軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

拉致被害者救出には『自衛隊』しかない!

六カ国協議が再会されたが,所詮自国の「国益」が最優先であり,他国の「事情」なんぞ気にも留める筈はない.
米国の優先事項は『核拡散防止』であり『アジアの安定』である.ロシアは『お付き合い』程度であろうが、韓国の願いは『半島で戦争が起きない事と,北朝鮮が崩壊して難民が流入しない事』であり、中国は『会議主導者としての面子と,共産主義国家のリーダーとして北を支える(フリをする)事』だが、『六カ国協議を「適度に」長引かせ,米国の関心を中東と半島に向けさせておき,その間にインド洋から南シナ海一帯に手を回すこと』であろう.
北朝鮮の目的は,『核保有』をちらつかせることによって『世界の超大国・米国と対等?な地位にある事をアピールすると共に,気弱な韓国から支援を引き出す事』であろう.
各国とも損得勘定は充分に計算し尽くされている.それに対して我国はどうか!
悲しい事に『核配備は困る。拉致被害者を無視すると国民の反発が怖い。しかし奪還する実力はない.適度に交渉する姿勢を示す以外にはない!』というところであろう.
退官後まもなく,日比谷公会堂で開かれた「第1回拉致被害者全国集会」で,私はパネリストとして壇上に上げられた.『国家国民の生命と財産を守るべき立場にあった』元自衛官の私は,御家族に率直に謝らざるを得なかった.自衛官としての使命を果たせなかったからである.
この会合が起爆剤となって,毎回集会は盛況になり,今や『奪還』は日本国民の最大の要求となった.しかし,政府は動かない.対話と圧力を国民に約束したが,圧力をかけようともしない.私には「かけ方」が分かっていないのではないか?としか思われない.
アサリの輸入阻止は,国民の自主判断であった.それでも同胞の中には,インチキしてまでアサリを輸入しようとした業者があった.万景峰号は都合の良い時に何時でも新潟港に出入り出来る.
魚介類を運んで,自転車や電化製品を持ちかえる北朝鮮の漁船?は,保険に入っているからお咎めなしという.保険会社もインチキ臭いらしいが,誰もそれをとがめない.
これじゃ拉致された国民とその家族は,誰に頼れば良いのか苦しむのは当然であろう.真面目に納税しているのに,納税分の補償が受けられないのでは,民主主義国家の看板が泣こうというものである.
ある講演会で,元大使が「外交は飴と鞭だ」と言ったから,私は「日本外交における飴とは何で,鞭とは何ですか?」と質問したことがあった.元大使は『飴はODA、鞭は日米安全保障条約です』と平然と答えた.私が『自衛隊はどんな位置付けですか?』と聞くと,『自衛隊のことなんか全く考慮していません』と言った.勿論,それが我国の実態である事は自明である.しかし,元自衛官の私にとっては,34年間の航空自衛官としての人生が,無意味?であったように思えて悲しかったが,それよりも『ODAが鞭になること』に思いが至らない彼に失望したのであった.
ODAを引き上げる!という発言は,言う事を聞かない国に対する『鞭』ではないか!.
国連での常任理事国入りを巡る駆け引きでも,恐らくこの手は使わないのではないか?と私は思っている。我国の常任理事国入りに反対するアフリカ諸国などで,我国からODAを貰いながら『裏切る国』や,第一,国連に拠出している20%の金を『常任理事国』のロシアや中国並に減らさせてもらいます!といえば,相当効果的だろうにと思うのだが、我が外務省は言い出せないだろう.何故出来ないのだろうかと不思議に思う.
拉致問題の解決は,今や軍事力行使以外にはない,と思う.北朝鮮の唯一の外交手段は『核保有』という軍事力行使ではないか!.しかもソウルや東京を火の海にする!と息巻いている.
日米安全保障条約が,外交の『鞭』であるならば、米軍の強力なバックアップの元,陸・海・空自衛隊が一致協力して北朝鮮に進撃し,同胞を救出すべきであろう.カンボジアでの道路工事,モザンビークでの医療支援,ペルシャ湾での機雷掃海,インド洋での油売り,そしてサマワでの水道事業,自衛隊は黙々とその任務を果たしており,日米間の強い絆を更に強めているが,本来の仕事は,同胞の生命を守る事にあるのではないか?
9月号の『WILL』に日下公人氏が陸上自衛隊のある幹部の談話として次のように書いている.
『我々自衛隊は,日本国民と日本国土の安全を守るために日々訓練をし,みなそのつもりでいる.しかるに多くの日本人が北朝鮮に拉致され殺害されたりしているのに,なぜ、出動命令が来ないのか.そのためなら,我々は死んでも死に甲斐がある.覚悟はできている.しかし,サマーワで水道工事の真似事をしていて死ぬのは,死んでも死に切れない』
OBの中には,義勇軍を編成して北に乗り込もうか,と真剣に話しかけてきた者もいた.
現役のみならず,我々OBも,いざ鎌倉…の時にはその覚悟はあるが,シビリアンコントロールを標榜する政治家達や,外交に携わる官僚達にその決意ありやなしや!
『所詮は人事』とする態度が見え見えなのは,国民に対する『背信行為』であり看過できない.
『会議場』は,外交官にとっての『戦場』である.外交官の発言は,自衛官の武器使用と同等なのである.会議場でミネラルウォーターを飲むその瞬間でさえも、国民の生命財産を預かって行動しているのだ、という自覚を忘れないで欲しい.




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