カテゴリー「マーケティング・仕事」の193件の記事

2025年1月 6日

「スタバで Mac ドヤァ」が「絶滅危惧種」って?

東洋経済 ONLINE に "「スタバで Mac ドヤァ」実はもう絶滅危惧種なワケ" (2024年 12月 24日付)という刺激的なタイトルの記事を見つけ、気になってしまった。私は出先で空き時間に仕事をしたりこのブログを書いたりする時には、コーヒーショップで 愛用の MacBook を開くことが度々あるもので。

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「スタバで Mac ドヤァ」というのは、「スタバの店内でマックの PCを 開き、長時間ドヤ顔で作業する人を揶揄した言葉」なんだそうだ。それが「絶滅危惧種」というわけか? しかし実を言うと、私はスタバに限っては Mac を開いたことがなかったのだよね。

ほかの店では何度もあるが、スタバってテーブルが低くて小さいので PC を使いにくいという先入観があり、気取った雰囲気にも抵抗があって、これまではほぼ意識的に避けてきた。ところがこの記事を読んだ途端、俄然へそ曲がりの虫が騒ぎ始め、スタバで Mac を開きたくなってしまったのである。

というわけで今、守谷市内のショッピング・モールのスタバで MacBook を開き、この記事を書いている。来てみれば私の先入観を裏切り、6人が余裕で囲める大きくて手頃な高さのテーブルがあり、その各席に電源まであるじゃないか。「絶滅危惧種」をおびき寄せる特別仕様かと思うほどだ。

この大テーブルでは今、4人が席についており、私を含めた 2人が MacBook を開いている。あとは Asus のサラリーマン風と、iPad でゲームに夢中のフリーター風男子だ。そしてちょっと離れた小さなテーブル席には、MacBook の男性と女性が 1人ずつ、そして Dynabook の男性が 1人いる。

ということは、iPad を除いた店内の PC の Mac 率は 67% で、不純な動機の私を除いてカウントしても 60%だ。世間一般のシェアと比較すれば驚異的に高いし、ほかのコーヒーショップと比べてもかなり高いと思う。ただ、それには単純な理由があるだろう。

会社支給のほとんどが Windows PC という世の中で、Mac ユーザーは私を含めてフリーランスが多い。そしてフリーランスはリモートワークが多くなりがちなため、スタバでの Mac 比率が高くなるのはごく自然の成り行きでしかないということだ。

そして今回如実に気付いたのだが、スタバって仕事の邪魔になるような「大声で話す客」がいなくて快適なのだね。無遠慮な大声や嬌声にうんざりすることが多々ある他店に比べると、これは大きなメリットと言える。件の記事がこの肝心な点について一言も触れていないのは、一体どういうことなんだろう。

いずれにしても、今後は宗旨替えしてスタバを毛嫌いせず、リモートワークの場として有力候補の一つにしておこう。

この辺で念のために書いておくが、実際に「スタバで Mac」している客は「ドヤ顔」なんてちっともしていない。とくに私の真向かいの女性なんて仕事の締め切りギリギリなのか、「ドヤ顔」とは対極的な「悲壮感」さえ漂わせている。年末年始に遊び過ぎたのかもしれないね。気の毒に。

件の記事はよく読むと、「絶滅危惧種」という刺激的な言葉はスタバで仕事する Mac ユーザーを指すのではなく、「スタバで Mac ドヤァ」という「イメージ」について語っているように思われる。とすると、この見出しはキャッチーではあるけれど、「雰囲気のもの」過ぎて混乱を招くよね。

それからこの記事の "むしろ「禁煙」を求めて足を運ぶ人が多い?" という小見出しにしても、今どきは別にスタバでなくても飲食店の多くがフツーに禁煙なのだから、かなり時代錯誤的だ。というわけで実際に「スタバで Mac」してみて、この記事の「ビミョーなピントのずれ方」が実感されたのだった。

いずれにしても「スタバで Mac するのに余計なことを気にする必要なんてない」ってことだ。私はコーヒーショップで 1時間ぐらい Mac を開いて仕事をする時には、長時間の「ショバ代替わり」にドーナツなどのサイドメニューもオーダーすることにしているので、なおさら気兼ねなく使わせてもらう。

年末年始は箱根駅伝のテレビ観戦以外はずっと家で仕事していたので、思いがけずトライした人生初の「スタバで Mac」が、ちょっとした気分転換になったのはありがたい。

 

