2013年 10月 13日
Live Finder−−生きているファインダー
これらを腹の底で嗤いつつ、「予告編」では落伍者たちが最早必要としなくなった巻戻しクランクと光学ファインダーに機能と機構の粋をご覧いただきました。
無論そもそもが違うから、フィルムの巻上げ巻戻しなどデジタルカメラには無縁だし、EVFだって撮像素子が得た情報をモニタリングしているだけに過ぎません。
だけど...仮令パララックスがあって必ずしも見易いとはいえないレンジファインダー機でも、単に「結果を見せる」だけではない「今を見よう」とする意志の結実のようなモノが一撮影者たる私にも伝わってきます。
少なくとも私にとって、ファインダーを通して見ようとすることは、自身が「結果」以上に重きを置く「行為」の最も大切な要素の一つなのですから。
しかし、陰で嗤うだけに済ませずに敢えて引き合いに出したのは、一つの関連を感じずにはいられなかったためです。
前回の予告編に登場した4台のレンズシャッター式レンジファインダー機の中で、とりわけ「ある意味で<Leica III>のファインダーを超えた」といわれた一台をこの世に産み出したのが現・SONYのカメラ部門のルーツの一つだからです(これも今となっては落伍者同士だったといえそうですが、KONICAとMINOLTAが合併して10年経ったのですね)。
表題でもうお分りの方も少なくないでしょうが、今回はそんな伝説のカメラ<Konica IIIA>をご覧いただくことにいたします。
初めてこのカメラのファインダーを覗いた私はしばし唖然とするほかありませんでした。
まず、明るく高倍率なファインダー像は未知の世界という他ないもので、徐にレンズのヘリコイドを繰り出すと、パララックス補正のためにフレームは応じて右下側にスライド...否、スライドしているのではなくフレームの大きさが変化しているではないですか!
つまり、仮令単焦点レンズでも近接撮影になるほど画角は狭く変化することを、このファインダーは体現してくれていることになります。
写る範囲だけの視野しか提供してくれない一眼レフに対して、レンジファインダーは実際に写る範囲以上の余白があるから、ライブ感はより以上といえるでしょうか。
かくして、その当時「生きているファインダー」と謳われたのが少しもオーバーではなく、これぞほんとうの「Live View」なんだと思い知りました。
もちろん、パララックス補正ならちょっとコマシなレンジファインダー機には標準装備といっていいものであり、予告編で取り上げた他の3機種もそれぞれに工夫が凝らされています。
しかし、<Konica IIIA>のファインダー体験は、そのいずれもが未熟に感じられるほどに別格の感動をもたらしたのでした。
レンズ基部のこのレバーを押し下げる(2回)とフィルム巻上げ、シャッターチャージが完了します。
巻戻しクランクの形状、そして収まりがなんともメカっぽくていいです。
一眼レフが当り前の時代にカメラを始めた私にとって「撮る範囲がファインダーで把握できる」は、まるで空気のようなものだったといえるでしょう。
即ち当然の必須だったから、そうでないモノには見向きもしないばかりかむしろ軽んじていたというのが正直なところ。
「一眼レフに負けたくせに何を未だにLeicaじゃい...」と本気で思っておったわけです。
まぁ、「若気の至り」で済ませてしまえることかも知れませんが、自身が単に潮流に乗っていただけだという事実は恥ずべきことでしょう。
ただ与えられた「結果により近い視野」に安穏としていただけで「今を得よう」と自ら苦労することなどなかったのですから。
確かに、一眼レフの台頭は、Konica渾身の<Konica IIIA>もマイナーで忘れ去られた存在へと追いやってしまいました。
でも、一大ブームを起した二眼レフがたった5年で廃れたからといってその構造が悪かったわけではないし、一眼レフが絶対的存在だというわけでもないはずです。
カメラの機構であれ、撮像素子の大きさであれ、モノや手段は多種多様であるほど、ほんとうは豊かなのだと今なら私にも分る気がします。
だからこそ、快感を覚えるほどの<Konica IIIA>のファインダーを前にして「一つの完成品だ」としながらも「この他は使う気にもならない」としてしまう私ももうおりません。
最後に、素晴らしいファインダーや変ったフィルム巻上げ&シャッターチャージ機構、Hexanonレンズの性能だけに止まらないこのカメラの魅力を...それはカッチリとした拵えと仕上げの良さです。
特にクロームメッキの質の良さは瞠目すべきもので、50余年を経た今も、他機種ではごく普通の点状に剥げたような個体を見つけるのが逆に難しいくらい。
『Nカメラ店』のご主人曰く、「昔のカメラを愉しむ人なら一台は持っておくべきカメラ」との言葉もここいらを含めてのことかと感じ入るところであります。
質感も高級感たっぷりです。
自分も一眼のファインダーこそ完全体で絶対的なものであり
「レンジファインダーなんて」と思い込んでいました。
まさに"「結果により近い視野」に安穏"としていたんですが
いざライカに触れて”「今を得よう」と自ら苦労する”ことの難しさと同時に、
撮る行為の面白さが甦ってきたことを感じています^^
どうもシャッターの機構はレンズ側の様子ですね。
つまり、カメラ側はファインダー機構が充実できたという事だったのでしょうか。
それにしても、本体にたいして大きな窓、まさに迫力たっぷりですね。光学距離計というのでしょうか、比類のないアンバランス感が、一目ぼれの要因のような気がします。
アンバランスといえば、カメラに対して大きめのレンズを付けた時のOMも然り。
フィルム関連での方がイメージの強いKonicaですが、実はとても優れたカメラメーカーでもあることをまじまじと感じさせられる、そんなカメラです。
ファインダーを覗くだけで愉しい...久しぶりにこんな想いに浸りました。
harureiさんも是非1台...
カメラとしての美しさはレンジファインダーにより多くあるようにも思うこの頃。
いや、ほんとうにみんな魅力的なのです。
「困ったことになる」って仰るけど、「既に死んでいる」状態なのでは?
愉しみにしておりますよ。
手にするとずっしりした重みを感じます。
手に伝わるのはOMやPENのようなバランスのいい感じではないのですが、その分、実感するのはガラスの重み。
それはまさしくファインダーを覗いた驚きと繋がる感覚です。