本

国歌を作った男 雑感

宮内悠介氏によるジャンル横断の短編小説集。 エッセイ風の小品が所々に挟まりながら、オルタナティブヒストリー物あり、曰く言い難い妙ちくりんな短編あり、お手の物の囲碁物のジュブナイルありとごった煮になっています。 この著者の持ち味をまとめる言葉…

まるで渡り鳥のように 藤井太洋SF短編集 雑感

藤井太洋氏によるSF短編小説集で11編の短編が収録されています。 30Pぐらいの短めの短編ばかりなのですが、テクノロジーそのものと、社会の中でのテクノロジーの位置づけと、テクノロジーを扱うエンジニアの思考と作業の描写が上手いのは当然健在で、その結…

日常やめたらしたいこと 雑感

『ふたりべや』の作者・雪子氏による百合漫画短編集。 私はその『ふたりべや』をこよなく愛する者で、自分の中のオールタイム百合漫画を上げれば必ず入れるだろうぐらいに好んでいます。なのでこの作品が出版されて喜び勇んで読んだわけなのですが、いやはや…

神々の歩法 雑感

ある日突然平凡な農夫は荒ぶる神となり、北京を壊滅させた。アメリカのサイボーグ部隊が神殺しのため急襲するが傷1つ負わせることができない。一人また一人と倒されていくサイボーグたちを少女が青い炎をまとって空から助けにきた―― と始まるSF連作短編小説…

雨夜の月 1-8 雑感

咲希が高校1年目で隣席になった少女・奏音は耳が不自由だった。取り付く島もない態度をとる彼女と仲良くなろうと咲希は積極的に関わっていく―― というくずしろ氏による百合漫画。 この作者は『姫のためなら死ねる』が出版された時から追っているファンなので…

電脳コイル(小説) 1-13 雑感

メガマス社の本社があり電脳化が急速に進んだ大黒市に2人の小学生が転校してくる。ヤサコとイサコ、2人の少女は小学生の間だけ使える携帯PC<メガネ>でのみ観える世界を通して無くしたものを探していく―― この小説はアニメ『電脳コイル』を下敷きとして設定…

シュレディンガーの少女 雑感

ディストピア×ガールを題目に編まれたSF短編小説集。 同じ作者の短編集「あがり」は研究を取り上げたSF小説集でありかなり好きな作品(特に『へむ』が絶品!)だったのですが、本作もまた質の高い作品が揃っていました。 65歳で必ず死ぬ。 肥満者は虐げられ…

週に一度クラスメイトを買う話 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~ 5 雑感

女子高生のソフトSM的でじれじれ面倒くさい百合小説も5作目となり大学同棲編へ突入。 同棲までし出したのに、宮城が人になつかない猫のようで面倒くさいのは相変わらずというか環境が変わって慣れないためかより悪化して始まります。話してくれないので同棲…

マン・カインド 雑感

公正戦という対称戦争が広がった近未来、152戦無敗の戦争コンサルタントであるイグナシオ<少佐>はコロンビアから独立宣言した都市の防衛戦で突如捕虜を虐殺する。目の当たりしたジャーナリストが上げたレポートは事実確認スコアが低く配信が拒否される。そ…

黒牢城 雑感

天正六年、荒木村重は織田軍に囲まれて有岡城にて立て籠もっていた。その冬に敵に寝返った武将の息子が雪の密室で殺される事件が起きる。裏切者の子供でも殺さないと決めた夜に誰が、どうやって。謎解きに窮した村重は牢に捕えていた織田方の使者・黒田官兵…

一億年のテレスコープ 雑感

望と名付けられた少年はその名のごとく”とおくをみる”ことにはまり、天体観測に造詣を深めていく。やがては星を股にかけた観測方法を提案し、仲間と共に宇宙へと飛び出していく。それは思いもかけない壮大な旅となった―― と始まるSF小説。 地球の地べたで遠…

迷宮の王 1-3 雑感

サザードン迷宮の10階のボス部屋にユニークなミノタウロスが出現した。敵に飢えるミノタウロスは本来出られない筈のボス部屋から足を踏み出し、冒険者とモンスターを屠り最下層に辿り着いて迷宮に君臨する。かの迷宮の王を打倒するのはだれか―― というファン…

月刊少女野崎くん 16 雑感

このブログの雑文では折に触れて書いていますが、大好きになったシリーズの最新刊が面白いほど幸せなことはそうありません。 既出の要素を絡ませて新しいハーモニーを奏でるも良し、新しいキャラを足して未知の領域に踏み出すも良し、あるいは偉大なるマンネ…

伝説とカフェラテ 傭兵、珈琲店を開く 雑感

女オークのヴィヴィは傭兵をリタイアして珈琲喫茶を開かんとす―― というファンタジー小説。 血生臭い剣と魔法の冒険から退いて、街に土地を買って自らの家とし、腕っぷしではどうにもならない喫茶店稼業を営む日常を書いているのですが、これがまた実に面白…

好きな子がめがねを忘れた 12 雑感

好きな子が眼鏡を忘れて、手伝って、好きな人同士になって、付き合うようになったこれまで。 そして12巻において中学生活最後の3か月を思いっっっきりイチャイチャしながら駆け抜けます。 (kindle No.16) もうこんなんを序の口に初詣から、高校受験前に募…