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2024年12月14日

マルチタスクよりシングルタスクの方が、仕事がはかどる

「学び続けるビジネスパーソンへ」というサブタイトルのついた "STUDY HACKER" というサイトに「仕事が多すぎて終わらない人が知らない "マニャーナの法則"|残業激減、逆転の仕事術」というページがある。「マルチタスクは逆効果」という話だ。

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これは柴田香織さんという方の記事で、次のようにある。

「マルチタスクで仕事をこなそう」というその発想自体が、実は仕事が終わらない原因かもしれません。本記事では、効率的な仕事の進め方に悩む方に、意外な解決方法をご紹介します。それは、「明日できることは今日やらない」という逆説的な対処法です。

人間の脳は複数の仕事を同時に処理できないらしい。明治大学の堀田秀吾教授は「私たちが『複数の仕事を同時に行っている』と感じる時、実際には脳が高速で仕事を切り替えているだけ」と言っているという。

「シングル・タスク」をどんどんこなすために「明日できることを今日やらない」ことを、この記事では「マニャーナの法則」と称している。なるほど、言い得て妙だ。

これはまさに実感で、私も経験上「複数の仕事の同時進行」は避けるようになっている。「明日以降でもいい仕事」を今日やろうなんて思わず、とにかく「ギリギリ差し迫った仕事」に集中してどんどん仕上げていく方が効率的だ。仕事をするに当たっては、「集中力」に勝るものはない。

ちなみにこの集中力が途切れてしまうのは、一人で仕事をしている時に玄関のピンポンが鳴って「宅急便です〜」なんて声がかかった時などである。あるいは妻が高いところにしまってあるものを「ごめん、取ってくれる〜?」なんて言い出した時も「軽くプッツン」だ。

在宅で仕事をするフリー・ライターならではの悩みなのかもしれないが、このプッツンから回復して再び集中するまでには、結構な時間的ロスが生じる。会社で仕事をする人にとっては「突然のどうでもいい電話」なんかがこれに当たるかもしれない。

このロスをなくすために、集中力の必要な仕事に取りかかる前には、仕事を遮りそうな要因をできるだけ減らす。途中で邪魔になりそうな細かいことは前もって仕上げておく方がいい。

これに結構な時間を取られてしまうのが悩みの種ではあるのだが、それでも後から降りかかってきて面倒になるよりはずっとマシだ。それが叶わない時の奥の手は、MacBook 持参でコーヒーショップなどに避難することである。雑事から離れて「短期集中」でこなすことができる。

ところで今日 12月 14日は「忠臣蔵討ち入り」の日だが、歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』を見ると、途中で勘平が切腹したり、お軽のいる祇園一力茶屋で大星由良助が酔い潰れてみたりと、討ち入りとは直接関係のない筋が盛りだくさんで結構な「マルチタスク」である。

エンタテインメントというのは仕事とは逆で、効率的にさくっと片付くよりも、いろいろなストーリーが錯綜する方が面白いのだね。来年 3月の歌舞伎座は注目だ。

 

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2024年10月25日

ワタミのサブウェイ買収というニュース

居酒屋のイメージが強いワタミが、ファストフードに参入するんだそうだ。TBS は速報で "ワタミが「サブウェイ」の日本事業を完全子会社化 ファストフード事業に参入…「ワタミのブランドもかなり年を取った、若者に人気のブランドに」渡邉美樹社長" と伝えている。

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TBS は居酒屋チェーンの収益性について「大人数での宴会などが減ったことに加え、若者を中心にアルコール離れが加速。国内の人口減少もあいまって、市場は縮小傾向です」とした上で、「若者に人気のブランドにもう1回戻そうじゃないかと」という渡邉社長のコメントを伝えている。

ワタミの今後の展開としては「ファストフードは今後も市場規模が拡大していくとみられ、現在 178店舗のサブウェイを 3000店舗規模まで広げたい考え」としているのだが、そう簡単に事業拡大できるかどうかは疑問だ。というのは、日本のサブウェイ展開は結構苦戦しているからだ。

サブウェイは世界規模で見るとマクドナルドを超える最大のファストフードチェーンなのだが、日本に限れば 1991年にサントリーの子会社としてスタートして以来、2014年には店舗数が 380店舗に達したが、それ以降は不振で、現在は 178店舗まで縮小しているという。

