スー・チー氏の独裁宣言と見られる記事について

最初に読んだとき「うわっ」と思ったけどいろいろ合わせるとしょうがないのではないかという感想に。

【ヤンゴン共同】ミャンマーの次期政権を主導する見通しとなった野党、国民民主連盟(NLD)の党首アウン・サン・スー・チー氏(70)は10日、外国メディアとのインタビューで、次期大統領は何の権限もないと明言。自身の大統領就任を禁じた憲法規定に合わせるために任命されるにすぎないとして「私が全てを決定する」と強調した。

国家元首の大統領ではなく、自身への権力集中にこだわる姿勢は、「権威主義」や「違憲」との批判を招く恐れもある。

選挙管理委員会は11日、下院選に立候補していたスー・チー氏の当選を発表した。
(共同通信:スー・チー氏「私が全て決定」 新大統領に「権限なし」)

何で大統領就任がダメなのかというと以下の規程があるため。

まず、現憲法下ではスー・チー氏が大統領になる資格が認められていない。外国籍の配偶者か子どもを持つ人物には資格が認められておらず、英国籍の息子を持つスー・チー氏は大統領になれないのだ。

それでは改憲すればよいかといえば、これもそう簡単ではない。ミャンマーでは、憲法の改正には議会の75%以上の賛成が必要となる。今回の選挙でNLDが獲得した議席数が過半数は越えたとしても、ミャンマーの議会には軍部出身者が議席の4分の1、25%を占める決まりがある。事実上、新政権による改憲は不可能だ。
(スー・チー氏勝利、それでも続く「茨の道」より)

その軍部出身者が議席の4分の1を占める決まりというのも憲法らしい。

政権を担う事になるスーチーさんは、これからが勝負です。

次に目標とすべきは、大統領の資格要件の変更などもありますが、やはり一番は議席の25%を国軍司令官による指名枠としている憲法条項の改正です。
(スーチーさんの勝利宣言の影により)

実際、この4分の1の軍関係者によって憲法改正が阻止されたらしい。

08年に軍政下で作られた現憲法は、外国籍の家族をもつ者は大統領の資格がないと規定している。死別した夫が英国人で、子供も英国籍のスー・チー氏の大統領就任を阻むのが狙いだとみられている。

こうした憲法の改正の必要性を国際世論に訴えて圧力をかけるスー・チー氏に対し、テイン・セイン政権は譲歩し議会に委員会を設置することを認めた。議会側が意見を募集したところ、大統領資格について約6千件の意見が寄せられ、その9割以上が改正を求めるものだったという。

議会は今月3日、改憲について議論するため、計31人の新委員会を発足。その内訳は、軍人枠選出の議員が7人、現政権与党で軍人の受け皿政党となっている連邦団結発展党(USDP)が14人、NLDが2人、少数民族系政党などが8人となっている。

さらに上下両院の議席の25%が軍人枠で、改憲には議会の75%以上の承認が必要。「数だけ見ればすぐに改憲するのは困難」(ニャン・ウィン報道官)な状況にある。
(産経新聞:スー・チー氏、大統領へ最後のチャンス ミャンマー、憲法改正を議論(2014年2月)より)

ミャンマー国会は25日、与党が提出した憲法改正案の大部分を反対多数で否決した。これにより、最大野党、国民民主連盟(NLD)党首のアウン・サン・スー・チー氏の大統領就任を阻む現憲法がそのまま維持される。また、改憲案に盛り込まれた、憲法改正に必要な議員数の引き下げも実現しなかったことで、今秋予定される総選挙でNLDが大勝したとしても、スー・チー氏が大統領に就任するのは極めて困難になった。

軍系の与党、連邦団結発展党(USDP)の改憲案は、スー・チー氏のように外国籍の子供がいる人物の大統領就任を禁じる条項が引き続き含まれていた。一方で、憲法改正に必要な賛成議員の数を現行の「定数の75%超」から「70%以上」に引き下げる項目が盛り込まれた。このため定数の4分の1が割り当てられている軍人議員から、NLDが政権を握った場合、改憲を阻止できなくなるとして反対が表明されていた。
(=産経新聞:ミャンマー国会が憲法改正案を否決 「スー・チー大統領」極めて困難に(2015年6月より)

上記の状況での大統領候補であった与党の党首が8月に解任されたとのこと。

竹内
「ただ今回、スー・チー氏が選挙に勝利しても、外国籍の子どもを持つスー・チー氏は、大統領にはなれないというわけなんですよね。」

飯島記者
「そこが複雑なところです。
スー・チー氏は、自らが大統領にはなれないことを見越したうえで、いわばプランBとしてシュエ・マン氏を大統領にするという選択肢も視野に入れていたと見られています。
一方の与党側のシュエ・マン氏も、圧倒的人気をほこるスー・チー氏が率いる野党NLDに、選挙で勝つのは難しいということを承知のうえで、スー・チー氏との連携というプランBを探っていたわけです。
ところが、シュエ・マン氏が党首から追い落とされることによって、与野党にとっての選挙後のプランBが今回消えてしまった格好です。」

(NHK:ミャンマー与党の乱より)

追記:大統領と副大統領の決め方について

この制度はひどい。少なくとも1人は軍の代表が副大統領になるという制度。

大統領選出の制度については、立法府の総選挙後(2016年3月ころ決選投票を実施予定)、いわゆる下院である「国民代表院」と、上院である「民族代表院」、および、それぞれの議院に帰属する軍人議員の3主体(3母体)から、それぞれ大統領候補者を選出します。つまり、下院からの大統領候補者1名、上院からの大統領候補者1名、両議院にまたがる軍人議員の中からの大統領候補者1名の、合計3名の大統領候補者を選出します。その上で、下院(国民代表院)と上院(民族代表院)を合わせたミャンマー連邦議会において、大統領の選出投票を行います。この投票において、最多得票者1名が大統領(国家元首)に選出されることになります。最多得票を得ることが出来なかった他の大統領候補者2名は、自動的に副大統領に選出されます。

(弁護士法人アジア総合法律事務所:ミャンマーにおける大統領選出制度より)

ちなみに産経新聞の記事だと計9名の候補者を出すように読める

ャンマーの国会は、来年1月末に発足する新議会で、下院の民選議員、上院の民選議員、両院でともに25%の議席を握る軍人議員がそれぞれ、計3人の大統領候補を指名。上下両院の全議員の投票で大統領を選出し、落選した2候補は自動的に副大統領となる。
(産経新聞:でも大統領になれないスー・チー氏「私がすべてを決定する」 野党NLD総選挙で過半数確保より)