ボヘミアの海岸線

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詩集

『わたしの日付変更線』ジェフリー・アングルス|言語の境界に立つ

書き終えた行の安全圏から 何もない空白へ飛び立つ改行 −−ジェフリー・アングルス『わたしの日付変更線』「リターンの用法」 ジェフリー・アングルスは、英語を母国語として、日本語で詩を書く詩人だ。 ふたつの国、ふたつの言語の境界に立つ詩人の言葉は、…

『ウンガレッティ全詩集』ジュゼッペ・ウンガレッティ|呆然とした空白の漂流

路上の/ どこにも/ 家を/ ぼくは/ もてない 新しい/ 風土に/ 出会う/ たびに/ かつて/ 慣れ親しんだ/ おのれを見つけては/ ぼくは/ やつれてしまう そのたびに見を引き離してゆく/ 行きずりの者として 生まれながらに/ あまりにも生きてしまった/ 時代からの…

『イタリアの詩人たち』須賀敦子|心に根を張った5人の詩人たち

おおよそ死ほど、イタリアの芸術で重要な位置を占めるテーマは他にないだろう。この土地において、死は、単なる観念的な生の終点でもなければ、やせ細った性の貧弱などではさらにない。生の歓喜に満ち溢れればあふれるほど、イタリア人は、自分たちの足につ…

『ヴェネチア風物誌』アンリ・ドレニエ|妖術と魔術と幻覚の土地

まったく、ここは奇異なる美しさの漂う不思議な土地ではないか? その名を耳にしただけで、心には逸楽と憂愁の思いが湧き起こる。口にしたまえ、<ヴェネチア>と、そうすれば、月夜の静寂さのなかで砕け散るガラスのようなものと音を聞く思いがしよう……<ヴ…

『淡い焔』ウラジミール・ナボコフ|ボリウッド+サイコホラーめいた文学解説

私としても、明快たるべき文献研究資料をねじ曲げ変形させて、怪物じみた小説もどきを拵えるつもりは毛頭ない。 ――ウラジミール・ナボコフ『淡い焔』 『Pale Fire(淡い焔)』という厳かな題名、「詩に注釈をつける男の物語」という生真面目なあらすじからは…

『ウンベルト・サバ詩集』ウンベルト・サバ|坂の上のパイプ

このことを措いてほかには なにひとつ愛せず、わたしには なにひとつできない。 痛みに満ちた人生で、 これだけが逃げ道だ。――ウンベルト・サバ「詩人 カンツォネッタ」 坂の上のパイプ 数年ぶりにもういちどサバの詩集を読みかえしたとき、ふせんをつけたペ…

『ジプシー歌集』フェデリコ・ガルシア・ロルカ

緑色わたしの好きな緑色。 ジプシーの月の下で 物みな娘を見つめているが、 娘にはそれらを見ることができない。 ――フェデリコ・ガルシア・ロルカ「夢遊病者のロマンセ」 緑の風よ ここ数日、強い風が桜の花びらをまきあげながら坂をかけおりるのを眺めてい…

『終わりと始まり』ヴィスワヴァ・シンボルスカ

[語られなかった戦争] Wislawa Szymborska Koniec i Poczatek,1993.終わりと始まり作者:ヴィスワヴァ・シンボルスカ出版社/メーカー: 未知谷発売日: 1997/06/01メディア: 単行本 終わりと始まり 戦争が終わるたびに 誰かが後片付けをしなければならない。 …

『不穏の書、断章』フェルナンド・ペソア

[自己という迷宮] Fernando Antonio Nogueira de Seabra Pessoa Bivro do desassossego.不穏の書、断章作者:フェルナンド ペソア出版社/メーカー: 思潮社発売日: 2000/10メディア: 単行本新編 不穏の書、断章 (平凡社ライブラリー)作者:フェルナンド・ペソ…

『井伏鱒二全詩集』井伏鱒二

[サヨナラダケガ]井伏鱒二全詩集 (岩波文庫)作者:井伏 鱒二出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2004/07/16メディア: 文庫 井伏鱒二の『厄除け詩集』は、学生にとって災厄である。井伏の言葉は、ぐるぐるする心を鮮やかに刺してくる。太宰、ドストエフスキーあ…

『迷い鳥』ロビンドロナト・タゴール

[静寂の言葉] Rabindranath Tagore রবীন্দ্রনাথ ঠাকুর Stray Birds,1916.迷い鳥作者:ロビンドロナト・タゴール出版社/メーカー: 風媒社発売日: 2009/07/07メディア: 単行本 アジア圏で、詩人は非常に尊敬される。少ない言葉で多くのことを語るから。 20世紀…

『海潮音』上田敏

[謡う日本語]海潮音―上田敏訳詩集 (新潮文庫)作者:出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1952/12/02メディア: 文庫 上田敏が1905年に出版した訳詩集。明治時代の訳者は、日本の詩歌を踏襲した訳文を書いた。海外の作品でありながら、れっきとした日本の作品でも…

『アラブ飲酒詩選』アブー・ヌワース

[飲めや詠えや] Abu Nuwas ابونواس‎ , 750–810.アラブ飲酒詩選 (岩波文庫)作者:アブー ヌワース出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1988/01/18メディア: 文庫 フランス語が愛を歌う言語なら、アラビア語は詩を歌う言語であるらしい。どこかで読んだ覚えのあ…

『巴里の憂鬱』ボードレール

[雲を愛す] Charles Pierre Baudelaire Le spleen de Paris ,1869.巴里の憂鬱 (新潮文庫)作者:ボードレール出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1951/03/19メディア: 文庫 19世紀フランス詩人による、散文詩。アンニュイという言葉が似合うボードレールの詩と…

『オクタビオ・パス詩集』オクタビオ・パス

[描かれる時間] Octavio Pas Poética ,1935-1987.オクタビオ・パス詩集 (世界現代詩文庫)作者:オクタビオ パス出版社/メーカー: 土曜美術社出版販売発売日: 1997/01メディア: 単行本 あれこれの小説や論文を書くのは、ある種の職業です。詩は職業ではなく…

『ポー詩集』エドガー・アラン・ポー

[もう二度と] Edgar Allan Poe COLLECTED WORKS OF EDGAR ALLAN POE .ポー詩集―対訳 (岩波文庫―アメリカ詩人選)作者:エドガー・アラン・ポー出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1997/01/17メディア: 文庫ポー詩集 (新潮文庫)作者:エドガー・アラン ポー出版…

『ルバイヤート』オマル・ハイヤーム

[君もまた土に還り] UmarKhayyam عمر خیام RUBAIYAT رباعیات.ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)作者:オマル・ハイヤーム出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1979/09/17メディア: 文庫 11世紀のペルシャ詩人による四行詩。「ルバイヤート」とは、そのまま四行…