(ごぶさたしてました。久しぶりのブログ更新です。)
(写真は撤去された板橋区ホタル生態環境館の跡地)
次の文章を読んでみてください。少し長い文章ですが、できるだけ予断を持たず、何が書かれているか、どんな性質の文章なのか、考えながら読んでみましょう。(誤字も多くありますが、そのまま引用しています)
【引用始まり】
ホタル生態環境館業務管理委託仕様書
板橋区ホタル生態環境館業務管理委託について下記の項目の全てを業務しなければならない。業務委託者は水生生物全般及び清掃等に精通している者とする。
月20日で、休館日は区担当職員に従い業務を執行する。この時ホタル幼虫・ホタル成虫・蛹・成虫及び貴重な動植物の管理を行う。但し、これらの業務執行に関して個体等の異変や死亡等があった場合には全て委託者の責任であり、速やかに同じ個体及び同じ遺伝子・DNAの持ったものを用意する。
飼育室
*180cm ホタル生態水槽6本以上
1.業務執行日に全ての生態水槽の水質検査を行う。但し、計測機械等はデジタル仕様で、100分の1まで計測でき、且つ管理委託者が器機を用意すること。計測したデーターは全て板橋区ホタル生態環境館のものとする。(別途水質調査内容明記)
2.区担当職員の指示に従い、飼育水交換を行う。但し、水道水を用いるので、PH等が交換する生態水槽に合わせなければならない。変動値は0.2とする。これによりホタル幼虫等が死亡した場合は速やかに〈注意1〉福島県双葉郡大熊町産のゲンジボタル幼虫、栃木県栗山村産のヘイケボタル幼虫と同じ「遺伝子」「DNA」を持ち、且つ同じ「令」個体を委託者が速やかに用意する。
3.区担当職員の指示に従い、濾材交換(骨炭・珊瑚砂等々)を行う。但し、濾材交換時に飼育水異変があり、ホタル幼虫等が死亡した場合は〈注意1〉と同じである。
4.区担当職員の指示により、飼育等を与える。飼料等は全て委託者が用意する。(別途飼料内容を明記する) これにより水質悪化に伴いホタル幼虫等が死亡した場合は〈注意1〉と同じである。
5.上陸基・羽化基・産卵期・孵化期は区担当職員と共に早朝作業及び夜間作業等を行う。この時に区担当職員の指示に従い適切な業務を執行しなければならない。これによりホタル幼虫・卵・成虫等が死亡した場合は速やかに〈注意1〉と卵・成虫等を用意すること。
6.区担当職員の指示により用土交換補助を行う。この時に量を誤り、且つ敏速に業務遂行が出来ずに、水生のホタル幼虫・カワニナ・水生動物が死亡した場合には〈注意1・2〉を行う。
7.羽化期に区担当職員の指示により上陸地に細霧作業を行う。但し、誤って羽化個体が少ない場合と全滅の時は全て委託者の責任において成虫を〈注意1〉2日以内で用意すること。
*180cm等カワニナ育成水槽4本及び90cm等カワニナ予備水槽6本以上
1.業務執行日に全てのカワニナ水槽の水質検査を行う。但し、計測器はデジタル仕様で、100分の1まで計測でき、且つ管理委託者が器機を用意する。計測したデーターは全て板橋区ホタル飼育施設のものとする。(別途水質調査内容明記)
2.区担当職員の指示に従い、飼育水交換を行う。この時PHの幅は0.1とする。誤って〈注意2〉カワニナ等を死亡させたときは速やかに福島県産と栃木県産のカワニナを委託者が用意する。
3.区担当職員の指示に従い、濾材交換(骨炭・エーハイサブストラット・珊瑚砂等々)を行う。この時、誤って水槽内のカワニナ等が死亡した場合は全て委託者の責任において〈注意2〉を行う。
4.カワニナ水槽内の水生植物の管理を区担当職員の指示により行う。この時誤って枯れさせた場合は同じ水生植物を委託者が用意する。但し、「タヌキモ」等の貴重な植物は保護されている場合が多い。従って委託者が責任を持って各都道府県及び市町村に許可を取り採取する。
5.区担当職員の指示によりカワニナ水槽よりカワニナの稚貝を採取し、孵化幼虫に与える。この時稚貝を死亡させたり、若しくは個体数を誤り孵化幼虫を死亡させた場合には同等の稚貝と孵化幼虫〈注意1と同じ〉を速やかに用意すること。
6.区担当職員の指示により各カワニナ水槽に飼料を与える。この時誤ってカワニナ等を死亡若しくは著しく個体に変化が見られた場合には委託者の責任で〈注意2〉を行う。
7.カワニナ水槽には貴重な魚類(イトウ、ホンメダカ、ヨシノボリ、ヤマトヌマエビ等々)が入っている。委託者が区担当職員の指示に従わなく死亡させたときは速やかに同じ魚類を2日以内に用意する。
*「内せせらぎ」及び「外せせらぎ」
1.区担当職員の指示により簡易水質検査を行う。結果報告は5分以内に報告すること。