日本でのサブウェイの不振について私は、2019年 1月 18日付で "日本での Subway 不振に見る 「文化の違い」" というタイトルで書いたことがある。この辺りのことを解決しないと、3000店舗まで拡大するというワタミの構想は実現できないんじゃなかろうか。

個人的にはサブウェイのサンドイッチは好きだし、最近は肉を食わないことにしているので、野菜だけの「ベジーデライト」などは本当にありがたい。

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しかし最近はサブウェイの店舗が少なくなってしまったので、出張の時などの食事に困ってしまう。関東ではそば屋に入れば済むが、西日本ではそば屋が少ないので、丸亀製麺を探すしかない。サブウェイがどこにでもあれば本当に助かるので、ワタミには頑張ってもらいたい。

 

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2024年10月 5日

ビジネスメールの署名に勤務時間を明記することの意味

HUFFPOST に 10月 2日付で "勤務時間外のメールチェックはもう終わりにしよう。署名に「ウェルネス文言」を付けるのがアメリカで流行の兆し" という翻訳記事がある。この見出し中の「ウェルネス文書」(健康文書?)というのは初耳の人が多いだろう。私も「何のこっちゃ?」と思った。

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HUFFPODST 英語版を探したところ、"How To Write An Email Signature That Actually Promotes A Life Outside Work" (仕事以外の人生を上手に送れる Eメールの署名の書き方)というのが見つかった。どうやらこれが今回の元記事のようで、日本語版の見出しはずいぶん思い切った「意訳」である。

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この中で「ウェルネス文書」に該当するの元の言葉は "wellness-promoting email signature" (健康促進 Eメール署名)だった。「意訳」ついでとはいえ、「ウェルネス文書」ではいくらなんでも唐突過ぎるよね。せめて「ウェルネス署名」にしてもらいたかった。

この場合の "signature" (署名)というのはメールの末尾に付ける名刺代わりみたいなもので、例えば私の場合こんなようになる。

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とどのつまり問題の記事は、「仕事と生活のバランスをうまくとって健康に生きていくための、ビジネスメールの署名の書き方」を考えるためのもののようなのである。そのためには、署名の中に自分の勤務時間を明記することが推奨されている。

この記事の筆者である Brittany Wong さんの同僚は、Eメールを出すにあたって次のような断り書きを自分の署名に加えているという。

My working hours are typically 8:30 a.m. ET to 6 p.m. ET, Monday to Friday. If these are not your working hours, please do not feel an urgency to respond outside of your typical working hours.

私の勤務時間は通常、月曜日から金曜日の午前 8時 30分から午後 6時(米東部時間)です。もしこの時間帯があなたの勤務時間外である場合には、あなたの仕事の時間以外で返信を急ごうとされなくても結構です。

米国は東部と西部で 3時間の時差があるから、こうした表記には日本人が考える以上の意味がある。お互いのプライベートな時間を大切に考えていると示すことができるのだから、気の利いた配慮である。

日本の場合だとここまで丁寧に書かなくても、「勤務時間 9:00〜18:00(土日、祭日は休み)」ぐらいにさりげなく明記しておくだけでも意味があるだろう。相手は「18時以後にメールを送っても、明日の 9時過ぎまでは返信がないだろう」と納得することができる。

これ、早速やってみようと思ったのだが、考えてみれば私はフリーランスなので「通常の勤務時間帯」というのが存在しないのだった。土日だろうが祭日だろうが、必要とあらば仕事してしまう。メールチェックは夜でもするし、そのまますぐに返信してしまうことだって度々だ。

こちらが夜に返信しても、先方がそれを読むのは翌朝だろろうから「朝イチのメール」ということになり、それで構わないのだが、相手もフリーランスだと、夕食後のくつろぎ時間を邪魔することになりかねないから考え物である。これを機に、メールは朝になってから送信するように心がけよう。

 

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2024年9月14日

「ヴィレッジヴァンガード」という店の失敗とは?

