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シリアで発見された円筒形遺物に最古のアルファベット文字、歴史が書き換わる可能性

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初期のアルファベットが刻まれているとされる粘土でできた円筒形の遺物 Image credit: Glenn Schwartz, Johns Hopkins University

 紀元前1800年頃に始まったとされているアルファベットの起源が、実際はもっと古かったかもしれないという新説が発表された。

 シリア北西部にあった古代都市、ウンム・エル・マラ遺跡で見つかったアルファベットらしきものが刻まれた遺物は、紀元前2300年にさかのぼる可能性があるというのだ。

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 もしこれが本当にアルファベットなら、これまで考えられていたよりも500年古いものであり、アルファベットの歴史が書き換わる可能性があるという。

アルファベットの起源、これまでの定説

 最初のアルファベットは、紀元前1800年頃、セム語族(中東、西アジア、北アフリカ、アラビア半島に広がる多彩な民族)がエジプトにおいて象形文字の一部を取り入れて生まれたと考えられていた。

 これら初期の文字体系は中東全域から最終的に西ヨーロッパで使用されるシステムへと進化した。

 だが、米ジョンズ・ホプキンス大学の考古学者グレン・シュワルツ氏らが発見した、小さな粘土の円筒形遺物はアルファベットの誕生がそれよりももっと古かったことを示している。

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シリアの古代都市ウンム・エル・マラ遺跡で発見された4,400年前の筒状の粘土製品 Image credit: Glenn Schwartz, Johns Hopkins University

シリアで発見された筒状遺物にアルファベットによく似た文字

 2004年、青銅器時代初期にさかのぼる墓の中から、粘土でできた円筒形の遺物が4つ見つかった。

 人の指ほどの大きさで、表面に初期のアルファベットによく似た碑文が刻まれている。

 近くに陶器の器があったことから、どうやら内容物や所有者を識別するタグとして使われていたらしく、中空になっているところに紐を通して使用したのではないかと思われる。

 複雑すぎて一部のエリート書記官にしか使われていなかった楔形文字や象形文字とは異なり、アルファベットは広く世に広まって、情報を記録したりコミュニケーションを円滑にするのを可能にした。

 こうした書記体系の民主化は商業、統治、日常生活における書き言葉が広く使われる素地を作った。

 古代都市、ウンム・エル・マラという遺跡の重要性もさらにアルファベットの広まりに拍車をかけた可能性がある。

 ここは青銅器時代初期の中規模都市で、宝石や武器など副葬品が豊かなエリートの墓がいくつもあった。これら遺物から、当時の技術や社会の発達について貴重な洞察が得られる。

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ウンム・エル・マラの発掘現場のシュワルツ氏  image credit:John Hopkins University

アルファベットの起源であるという説に懐疑的な声も

 アルファベット起源のタイムラインが約500年古くなるというこの説は、議論を巻き起こしている。

 シュワルツ氏はそうした懐疑的意見を認めつつ、見つかった円筒形遺物の碑文は当時おもに使われていた楔形文字とは大きく異なり、むしろ初期のセム語に似ていると指摘している。

 セム語の専門家も円筒形遺物に刻まれている文字がアルファベット表記の一種だという考えを支持している。

 古代近東におけるコミュニケーションと文化交流の歴史への影響を強調する。

 放射線炭素年代測定によって、円筒形遺物の年代は特定されたが、それがなにを意味しているのかまだ断定するのは難しい。

 シュワルツ氏は書かれているのは品物の名前や説明ではないかと推測しているが、もっと多くの例を研究してみないとわからないという。

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アルファベットらしき文字が刻まれた小さな円筒形遺物  Image credit: Glenn Schwartz, Johns Hopkins University

もしもアルファベットなら文字の歴史に影響を及ぼす

 この円筒遺物の文字が最古のアルファベットであることが確認されれば、初期のコミュニケーション技術の理解に革命がもたらされることになる。

 それまでの複雑で膨大なシンボルに比べて、アルファベットの書記プロセスはかなり簡素化されている。

 限られた文字で音を表すことができ、無数の言葉やアイデアを生み出すことが可能になった。

 アルファベット表記は、学者ではない一般の人でも文字を利用することができるため急速に広まり、記録や文化的な表現が促進された。

 これらアルファベット起源と思われる碑文を完全に理解するには、まだまだ研究が必要だ。

 だが、最古のアルファベットがエジプトではなくシリアあるいは近東のどこかで出現したのだとしたら、その影響は言語学のみならず、古代社会がどのようにアイデアを共有し、資源を管理し、自分たちのアイデンティティを形成したかについての洞察も提供してくれることだろう。

 この研究は 『American Society of Overseas Research (ASOR 2024)』の年次総会で発表された。

References: Alphabetic writing may have begun 500 years earlier than believed | Hub / Clay Cylinders May Rewrite The Timeline On The Origins Of The Alphabet | IFLScience

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この記事へのコメント、9件

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  1. 象形文字や楔形文字の簡略化なんだろうけど漢字から仮名が生まれたのと同じようなものだと思う

  2. べつの地域で新しく出土したことと起源が変わったことは同義じゃない

    1. 毎回言ってる気がするが、それを決めるのはあんたじゃないんよ。

  3. エジプト~中東~西ヨーロッパの広さや地形が感覚的にわからない(エジプトは中東だけど念の為)
    意外と移動しやすかったのなら同時発生的というかすぐに共有された感じなのかな
    ※空想してるだけなので絡むのはやめてください

    1. 地中海が内海ではあったので、外洋と違いそこまで荒れることはなく、交易はやりやすかったのは確かだけど
      距離で言えばジブラルタル海峡-シリアまでの長さは、日本列島(北海道から九州まで)を横に二つ並べたぐらいかな? わかりずらいな
      …南シナ海でタイを出発してニューギニア島に着くぐらい。これもなんかわかりづらいなw
      ポルトガルを出て、カナダのハリファックスまで行く(大西洋横断)ぐらい…はどうでしょう?

  4. セム語族ってのちのユダヤ人のことだっけ?
    このへんと中国はかなり昔から栄えてるよね

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