ジェイルブレイク　感想

　俺版ゼロ年代抜きゲー１０選 で挙げられていた為購入しプレイしたのですが、いやあ酷かった。本当に凶悪で、醜悪で、極悪で――実に素晴らしかったです。

　ストーリーは公式のページにあるように、性衝動を吐き出すために作られたサークルによって多くの女性が２階建ての家屋に誘拐監禁されて日々犯されるという、比較的オーソドックスなものになっています。
　舞台となる家屋は１階がバイクショップ、２階が住居になっていて、それなりに改造はされているのですが、基本的には一般の物と変わりありません。畳敷きの部屋、洋風の部屋、風呂、キッチン、洗面所、廊下、はたまたバイクのガレージなどがそのまま出てきます。生活臭が漂うと言い換えても良いかもしれません。
　主人公は女学院生の片桐零で、地の文はほぼ一人称視点で述懐されます。女性視点ということになるのですがなかなかに上手かったですし、それにキャラ造形も良かったです。零は意志が強く、計算高く、冷静で、突如巻き込まれた暴力・性暴力から何とか元いた日常へ生還する為に最善を尽くそうとします。女学院暮らしから隔絶したおぞましい性暴力の暴風に晒されながら、飽きられて捨てられないように演技をして媚を売り、同時に同じように監禁されている他の女性とコミュニケーションを取り、男たちとの会話から乏しい情報を集めて状況を把握し、瞬間瞬間の行動の判断を明確にします。全てを地獄のような空間からジュエルブレイク＝脱獄するために費やします。“抑圧に屈しないADV”というジャンル名は若干垢抜けないですが、まさに内容を表すものになっています。

　監禁生活では家屋の説明でも言ったように日常生活と性行動との場所が区分されていないのですが、性行動と日常生活とが地続きの毎日をきちんと描写しているため妙な生活感が滲み出ています。生理時を確認するために血の着いた生理用具を見られたり、性処理された後にもお腹は空くと性欲と食欲を比べたり、歯磨した後に性欲処理をされて曰く、

（歯を磨いてスッキリした気分で寝るつもりだったのに……
　アイツらをスッキリさせたって何にもならないじゃないっ……！）

　と思ってみたりしますし、他の女性でも性処理されている時に体臭を指摘されて気にします。それに女性たちは着たきりすずめであり、着ている服は徐々にボロくなるのですが、立ち絵でも一枚絵でもぼろくなりようが表現されますし、その衣服の変遷はプレイにも組み込まれています。
　全てを引っくるめて、そこには生活臭に満ちた凌辱空間という異様な有様が出現していました。

　エロシーンは犯されてる側の心理描写に重きを置かれています。大体が嫌がりながら無理矢理やられる様子を描いていて、最後の方まで肉体的にも精神的にも嫌がる感じが強いのが特徴です。嫌がり、落ちないからこそプレイもエスカレートするのですが、行為自体よりもやはり反応にエロさがありました。入ってくる／出ていく感触や擦り切れる精神は女性一人称だからこそ豊かに伝わってきました。
　また同じような状況に置かれながら複数を相手にする女性と、一人に定められた女性と立場が異なるようになりすれ違いが生まれ、それぞれのエロシーンを見せられる時の反応で例えば“ざまあみろ”という密やかな喜びがこみ上げるなど、薄暗い中で育つ人間模様の機微が書かれます。
　同時に即物的なエロも嫌というほどあります。具体的には、壊れた後です。連れられてきた女性は変容し諦観し受容し、恒常的な嫌悪を示す訳ではありません。しかし壊れてしまったヒロインは最早変化の余地など無く、常に同じ答えを出します。――それが問答と性描写を通して顕になる、おぞましさといったらもう。

　なお壊れた後を更に捻るエンドとか、生還エンドを捻るとか心底意地の悪いエンドがそれなりにあるのですが、そうした時にまき散らされる呪詛は必見です。

　
　そんなこんなで本作のシナリオは今まで述べてきたように女性に沿ったように見せかける女性一人称の心情描写が上手かったのですが、担当したシナリオライタの言語センスも印象的でした。初っ端のDreamでエクスキューズの嵐で度胆を抜き、以降、男性器をタラコに例えて延々と描写してみたり、「夜空に向かって、連呼ぉっ！ 連呼ぉっ！」という台詞が飛び出してみたり（どのシーンかは詳しくは言えませんが）、びっくり箱のような表現が至る所から出てきます。個人的に一番秀逸に感じたのはお尻を何回も使われて疲弊して出た一言です。

　（おっ、おっ、お尻がっ……ゴムパッキンっ……！！）

　意味がわかりませんが、シナリオライタの才能はわかりました。

　メインの絵は普通でした。どちらかと言えば、さだお絵の方が好みです。

　システムに関して。MCSSはこれまた変でした。立ち絵の輪郭をオーラのように薄らぼんやりとした光が覆っていて、選択肢によって色が変わり、展開も変わっていくという代物で、公式で紹介されていて推されているのですが、そのように現す意義が最後まで判りませんでした。

　以上。面白かったです――と表明すると差し障りがありそうなほど色々と最悪なのですが、好きな人には堪らないでしょう。個人的にはイチオシです。
　最後になりましたが、俺版ゼロ年代抜きゲー１０選 を書いた方、ありがとうございます。

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ジェイルブレイク

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