東洋経済 ONLINE で "大量閉店「ヴィレヴァン」経営が犯した最大の失敗" というタイトルを見て、まず最初に浮かんだのは「ヴィレヴァンって何だ?」という疑問である。これ、モロに初耳だったもので。

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記事の冒頭を読んで「ヴィレッジヴァンガード」の略だとわかったものの、それでもまず思い浮かんだのは、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジにある "Village Vangurard" の方である。直接訪問したことはないが、このジャズ・クラブでのライブ録音はずいぶん聞いている。

記事の写真をまじまじと見てようやく、「そういえば、イオン・モールつくばのユニクロの向かいに、こんなような見かけのショップがあったな」と思い当たった。記事には「遊べる本屋」とあって、どうやらサブカルっぽさが売り物らしい。

店に入ったことは一度もないが、外から見た印象ではわけのわからない小物が雑多に積み重なっているばかりで、「本屋」っぽい雰囲気はまったくない。率直に言って、自分の欲しいものが手に入りそうな気はまったくしないし、客が入っているのを見たこともない。

記事によれば、この「ヴィレヴァン」とやらの 2024年 5月期の決算は、売上高が約 247.9億円で前期比約 2%の減少。営業利益は 9.15億円の赤字(最終赤字は 11.4億円)となっている。店舗数で見ても一時は全国で 400店舗を展開していたが、現在は 300店舗を割り込みそうな状況だという。

記事には、「ヴィレッジヴァンガード全店巡る人(ヴィレ全)さん」という方(その筋では有名人なのかなあ)が、この不調の原因を次のように語っていたとある。

  1. ショッピングモールなどへの出店を進めたことによって、「ヴィレヴァンらしさ」が普通のものになってしまった
  2. 人材教育が十分にされなかったことで、ヴィレヴァンを支える店員にサブカルの知識が薄く、普通の売り場しか作れなくなってしまった

というわけで、ヴィレ全さんみたいな濃い顧客には、現在の店舗が薄味になってしまっていることが不調の原因と映るのだろう。しかし、あの店作りを一目見て、「普通の売り場」とは到底感じられない私のような者には、原因は別のところにあるとしか思えない。

それは単純な話で、要するに「オーバーストア」だったんだろうということだ。アヤシい和製英語だが、要するに「店舗数過剰」ということである。

サブカルチャーのマーケットは元来それほど大きなものじゃない。限定的な市場に向け、調子に乗って大量出店し過ぎれば、限界にぶち当たるのも当然である。

そんな状況でヴィレ全さんの言うようにマニア向けの「濃い味」を徹底しちゃったりなんかしたら、ますます「過剰」になってしまうというのはマーケティングの常識だ。というわけで「ヴィレヴァン」も店舗数を適正規模に絞り込めば、まともな経営を継続できるだろう。それなら余計な人材教育も要らないし。

要するにそれだけの話なんだと思う。とくにフツーのショッピングモールでのヴィレヴァンって完全に場違いだから、さっさと撤退した方がいい。

 

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2024年7月14日

レナウンが名実ともに消滅するというので

東京商工リサーチが "法人としての「レナウン」が消滅へ" という記事を伝えている。同社は 4年前の 2020年に実質的に倒産してしまっていた(参照)のだが、面倒くさい法的な手続きがようやく終了して、今年中には名実ともに世の中かから「消えてなくなる」ことになったのだそうだ。

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私がジャーナリズムや業界団体で繊維・アパレル業界と密接に関わっていたのは、1980〜2000年までのほぼ 20年間だった。アパレル・メーカーの社員として直接業務に関わったことはないが、それだけに客観的な視点で業界をウォッチすることができたと思っている。

レナウンは 1990年代には売り上げ 2000億円を突破して、世界最大のアパレル・メーカーとなっていた。しかし外部から見ると、その「世界最大」というにふさわしい明確なコーポレート・アイデンティは感じられなかったのである。

何しろ販路は百貨店頼りで、主力商品は「アーノルド・パーマー」ブランドに代表される値段だけはいっぱしに高いカジュアルウェアと、一応扱っていた婦人服。ただ婦人服とはいえ、いわゆる「ミッシー・カジュアル」という名の、無難ではあるがぱっとしないものばかりだった。

そしてあまり目立ちはしなかったが、実はおっさんの下着(アンダーシャツとか、ブリーフとか)の売り上げが結構大きかった。元々は大阪で創業した「メリヤス屋さん」だったのだから、それは当然である。

歴史を振り返れば、「メリヤス屋さん」が東京に本社を移し、1960年代の「ワンサカ娘」(シルヴィ・ヴァルタン起用)だの「イエイエ」だのの CM がヒットして高度成長の波に乗ったのが売上拡大の契機となった。そして 1970年代にはアラン・ドロンを CM に起用し、「ダーバン」を立ち上げた。

