日常やめたらしたいこと 雑感

 『ふたりべや』の作者・雪子氏による百合漫画短編集。
 私はその『ふたりべや』をこよなく愛する者で、自分の中のオールタイム百合漫画を上げれば必ず入れるだろうぐらいに好んでいます。なのでこの作品が出版されて喜び勇んで読んだわけなのですが、いやはや・・・・(絶句 
 いやはや・・・
 
 や、収録されている短編どれも良いんですよ。
 後書きで非日常百合がテーマと描かれている通り、アイドルやらインフルエンサーやら吸血鬼やらを扱ってにやにや出来る珠玉の内容ばかりで期待に応えてくれる出来栄えでした。
 それはそれで素晴らしいのですが、個人的に撃ち抜かれたのはひとえに同人誌から再録された『ふたりべや』の短編になります。
 ふたりの青春を顧みる『青空に白リボン1』は大学と就職を経た後に読むからこそ懐かしさに震えましたし、『青空に白リボン2』の芹とショーコの会話劇も良きものでした。
 ただ出色なのは『あした目が醒めたら』。1歳からのことを全て憶えているという驚異的な記憶力を持つ桜子が記憶を失えるか試すためにと飲み会を開いて酔ぱっぱる短編。

 (kindle No.142)

 『ふたりべや』でこれまで描かれた全ては桜子の中に記憶としてあり、そして語られえなかったこともまた彼女は覚えています。それは忘れっぽくていい加減だけど桜子についてだけはついぞ飽きなかったかすみもまたきっと彼女たちに起こったことは鮮烈に残っているのでしょう。
 本作で語られえなかったこと――飲み会で交わされる下世話な会話で”それ”が示唆される或る一コマがですがね、はちゃめちゃにちょう最高なんですよ。
 この一コマによって昇天しても良い、ぐらいには心を打ち抜かれました。


 以上。素晴らしい短編集でした。おそらくあの一コマは一生レベルで覚えていることでしょう。大好き。

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