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かつて伝説のUMAとして恐れられたタコ類最大種「ミズダコ」が保護対象になるまでの歴史

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 タコ類最大種として知られるミズダコ(別名オオダコ)は、最大で体長9.1m、体重270kgにも達する。それゆえ20世紀始めまで、海に潜む巨大なUMA、あるいは人食いタコとして恐れられていた。

 1940年11月、アメリカ、ワシントン州北西部のタコマを襲ったとんでもない突風が巨大なタコマ・ナローズ橋を捻じ曲げ、橋全体を崩落させた。

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 この時、不気味な噂がささやかれるようになった。橋が壊れたのは橋の下にひそんでいる体重270kgもの巨大な人食いタコのせいだというのだ。

 かつてはその異様な大きさから、北欧の伝説のクラーケンを彷彿とさせる存在として人々に恐れられたミズダコは現在保護対象となっている。今回はその歴史を紐解いてみよう。

かつて巨大な人食いタコとして恐れられたミズダコ

 タコマ・ナローズ橋の鉄骨を捻じ曲げ、橋を崩落させたのは全て自然の脅威によるものだ。だが一部の人々は、巨大な人食いタコの都市伝説を信じていた。

 彼らの言う人食いタコとは、北太平洋でごく普通に目撃されるミズダコだ。それでも彼らがタコ類最大種であることは確かだ。

 記録に残されているだけでも、体長9m、体重270kgの個体が報告されている。

 情報がきちんと確認されて伝わらなかった時代、化け物だと噂されたのもしかたのないことなのかもしれない。

 誤解されまくったこの伝説のUMA(未確認生物)は、現在では保護の対象になっている。

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photo by iStock

世界中にある巨大タコ、巨大イカ伝説

 スカンジナビア地方にもクラーケンという巨大生物伝説がある。古ノルド語でクラークとは、ねじれ、渦を巻くようなものを表す言葉だ。

 ここからヴァイキングがノルウェーとアイスランド間の海域で遭遇したという巨大イカ「クラーケン」に発展した。

 こうした伝承から、1801年のピエール・ドゥニ・モンフロントの著作『軟体動物の歴史』の中で描かれたような巨大なクラーケンが船に巻きついて沈めようとしている象徴的な描写が生まれた。

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伝説の巨大イカ、クラーケン R・ハミルトン著、文庫本『水陸両生食肉目』(1839年)より / image credit:public domain/wikimedia

 独自のタコ神話で知られるタコマの先住民、コーストセリッシュ・ピュアラップ族は世界最大のタコの生息域近くに住んでいた。

 彼らにとってミズダコは昔から取引の材料であり、その長い関わりの歴史からミズダコに文化的重要性を見出すのは当然のことだといえよう。

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19世紀に描かれたミズダコを狩る男性 photo by iStock

 ブリティッシュコロンビア州のハイダ族の間では、偉大なタコの族長伝説もある。人間の姿に変身するだけでなく、空を飛んで世界中を移動するタコもいれば、タコは知恵者という言い伝えも多い。

 このようにとらえどころがないタコは自然界における奇妙な生き物のシンボルとなり、そのイメージは先住民の間だけでなく世界中に広まっている。

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巨大ミズダコがタコマのナローズ橋を引き裂こうとしているイラスト / image credit:Dakota Harr, the Hazel Hill Contemporary

 得体の知れなさもあいまってか、地元新聞の報道も、ダイバーや漁師が巨大タコに捕まって食い殺されたといった恐怖をあおるようなものばかりだった。

 芸術家や作家たちも、タコを船を破壊するほど巨大で残忍なモンスターとして描き、見た目が醜い悪魔として扱った。

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ピエール・ドニ・ド・モンフォールが描いた巨大タコ(1801年) / image credit:public domain/wikimedia

20世紀後半、ようやく巨大タコの見方が変わる

 海洋学者のジャック・クストーが1943年に世界初のアクアラングを発明し、その後の彼の先駆的なドキュメンタリーシリーズ「クストーの海底世界」ができるまでは、タコについての世間の知識はただの憶測にすぎなかった。