2.区担当職員の指示により飼育水交換の補助作業を行う。この時指示に従わなく且つ生態に多大なる影響があった場合には全ての責任は委託者にあり、ホタル個体及びカワニナ、水生動物、水生植物(毎年平均約100万匹以上のゲンジボタル・ヘイケボタル幼虫、約80㎏のカワニナ等々)を3日以内に同じ種のものを用意すること。
3.区担当職員の指示により、用土交換作業補助を行う。用土交換時に委託者が用土攪拌等に欠陥があった場合には全ての用土を取り出し、「ホタル仕様用土」を委託者が全て用意する事。
4.循環ピット内点検及び流速ポンプ、ストレーナー清掃作業を区担当職員の指示により行う。循環ピットには「イトウ」が生息しているので傷等を決して付けない。誤って傷等を個体に負わせた場合には同種魚を2日以内で委託者が責任を持って用意する。
5.上陸地植物手入れを区担当職員の指示により行う。貴重な植物、例えば「シラネアオイ」「アツモリソウ」「ザゼンソウ」「クマガイソウ」「ウチョウラン」「ツチアケビ」「ヤマトキソウ」「ウラシマソウ」「サギソウ」「ニリンソウ」「カタクリ」等々の200種を越える植物である。指示に従わず枯れさせた場合には委託者が責任を持って同種を2日以内に用意する。
6.区担当職員の指示により濾過槽2基の点検及び濾材交換、濾材洗浄作業を行う。この時指示に従わなく且つ好気性バクテリアが死亡した場合には「せせらぎ」全体の危機を意味する。よって委託者は全責任を取らなくてはならない。
7.冷温水器及び配管、バルブ等の点検及び清浄作業を区担当職員の指示により行う。誤って器機等の破損が生じた場合には当日に全ての箇所を委託者が責任を持って復旧する事。
8.天窓・寒冷紗の清掃及び点検を区担当職員の指示により行う。ガラス等が破損した場合には委託者が全責任をもって当日に復旧すること。
9.木道の清掃を区担当職員の指示により行う。流し水が大量に上陸用土に入り、且つ生態に多大なる影響があった場合には委託者が全責任を取る事。
10.上陸期・羽化期・産卵期・孵化期は当然夜間作業及び早朝作業を区担当職員の指示により行う。
*水生昆虫及び両生類水槽10本以上
1.タガメ水槽、ゲンゴロウ水槽、タイコウチ・コウイムシ水槽の飼育水を区担当職員の指示により交換する。この時、誤って死亡させたときは現飼育施設に飼育している個体と同じ産地のものを3日以内で委託者が用意すること。
2.カジカガエル、トウキョウサンショウウオ水槽の飼育交換を区担当職員の指示により適切に行う。但し、誤って死亡させた場合は委託者が責任を持って同じ産地(奥多摩檜原村)の個体を役場の許可を取って採取し、用意すること。
3.水生生物が産卵し繁殖したときは区担当職員の指示により適切に孵化個体を保護しなければならない。この時誤って死亡した場合は委託者が同等の個体を責任を持って用意する。
4.水生昆虫及び両生類水槽に生き餌を区担当職員の指示により行う。全ての生き餌は純国産のイトミミズ・赤虫・さし(蛆)・メダカ・金魚等で、委託者が用意する。この時誤って死亡させた場合は委託者の責任で死亡個体を用意する。また、生き餌に関して区担当職員が鮮度やその他で適切ではないと判断した場合は2日以内で同等の生き餌を用意すること。
*淡水魚展示水槽及びその他の水槽(契約個所の生態槽も含む)
1.ムサシトミヨ水槽、アカメ水槽、ヤリタナゴ等水槽の飼育水交換を区担当職員の指示により適切に行う。誤って死亡若しくは著しく個体に変化が見られた場合には同等の個体を3日以内に委託者が用意する。
2.発光性海水魚水槽・発光性熱帯魚水槽の飼育水交換及び給餌作業を区担当職員の指示に従い行う。この時個体が死亡著しく変化が見られた場合には速やかに同等の魚類を委託者が責任を持って用意すること。
*産卵容器及び孵化幼虫バット100本以上
1.ゲンジボタル、ヘイケボタル産卵容器(平均80個前後)飼育水交換を区担当職員の指示に従い適切に行う。毎年約100万個前後の産卵数がある。誤って卵を死亡させた場合は委託者が責任を持って当館が原産地から役場の許可をもらい2日以内で採取し、個体数を合わせなければならない。
2.産卵数及び孵化幼虫数は区担当職員の指示により的確に数えなければならない。この時誤って卵を潰したり、乾燥させたりして死亡させた場合は委託者が責任を持って当施設原産地から同等の卵数を確保しなければならない。また孵化幼虫数も同様であり、この時のデーターは全て板橋区ホタル生態環境館のものとする。
3.委託者の勤務日に孵化幼虫ステンレスバット飼育水交換を区担当職員の指示により適切に行う。この時 孵化幼虫を誤って死亡若しくは流してしまった場合は速やかに同数を原産地に許可を取って採取し、2日以内に用意すること。