ここはレナウン追悼の意味で、話題となった CM を列挙しておこう。今の目で見れば 3つともビミョーにダサい(2番目はモロにダサい)が、当時はエラく話題になったのだよ。

広告代理店には相当に高い金を払ったとしか思われず、電通はレナウンに足を向けて寝られない。ただ、CM を通じて世の中に広まったファッション・コンセプトがグループ内にしっかり還元されることは遂になく、会社を訪問しても雰囲気は「アパレル・メーカー」というよりむしろ「二流の商社」だった。

男性社員はビシッとダーバン・スーツを身に付けてはいるが、それは単に「自分のところの品物だから」でしかなく(社割で安く買えるしね)、営業部門と企画部門の意思疎通なんてほとんど感じられなかった。そうした意味では、どこまで行っても「メリヤス屋さん」だったのだと思う。

そんなわけなので高度成長期に数字だけはやたら伸びたものの、遂に「スマートでしっかりしたファッション企業」になることはできず、新時代への対応は致命的に遅れた。それでバブル崩壊とともに足許から崩れてしまったというわけだ。

そのあたりの雰囲気は、WWD の "レナウン破綻1年 23歳元社員の挫折「服が好きなだけじゃ、やってけない」" という記事を読めば如実に伝わってくる。

この記事に登場する入社 1年でレナウンを退社した吉田修太郎さん(仮名)は、学生時代から「洋服好き」だったのに、アパレル業界を目指して就職活動を始めるまでレナウンを知らなかったという。つまり 2020年頃、レナウンのイメージは既に「ファッション業界の埒外」だったのだ。

レナウン関係者には知り合いも少なくないのであまりムチャクチャなことは言いたくない気もしていたが、今回は敢えて率直な書き方をさせてもらった。悪しからず。

【馬鹿馬鹿しい追記】

ダーバン CM でのアラン・ドロンの決めゼリフ、"D'urban c'est l'elegance de la moderne hommes." (と言ってるのかな? フランス語は苦手でヒアリングに自信ない)をもじり、「ダーバン、セガレでやんす、どんなもんでぇ」というのを一部で流行らせたのは、私の学生時代の若気の至りである。

 

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2024年4月 1日

最北の甘み ー「知床みかん」プロジェクトが進行中

よく柑橘類の北限は茨城県だと言われるが、これは茨城県より北では柑橘類が育たないということではない。まとまった量の安定的出荷を行って農業として成立させるには、茨城県辺りが北限と長らく言われてきたのである。ところが最近は、東北の宮城県でもみかんが栽培されているという(参照)。

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宮城県だけでなく、雪国と言われる山形県でも試験栽培は進んでいる。注目されているのは、私の生まれた酒田市の試験圃場における取り組みだ。下の動画でその一端を窺うことができる。

さらに出荷を目的とせずに個人的趣味としてささやかにみかんを育てているということなら、それほど珍しいわけでもなく、私の知り合いにも何人かいる。

その気になれば雪国だろうがなんだろうが、みかんは穫れるということのようだ。最近の温暖化も味方しているといわれ、要は「気合い」だが、実際には毎年コンスタントに収穫するのは容易ではないようだ。

ちなみに北海道でもみかんは栽培されている。上手に育てれば、別にビニールハウスで覆わなくてもみかんの実がなるらしい(参照)。そしてなぜか、北海道で収穫されるみかんは、同じ品種でも本州以南で穫れるものより甘いのだそうだ。

我が故郷の酒田辺りでは気温の低さのため甘いみかんの収穫が難しいといわれるが、いっそ北海道ぐらいに寒くなるとそれが逆転してしまうらしい。みかんの木が気温の低さに対抗して「必死に頑張らざるを得ない」と見られ、その結果として糖質が過剰なまでに形成されるということのようなのだ。

先日、仕事でまだ雪の残る釧路に出張した際に、知床半島でみかんの栽培に取り組んでいるチームがあると知った。「日本一甘いみかん」の生産を目指すプロジェクトが進行しているというのである。

