な作品であった。こちらで感想を述べて行こうかと思ったが、今日が公開初日であるし、ブログでネタバレしたら人によっては死ぬほど恨んでくるというケースもあるし、ネタバレしないようにテレビ版から読み取れる情報と自分の雑感のみを語らせていただこうかと存じます。


この作品は嫁さんがめちゃくちゃ感動するから良いよー、みたいな事を言われて、自分もNetflixなどで実際にテレビ版のヴァイオレット・エヴァーガーデンを観て、二人でファンになって一緒に劇場版を見に行ったのですね。テレビ版でもそうだったんですけど、作りこまれた世界観とか風景描写などがひたすら巧緻な作品で、工業革命時代っぽいヨーロッパの風景とか、田舎の木漏れ日が溢れる田園風景とか、その風景を見るだけで心がふんわりとしてくるんです。


物語のつくりも、人間らしい感情を持っていなかったヴァイオレットが、手紙を代筆する「ドール」の仕事を通じて、人間の心を解き明かしていって成長するストーリーなんです。今回公開された劇場版は、そんなヴァイオレットの旅の終わりが描かれた作品なんですけど、最後の場面に至るまでにいろんな壁にぶつかって、それを乗り越えていった上で成長して結論に至るみたいな終わり方でした。感情を知らなかったヴァイオレットが、人間を知りたいと思うきっかけの言葉があった。成長したヴァイオレットはそれに真正面から向き合うのですね。


世界観の詰め込みが半端じゃないんですよ。僕らが住んでいる世界とはまた違う世界なんですけど、仕組み自体は全く同じ世界。その世界の中で戦争があって、ヴァイオレットは戦闘兵器として使われていた。その過去に振り回されていた時期もあったのだけど、「ドール」の仕事をこなしていく内に成長していく。それでも恩義のある少佐を失ってしまったトラウマに囚われている。そして、そんなヴァイオレットを助けてくれる仲間たちや、仕事で知り合ったクライアントとの関係性。それらが緻密に絡み合って物語が展開していくのです。


この作品の物語は、クライアントの話を聞いて手紙の代筆を行う「ドール」の仕事一つ分で完結していきます。今回の劇場版では、そのテレビ版の一つの物語のその後が語られているのですけど、過去現在未来が交錯してヴァイオレットの生きざまが描写されていくんです。この物語の伏線の絡み合いが素晴らしくて、作品としての完成度が高いなと思う。


僕も小説を書いたりするんですけど、ああやって世界観とうまく絡めて複雑な伏線をまとめていくというのは高難易度で、素晴らしいプロの仕事をみた気がします。登場するキャラクターが全員いきいきしていて、それぞれが考え方や癖を持っておりそれらの思惑が交錯していって物語になっていく。モブキャラですら使い捨てでなく何かしらのバックボーンを感じさせる振る舞いをするので、相当に世界観が練りこまれています。


このヴァイオレット・エヴァーガーデンの見どころというと、こんな超高密度に練り上げられた世界観なんだと思います。時代は工業化が進み始めたフランスみたいな描写がなされていますけど、その時代での情報伝達の手段としては手紙が最も使われていた。しかしながら、作中では電話が使われ始めている描写があった。ドールの一人は電話を敵視していたけど、結局、人の心を伝達するのは道具ではなく使う人の気持ちにより深いコミュニケーションが成立するのであるな、と思う。


この作品は人の心を知らないヴァイオレットが、人の心を繋ぐ手紙の代筆を行う「ドール」をやる。という所に面白みがあるんだと思います。頓珍漢な反応もするのだけど、まっすぐに人の心に向き合うヴァイオレットの手紙は深いコミュニケーションを生み出す。そういう設定の面での面白さで物語の序盤はドライブしていったのだけど、ヴァイオレットのトラウマが後半の主題になっていきます。バイオレットは人のために手紙を書いていたのだけど、今回の作品では自分のために手紙を書きます。そんな、今まで受け身だったバイオレットが自分の考えのもとで手紙を書くまでに成長している。そういうビルディングストーリとしての読み方もあるでしょう。


この作品を作ったのは京都アニメーションなのですけど、京アニというと以前残忍な事件があって多くの犠牲者を出した。もう、作品を作ることはできないのか?とも思ってたんですけど、あの事件の後に初めて作られたこの作品は、作画のすばらしさとかそういう面もさることながら、人間の心にきちんと向き合って深いところに突き刺さる素晴らしい作品でした。どんなに人が憎みあうような嫌な時代であっても、人はいずれ分かり合って繋がりあうことができる。そんなことを作品で提示された気がしました。

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