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大型ハリケーン「ミルトン」の目に偉大なる科学者の遺灰を投下したアメリカ海洋大気庁

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国際宇宙ステーションの宇宙飛行士が2024年10月8日に撮影したアメリカ上空のハリケーン「ミルトン」この画像を大きなサイズで見る
ハリケーン「ミルトン」 image credit:ASA JSC, ISS

アメリカ海洋大気庁(NOAA)の職員たちによって、レーダーの分析や台風の調査で長年貢献した科学者の遺灰がハリケーン「ミルトン」の目に投下されたそうだ。

 遺灰は2023年に亡くなった科学者、ピーター・ドッジ氏のもの。遺灰の投下は、彼の44年にわたるキャリアと、レーダー気象学や台風研究への貢献を讃えるものだという。

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 ミルトンは当初最強のカテゴリー5に分類され、100年に1度とされた大型ハリケーンで、飛行機でそこに突っ込もうものなら普通なら大荒れが予想される。

 だがドッジ氏が天から守ってくれたのか、遺灰を撒いた時は、異例なほど平穏な状態だったという。

大型ハリケーン「ミルトン」に投下された偉大なる科学者の遺灰

 大型ハリケーン「ミルトン」は、100年に1度の大型ハリケーンとされた危険な台風で、その強さは当初最強クラスのカテゴリー5に分類されていた(なおそのパワーをネコで表すとこんな感じだ)。

 だがミルトンは、フロリダ上陸時にはカテゴリー3にまで格下げされ、現在ではカテゴリー1に勢力を弱めたという。

 それでもフロリダ全域で停電や冠水、建物の被害が報告されている。

 その強力さは地元テレビ局の台風の専門家であるマイケル・ローリー氏がXにポストした「ボルテックス・データ・メッセージ」にも記録されている。

飛行機がミルトンの目に突入した瞬間のボルテックス・データ・メッセージ。風速は179mph(288km/h)を記録している/Credit: Michael Lowry / NOAA

 これはドッジ氏の遺灰を携えた飛行機がミルトンの目に突入した瞬間の気象データを記したもので、風速は288km/hに達していた。

 風速140km/h以上で樹木や電柱が倒れ、木造住宅が倒壊し始めるレベルなので、それがどれほどの威力か想像できるだろう。

 なお、その末尾にある「PETER DODGE HX SCI (1950–2023) 387TH PENNY」という一文は、ドッジ氏への追悼文だ。

 「HX SCI」は「ハリケーン科学者」を、「387TH PENNY」は、「387回目のハリケーン突入」を意味する。そう、これはドッジ氏にとって387回目の、そして最後となるハリケーン飛行だったのだ。

ピーター・ドッジ氏の遺灰を運ぶ飛行機

ドッジ氏は、生涯をレーダーと台風の研究に捧げた

 2023年3月3日に73歳で亡くなったピーター・ドッジ氏は、NOAAの国立ハリケーンセンターや航空運用センターで、地上や航空機に設置されたレーダーの分析や研究に携わっており、ハリケーン・ハンターの異名を持つ。

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2005年のハリケーン調査飛行で撮影された生前のドッジ氏/Credit: Shirley Murillo / NOAA

 その業績は高く評価されており、商務省のブロンズメダル、NOAAの管理者賞(2回)、さらに陸軍工兵隊の愛国的市民サービス賞など、さまざまな受賞歴がある。

 ドッジ氏は視力が悪化する中、台風上陸実験のための飛行モジュールの設計を続け、研究チームと協力しながら、移動型気象プラットフォームでデータを収集し続けた。

 100年に1度と言われるほどの巨大なハリケーンの目の中に撒かれたドッジ氏の遺灰。彼にとっても本望なのかもしれない。

 生前の彼は、時事問題・書籍・音楽、そしてレーダー技術について話すのが好きだったそうだ。

 今は生涯をかけて追い求めたハリケーンの中で安らかに眠っているのだろうか?

References: NOAA drops scientist’s ashes into the eye of Category 5 Milton - Ars Technica / A Hurricane Scientist Logged a Final Flight as NOAA Released His Ashes Into Milton’s Eye

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この記事へのコメント、20件

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    1. 確率はめちゃくちゃ低いだろうけど、偉大なる科学者のご遺体を直に吸い込みそうでなんか嫌だな

  1. 記事中の「風速は288km/h」は日本でいうところの風速 80m/s です。なんでもすっ飛んでっちゃう風速ですね。竜巻換算で藤田スケール F3 クラスです。気象庁のページから引用すると「壁が押し倒され住家が倒壊する。非住家はバラバラになって飛散し、鉄骨づくりでもつぶれる。汽車は転覆し、自動車はもち上げられて飛ばされる。森林の大木でも、大半折れるか倒れるかし、引き抜かれることもある。」とのこと。

    遺灰をハリケーン中で撒くというのは自然の中に還るという点でうらやましいです。一般人は船で海洋かな。有人飛行機だと国際線クラスで高度 12km くらいを飛んでるから台風の上面 10-15km は中に入っちゃうかな。無人機(グローバルホーク、トライトン)なら高度 20㎞ くらいまで上がれるから台風の上から中心まで行けそうですね。

  2. 樹木葬や海葬は最近流行りだが、台風葬は人類初だろうな
    その栄誉になった博士にとってはすんげえ名誉であの世に逝っても
    自慢できるぜ。しかも台風と一緒になれるとはすばらしい

  3. ハリケーンと台風の基準てかなり違うのですよね、
    その意味で日本にはハリケーン(クラス)の台風(タイフーン)てまあ来ない。
    なんで太平洋のがでかいのにハリケーンにまで育たないのかな、っていつも不思議

  4. 昔々はハリケーンに原爆投下して消滅させようなんていう無茶な計画が検討されたが、実行する前に正気に戻ってくれて良かったよ。

    1. 計算した結果。保有する核爆弾全部だったかを投下しても
      ハリケーンは消えないことに気づいた話はちょっと好き

  5. 最終的にハリケーンと一つになった科学者
    マーベルのヒーローにいそう

    1. 天候を操作できるミュータント能力持ちならストームって女性がすでに居るね

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