この画期的なプロジェクトを主導するのはこの地の農協青年部。北海道大学との連携で、寒さに強く、しかも糖分の生成が旺盛な品種改良を行っている。

現在のところ、これまでになく糖度の高いみかんの生産に成功しているが、安定して一定量の収穫を行うにはまだ多くの課題が残されているという。ただ、これを試食したことのある人たちは、口を揃えて「みかんというより、産高級の桃を食べたみたいだった」と印象を語っていた。

釧路農協ではいずれ「最北の甘み 知床みかん」のブランドで出荷することを目指し、さらなる改良に励んでいるという。次は収穫期に訪れて、ぜひ私も試食させてもらいたい。

【4月 2日 追記】

えぇと、毎度お馴染みのエイプリルフール・ネタで、お粗末様でした。

ただ、コメントにあるように「知床メロン」や「知床マンゴー」が開発中となると、エイプリルフールでは済まなくなってしまいそうで、ちょっと恐ろしくなっております。「夕張メロン」は既にステイタスがあるし。

 

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2024年2月15日

「50歳からの」という通俗マーケティングの怪現象

読売新聞オンラインに ”出版界の怪現象「50歳からの」と題名をうたった本が続々……読書案内や精神論、旅案内も” という記事がある。このタイトル、「〜と題名をうたった本」という言い回しにもちょっと「怪現象」っぽさを感じるよね。

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ただこれ、見出しを付けた編集者の方の言葉センスの問題のようで、本文はオーソドックスにこんな書き出しなので安心した。

題名に「50歳からの」とうたった本を最近、書店でよく見かけるようになった。

「50歳からの〜」というタイトルの本が増えたことの理由はまったく単純な話で、日本の年齢別人口を見ると 50歳前後が最も多いということのようだ。人口が多いなら少しは売れるだろうという、単純マーケティング視点である。

記事に添えられた統計グラフによれば、50〜54歳の人口が 970万人、45〜49歳の人口が 903万人と、明らかに多い。いわゆる「団塊ジュニア」世代だ。

ただ驚いたことに、見たところ私(現在 71歳)の属する 70〜74歳 という年齢層が 45〜49歳に続いて 3番目になっている。詳しい資料(総務省統計局人口推計)を参照してみると 2024年 1月現在、70〜74歳は 867万人で、団塊の世代より多いじゃないか。

いわゆる「団塊の世代」は「第一次ベビーブーム期(1947~49)の生まれだから、昨年 1月時点の資料では 75〜79歳の層なのだが、人口は 755万人となっている。「数の力」を武器としてきた彼らもそろそろあの世に召される時期に差しかかり、減少し始めているようなのだ。

世の通俗マーケッターたちとしては、これまで金科玉条としてきた「団塊の世代」の威力が失われてしまったので、それならばと「団塊ジュニア」に軸足を移したということなのだろう。

ちょっと蛇足だが、こうした企画の一つ、中央公論新社編『50歳からの読書案内』という本の紹介文に "50歳は「人生100年時代」の折り返し地点 " とある(参照)のに驚いてしまった。いつの間にか、人はフツーに 100歳まで生きるってことにされてしまったようなのだね。

しかし 80歳に近付いた「段階の世代」向けに『残された 20年以上の読書案内』なんて本を出しても売れるはずがないから、これもまたお馴染みの「雰囲気のもの」なのだろう。

 

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2023年12月22日

また営業コンサルタントの戯れ言が始まった

PRESIDENT Online に ”メールの書き出しが「会社名+名前」はダメ・・・営業コンサルが勧める「売れる人間がやっている必殺の書き出し」” という記事がある。「必殺の書き出し」ってどんなのかと思い、読んでみると「休みの日でもお客様のことを考えてしまう菊原です」なんだそうだ。

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これには完全にコケてしまったよ。実際にこんな書き出しのメールなんか届いたら、私だったらまず「気持ち悪い奴っちゃなあ!」と思う。下手したらスパム・メールと勘違いして、即刻「迷惑メール」フォルダにぶち込んでしまいかねない。

営業メールの書き出しは、「お世話になっております。△△の〇〇です」といった簡潔な決まり文句で十分以上だ。さらっと読み飛ばしたい書き出しなんかに、あまり余計な意味を込めないでもらいたい。こっちだって忙しいんだから。

申し訳ないが、私は日頃から「営業コンサルタント」という人種はうっとうしい存在と思っていて、このブログでもそのあたりのことを何本か書いている。代表的なのは "喉元過ぎれば「いらしゃいませ、こんにちはぁ〜」を忘れる" (2019年 12月 18日付)という記事だ。