 ミズダコの生態が明らかになるにつれ、徐々に彼らは凶暴などではなく、臆病で知的で、魅力的な生き物であることが示されるようになった。

 環境に合わせて擬態し、体の色や質感を変化させ、潮の満ち引きや月との関係性などの神秘性もあり、変化の力と関連づけて語られるようになった。

 地元の先住民族は始めからタコを崇めていたが、その思想にようやく20世紀後半の研究が追いつき始めた。

 1976年には太平洋のミズダコに関するデータが、米国海洋大気協会の海洋漁業レビューなどに大量に掲載されるようになり、タコという種へのおかしな誤解が解け、愛情と尊敬が芽生えるようなった。

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photo by iStock

 その後、タコマではTシャツ、野球帽、ボタン、バンパーステッカーなどのグッズや、タトゥー、彫刻、彫像、壁画などにも巨大ミズダコがユーモラスに描かれるようになり、すっかり人気者になった。

 今、ポップカルチャーの世界ではちょっとしたブームになっているが、先住民族にとっては今更という感じだろう。

21世紀、アメリカでは保護対象に

 2012年、19歳のダイバーがシアトルのアルキ・シークレストパーク沖で大きなミズダコを捕殺した。このときミズダコは絶滅危惧種にはなっていなかったが、このことが論争を引き起こし、その結果、この入り江は海洋保護区になった。

 4年後には、タコマ・ナローズ橋が崩落した現場近くのダイビングスポット、ティトロービーチもこれにならって保護区となった。

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1940年に強風により崩壊したタコマ・ナローズ橋、当時は巨大タコの仕業と噂されていた / image credit:Washington State Historical Society

 かつてはビッグフットやオーストラリアのバンニップなどと同じように恐れられ、UMA 扱いされていたミズダコは、現在は頭が良くきもかわいい生き物としてすっかり愛される対象になっている。

 ダイバーたちもかつてのように恐れるのではなく、その大きさに驚きつつも、彼らの姿をひと目見ようと海に潜って探している。

 そして科学者たちは現在、高度で複雑な生き物であるタコやイカなどの頭足類に夢中になっており、彼らへの知識を深める研究の日々を送っている。

References:How the World’s Largest Octopus Went From Cryptid to Protected – Atlas Obscura / written by konohazuku / edited by / parumo

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この記事へのコメント、23件

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  1. 本州人には馴染みが薄いけど道民にとってミズダコは美味しい食材よね

    1. >>4
      大阪出身のこの人が移住先でもたこ焼きを作ろうと考えてたとか?

    2. >>4
      もしかするとそのダイバーはタコを食べたかったのかもしれない。

    3. >>4
      アメリカ人は巨大な動物を狩猟(という一方的殺戮)をするのが大好きだから。巨大なイノシシやシカやワニや魚を捕殺して写真とって自慢げにエンジョイしているよ。最近は少し気を使い始めたけど、ちょっと前はアニマルプラネットで巨大動物を狩る番組もやってたしね。自由の国アメリカだよ

  2. 悪魔扱いから保護対象?
    極端すぎるだろ…てか保護って大抵過去の酷い歴史の反動だよな
    取り敢えず食べてる地域を攻撃しないでくれよ

    1. >>5
      欧米と言うかアメリカなのかな
      極端から極端に走る傾向がある気がする

  3. (マダコ・ナ・ローズ赤いタコを君に)

    確かにミズダコの眼はクリーチャー感ある

  4. 悪魔と恐れられた時代は終わったのね
    愚かな人間の誤解が解けてよかった

  5. 美味いか不味いか、それが重要だ。

    ミズダコは最高に美味い。

  6. 日本はタコが取れなくなって6~7割が輸入だからなぁ。
    資源管理をしっかりやらんと日本産は無くなるかもなぁ。

    1. >>14
      日本はモーリタニアにタコ工場作ったから…
      現地の人は食べないからね、winwinよぉ

  7. 煮て食うならマダコのほうが美味いが、刺身で食うならミズダコのほうが美味い

  8. このサイズまで成長して頭もいいのに、寿命は2-3年しかないんだよなぁ。
    まぁこれで寿命も長かったら、今頃は「タコの惑星」になってたんだろうけど。

  9. 9m、270キロ?!信じ難い、ぜんぜん知らなかった。って事はそれに準ずる個体もいるって事だよね。ニュースで見ないけど。。。

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