IoT時代のUXデザイナーに求められる3つのこと
こんにちは、@h0saです。
2015年8月5日に開催された UX JAM #1 に、ライトニングトークの登壇者として参加しました。
このイベントは、UX MILK というUXに関する情報を扱うメディアを運営するコネクトスターさん主催のイベントで、偶然が重なり声をかけていただくことになりました。
5分のLTということで何を題材にするか悩みましたが、テーマとして選んだのは「IoTとUXデザイン」。(当日のスライドは以下です)
現在僕はウェアラブルデバイスやそれを取り巻くWebサービスのUXデザインに携わっており、IoTを身近に感じています。今いるベンチャー企業で開発中のデバイス&サービスはまだ世に出ていないので具体例は出せませんでしたが、今仕事をしていて考えていることをお話してみました。
この記事では、LTの内容を補足しながら、改めて文章にしてみます。
IoTとは?
IoTとは、言わずもがな “Internet of Things” の略で、モノのインターネットと呼ばれます。あらゆるものがインターネットにつながってデータがやりとりされるイメージ。
かつては「ユビキタス」という言葉で似た概念を耳にしていましたが、最近ではセンサー技術の発達やウェアラブルデバイスの普及に伴い「IoT」と言葉を変えてブームが再来している感じがします。
Gartnerの調査(2014年)によると、モノのインターネットは「過度な期待のピーク期」にあるとのこと。
引用:ガートナー | プレス・リリース |ガートナー、「先進テクノロジのハイプ・サイクル: 2014年」を発表
[2015年8月23日追記]
2015年のハイプ・サイクルも発表されたようです。”IoT” は未だ「Peak of Inflated Expectations(過度な期待のピーク期)」の頂上に位置しています。
また同じくGartnerによると、2015年の終わりまでに49億のデバイスがインターネットに繋がり、2020年までにその数字は250億に増えると予測されているとのことです。
参考:Gartner Says 4.9 Billion Connected “Things” Will Be in Use in 2015
このようなまだ誰も体験したことのない先進領域にこそ、優れたUXをデザインすることが期待されます。
IoT時代のUXデザイナーに求められること
さてここが本題。IoT関係の業務に携わってまだ10ヶ月しか経っていませんが、UXデザイナーとしてやるべきこと、求められることを自分なりに3つにまとめてみました。
1. マクロとミクロを行き来する
1つ目は、マクロの視点とミクロの視点を行き来すること。
マクロの視点とは、ビジネスゴールや独自の提供価値を誰にどう提供するのか?という視点です。
- リーンキャンバス
- サービスブループリント
- カスタマージャーニーマップ
といったツールを活用しながらビジネスとサービスを俯瞰し、IoTに関わるモノ・ヒト・カネの視点からUXを構築する必要があります。
一方ミクロの視点とは、タッチポイントとなるウェアラブルデバイスやモバイルアプリの具体的なインタラクションという視点です。これはもはやUIデザインの領域とも言えますが、優れたUXとは切っても切り離せません。
操作画面のあるデバイスでは画面の存在が大きいのはもちろんですが、
- LED
- バイブレーション
- 音
といった画面UI以外の視覚、触覚、聴覚による通知、マイクロインタラクションの心地よさ/悪さも大きくUXに影響し、ひいては提供価値そのものにもインパクトを与え得ます。
(Apple Watch には賛否両論ありますが、あの心地良いバイブレーション通知をしてくれる Taptic Engine の否定の声は聞いたことがありません。)
このようなマクロの視点とミクロの視点を常に行き来しながら、プロトタイピングを繰り返し行うことでUX全体の完成度を上げていくことが大切です。
2. テクノロジーを理解する
テクノロジーを理解することも、IoTに携わるUXデザイナーに求められます。
- ネットワーク(Wi-Fi、Bluetooth、BLE 等)
- センサー(加速度センサー、音声センサー 等)
- データ(ビッグデータ、アルゴリズム 等)
といった技術の基本知識があれば、エンジニアとの対話に役立ちます。
ある機能の実現性を検討する際、専門用語が飛び交いつつもキーワードさえ知っていればその議論にUX視点で参加することができます。また、前もって技術的な制約を理解しておけばエンジニアとの無駄なコミュニケーションコストを払わなくて済みます。
特にネットワーク技術に関しては、IoTのUX全体に関わる部分なので、知っていて損はありません。
プログラミングだけでなく、上記のようなテクノロジーの知識を得ることで、生産性を上げると同時にUXデザイナーとしての幅を広げることになるのは間違いありません。
(今後は人工知能(AI)といった分野の勉強もしなきゃと個人的に焦燥を感じています。)
3. 組織のハブになる
UXデザイナーは組織のハブになるべき存在です。
小さいWebサービスであれば、デザイナー、エンジニア、マーケター、の3人という最少人数でプロジェクトを進めることは可能でしょう。しかし、IoTでは関わる人が必然的に多くなります。
エンジニアであれば、メカ、エレキ、ファームウェアといったモノに関わるエンジニアが増えます。
デザイナーも、インダストリアルデザイナーは必須です。
このように関係者が多くなる中、共通に意識しておくべきは「ユーザーにどんな体験を提供するか」です。すなわちUXがチームをつなぐキーワードとなり、UXデザイナーは組織のハブとなり得ます。
いかに関係者とコミュニケーションして、ベストなUXをつくり上げるか。コミュニケーションスキルやファシリテーションスキルがより一層UXデザイナーに求められるのではないでしょうか。
おわりに
以上、IoT時代にUXデザイナーが求められることを自分の体験をベースにまとめてみました。正直、僕自身はここで書いた内容の6割ぐらいしか実践できていません。
まだまだ研鑽が必要な状態ですが、ライトニングトークを契機に今感じていることを棚卸ししました。
最後に、僕は日本にとって IoT のブームはチャンスであると考えています。特に東京においては、100年以上歴史のあるメーカーから新進気鋭のITベンチャーまでが同居しており、こんな場所は世界のどこを探しても見当たりません。
メーカーの技術、資産、人材と、ベンチャーのスピード、自由さ、人材が良いシナジーを起こせば日本は必ず再起できると信じています。僕もその一端を担いたいと切に思います。
参考書籍
以下、「マクロ←→ミクロ」「理論←→実践」という軸で参考になる書籍をまとめてみます。
Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES)
サービスデザイン ユーザーエクスペリエンスから事業戦略をデザインする