Fate/Grand Order-Epic of Remnant-亜種特異点3/亜種並行世界 屍山血河舞台 下総国 英霊剣豪七番勝負 5 雑感

Samurai Remnantなどあって3年ぐらい空いた新刊になります。 英霊剣豪七番勝負の対衆合地獄・黒縄地獄戦の前半が描かれるのですが、なんかもう凄いの一言。 情け容赦なく化け物じみた質と量で殴りつけてくる地獄たちによる地獄絵図と、それに抗う立香と武蔵…

RE:異世界から帰ったら江戸なのである─女天狗昔物語─ 4 雑感

現代日本に生きていた青年・九郎は異世界転移し数十年過ごし、魔女によって若返って女体化して江戸時代に帰ってきた。身寄りのない彼は女天狗・九子として蕎麦屋の上に居候することになる―― 8代将軍吉宗の江戸時代でTS女天狗として過ごす日常を書いた小説の…

妖怪ハンター 1-3 雑感

異端の考古学者・稗田礼二郎が研究のため訪れた場所で怪異と出会うのを描いたオカルト伝奇漫画。 名作と名高いのは知っていましたが、これまで触れる機会がなく今回初めて読みました。 や、噂に違わず非常に面白かったですね。 文句なしにフィールドワーク系…

その着せ替え人形は恋をする 13 雑感

ギャルなモデルのJKでコスプレ好きの海夢が、雛人形の頭師を目指している手先が器用な五条くんにコスチュームを作ってもらい化粧も施され見事なコスプレを披露する――と続いてきた本シリーズ。 彼らの関係は比翼のもの。海夢の素材と心意気――顔と体型と振る舞…

タワーダンジョン 1&2 雑感

死霊術士により王が殺され王女が攫われた。彼の者が召喚した竜の塔へと王女を救うため挑め―― 弐瓶勉氏による新シリーズ。 これまでSF系の作品を描いてこられましたが、本作ではファンタジー色が強くなっています。作品を重ねるにつれて次第に線が柔らかくな…

ほうかごがかり 3 雑感

『ほうかごがかり』に指名された小学生は毎週金曜日の夜、闇に包まれた小学校で「無名不思議」の世話をしなければならない。これまで集められた『ほうかごがかり』の小学生たちは一人、また一人と死んでいった。残る子たちは無事生きて「卒業」できるだろう…

あかねさす柘榴の都 3 雑感

母を亡くし叔母に引き取られてグラナダで住むことになった少年・夏樹の生活を描いた漫画の最終巻。 最初は異国にも共同アパートにも叔母にも慣れなかったのですが、ゆっくりと親しんでいって、彼の居場所になってきています。 (kindle No.13) 自転車を手に…

週に一度クラスメイトを買う話 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~ 1-4 雑感

週に一度5000円で言うことをきかせるという奇妙な主従の2人の少女、宮城と仙台。徐々にエスカレートする命令と、変わっていく関係性。彼女たちは互いをどう想うようになるのか――。 という百合ライトノベルシリーズ。 自分の中で少し評価が難しい本となってい…

【推しの子】 14 雑感

アイの人生を撮る伝記映画『15年の嘘』の撮影が進む―― これまでも十分に面白かったのですが、最終章にして【推しの子】が再度盛り上がってきたと感じています。 本当の姿を誰にも見せなかったかアイの真の姿を捕まえるために、アイの人生を書くアクアが悩み…

ねこようかい 1-9 雑感

ねこのようなようかいのような"ねこようかい"との暮らしを描いた4コマ漫画。 9巻まで重ねて今更知ったのですが、ねこようかいの可愛さにめろめろになり、大ファンとなりました。 もうね、ほんとうにキュートなんですよ! まず"のっぺらぼう"のねこようかい。…

帝国という名の記憶 上・下 雑感

ルスエル・ステーションの大使がテイクスカラアン帝国の首都に新たに召集された。前任者とは音信不通であり、なぜ新たに呼ばれたのか情報がなかった。新大使のマヒ―トはルスエル・ステーション固有のテクノロジーである神経インプラント<イマゴマシン>内の…

Fate/Apocrypha 1-5 雑感

魔術協会からの独立を目論むユグドレミア家と阻もうとする魔術協会の思惑が対立し、大聖杯のサーヴァントが7騎ずつが揃う黒と赤の陣営に判れて聖杯大戦が繰り広げられることとあいなった。生き残るのはだれで、大聖杯の奇跡を己のものとするか―― というFate…

ほうかごがかり2 雑感

『ほうかごがかり』に指名された小学生は毎週金曜日の夜、闇に包まれた小学校で「無名不思議」の世話をしなければならない。お世話に失敗すれば―― メルヘン作家を自称する甲田学人氏によるホラー小説の新シリーズ2作目。 「無名不思議」を名付け、怪異として…

裏バイト:逃亡禁止 1-11 雑感

報酬は高額ではあるけれども失踪しても死んでも不問にされる異常な案件である裏バイト。訳アリの女性2人・黒嶺ユメと白浜和美は裏バイトで稼ぎながら、恐ろしいものたちに遭っていく―― というホラー漫画。 基本的にホラーは苦手なのですが、面白いという感想…

バーナード嬢曰く。7 雑感

良質な本読みネタと良質な百合を提供してきてくれている本シリーズ。 最新作の7巻では表紙からして渾身のストレートをど真ん中に投げ込んできやがりました。 それはさておき、まずは読書ネタから。 読書ノートに悩む話でどんな本を選びどんなコメントを残す…