一時、「いらっしゃいませ、こんにちはぁ〜」というけったいな挨拶がコンビニを始めとするサービス業界を席巻していて、客としては気持ち悪くてしょうがなかった。最近はようやくあまり聞かなくなってホッとしているのだが、この妙な挨拶もまた、営業コンサルタントのこねくりあげたもののようだ。

私の「本宅サイト」内にある "「いらしゃいませこんにちはぁ」 の怪 この違和感には根拠がある" という記事に、「接客マニュアルの勘違い」として「コンサルタント会社の言い草」というのをいくつか紹介してある。これがまさに「勘違いオンパレード」で、ちょっと例を挙げるとこんな具合だ。

「いらっしゃいませ」 という挨拶は、最近では形骸化している。一言、「こんにちはー」 などのあいさつを加えることで、“貴方に向かって、あいさつをしています。貴方を出迎えています。” という感覚を与えることができる。

お客としても、「いらっしゃいませ」 だけでは、どう返事をしていいかわからないで、黙っている自分を 「いやだなァ」 と感じたりしている。お客さまだって、何か声を出したいのだ。

「貴方に向かってあいさつをしています」という感覚を与えると言うのだが、店員のほとんどは適当な方向を向いて口だけ動かしていたし、「いらっしゃいませ」にどう返事していいかわからない自分を「いやだなあァ」と感じる客なんて、コンサルタントの勝手な想像の中にしかいない。

というわけで、私は営業コンサルタントという人種の言うことはあまり信じないことにしている。いちいち信じていたら、世の中やたらと面倒なことになってしまいかねない。

とはいえ、最後にコンサルタント諸氏の名誉のために、「コンサルタントはそんなに酷くはないが 」(2007年 8月 2日付)という記事も書いていることを付け加えさせていただく。まあ、記事を読んでいただけばわかるように、上げたり下げたりしてはいるのだが。

 

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2023年8月17日

実際の成果より「忙しそうに見せる」ことが重要な日本

「就活」をしたことがない(参照)私の仕事の出発点は、小さな広告代理店だったのだが、そこで社長に教えられたのは「常に忙しそうにパタパタしていれば、仕事は向こうからやってくる」ということだった。「余裕たっぷり」に見せちゃいけないんだそうで、まあ、一面の真理ではあるのだが。

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こんなような半世紀近く前の処世術が今でも堂々とまかり通っていることを、Gigazine の ”日本は「忙しそうに見せるだけの無駄な仕事」に時間を費やしている国トップ 3に入ることが Slack のレポートで発覚” という記事で知った。日本って、「忙しそうに振る舞うこと」が重要な国のようなのである。

ちなみにこの記事の見出しにある「忙しそうに見せるだけの無駄な仕事」というのは、"make it" というサイトの元記事では次のように書かれている(参照)。

Workers in Asia are spending the most time on “performative work” — in other words, focusing on appearing busy more than doing real, productive work

(アジアの労働者たちは実際的かつ生産的な仕事よりも「パフォーマンス的な仕事」、言い換えれば忙しそうに見えるよう専念することに、多くの時間を費やしている)

元記事の "performative work" というのは Gigazaine では「パフォーマティブな仕事」とそのまま書かれているが、私としては「パフォーマンス的な仕事」とする方が直感的に理解しやすいと思うので、そのように訳させてもらった。

で、その「パフォーマンス的な仕事」というのはどんなものかというと、元記事ではこんなこととされている。

Spending a lot of time in meetings where ‘teams present achievements’ rather than making decisions or addressing issues

(意思決定や問題への対処よりも、「チームの成果発表」の会議などに多くの時間を割くこと)

ただ、この程度ならまだ可愛らしいものだろう。実際場面では、どうでもいい仕事にもっともらしく時間をかけているだけなんてこともよく見られる。効率的にさっさと仕上げるより余計な時間をかける方が、いかにも仕事熱心みたいに見てもらえるというのは、日本のビジネス社会の「病気」だよね。

とまあ、こんなことだから日本という国はやたらと残業が好きな割に、実際の生産性が上がらないわけだ。私だったらダラダラと残業なんかしてるヤツより、定時に帰宅するヤツの方を評価するがなあ。

 

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