4.委託者が勤務日に孵化幼虫ステンレスバットに稚貝を区担当職員の指示により適切に与える。この時、稚貝数を誤り、孵化幼虫が餓死若しくは稚貝が多く入り、アンモニア・亜硝酸濃度が高くなり、個体が死亡した場合は委託者が全責任を取り、当施設原産地より同数を確保しなければならない。
*羽化個体と夜間特別公開
1.ゲンジボタルとヘイケボタルの羽化期は早朝作業・夜間作業を行う。全ての水質調査や上陸地への湿度調整、植物育成状況等を区担当職員の指示により適切に扱う。もし羽化個体が委託者が誤って死亡させた場合には全責任は委託者にあり、同じ遺伝子を持った羽化個体を同数2日以内で用意すること。
2.夜間特別公開日は4月下旬には決定する。これに伴いホタル成虫羽化日を区担当職員が逆算する。湿度・温度、水温・日照時間等をコントロールする。これに伴い区担当職員の指示により適切な作業を行わなければならない。もし羽化個体が委託者が誤って死亡させた場合には全責任は委託者にあり、同じ遺伝子を持った羽化個体を同数2日以内で用意すること。
もし、羽化個体数等が委託者により誤り死亡させたり、著しく個体が弱く夜間特別公開が出来ない場合には、委託者が全責任を取り、各行政・各報道機関に対して全面的に出なければならない。
3.2の個体数が委託者に明らかに誤った場合には過去羽化個体数の平均数と同等のゲンジボタル・ヘイケボタル成虫を2日以内で用意しなければならない。
*資料作成及び来館者等の説明
1.各生態水槽及びカワニナ水槽等々と「せせらぎ」の作業日誌を書くこと。
2.区担当職員が資料等々の作成を指示したとき速やかに実行すること。この時のデーターは当施設のものであり、全て施設の管轄下にある。万が一データーが露出した場合には、委託者は「告訴」され、且つ責任は大きく社会的にも責任追及がある。
3.区担当職員の指示により来館者に適切な説明を施さなければならない。来館者が不愉快に感じた場合は委託者が全責任を取る事。
委託者負担品
水質検査機一式(一流メーカー品)
水質維持等
1.バイオコリンH3
2.ステラコリン
3.フローラプライド
4.バイタル
5.水作ニューフラワー濾過器
6.水作エイトM
7.水作エイトS
8.人工海水(極上品)
9.骨炭(叶産業製品 20㎏入り)
10.エアーポンプ
11.エアーチューブ
12.エアー分配機
13.各フィルター
14.上記の他 当館が必要とするもの全て
濾材及び上陸用土関係
1.抗火石
2.トルマリン入り訓炭(実用新案)
飼料
1.テトラミン
2.テトラフィン
3.クリル
4.ドログリーン
5.ドロミン
6.ディスカスフード
7.国産冷凍赤虫
8.国産イトミミズ
9.サシ(蛆)
10.ミルワーム
11.ロイヤルミルワーム
12.向日葵の種
13.新鮮野菜及び果物(鈴虫・松虫・カンタン等の鳴く虫)
14.上記の他 当館が必要とするもの全て
【引用終わり】
この文章は、今は廃止された板橋区ホタル生態環境館でホタル飼育業務を板橋区から委託されていた「むし企画」代表が、区から契約を途中解除されたことを不服として板橋区を訴えた裁判で、原告の「むし企画」の側が証拠として裁判所に提出した書面の一つです。
この裁判では、区側が「むし企画は委託した内容の業務をしていなかったので、契約解除は正当」と主張しているのに対して、「むし企画」側は「区から委託された業務は行なっており、契約解除される理由はない」と反論し、原告と被告が正面対決しています。
引用した文章は原告の「むし企画」代表が〝委託されていた内容〟の証拠として示したものです。
原告のむし企画はこの文章は板橋区が作成した正式な「仕様書」だと主張していますが、被告の板橋区側は、正式な「仕様書」とは認めておらず、区のホタル飼育担当職員が区に無断で私的に作成した文書だと主張しています。
誰がこの文書を書いたのか?では原告と被告は対立していますが、「区担当職員」から「むし企画」代表に手渡された文章であるという点では両者の認識は一致しています。
それでは、この文章=「仕様書」は誰が書いたのか? ほんとうに板橋区の正式な『委託書』なのでしょうか?
結論をいえば、私はこの仕様書は板橋区が作成したものではなく、まったくの私的文書だと判断しています。
こんな文書を行政機関がつくるはずがありません。どこがおかしいかは、読んでいただければ、いくつも指摘できると思います。
不審な点をあげればきりがないのですが、簡単な表現上の問題をまず指摘すれば、文中「委託者」とされているのは明かな誤記で、本来なら「受託者」と表記すべきです。そうでないと文章全体の意味が通りません。行政文書のすべてが、「まちがいがない」とはいえませんが、複数でチェックしているはずの行政文書では、ここまで基本的なミスは見逃されるはずのないものです。
内容の点でも、委託を受けた「むし企画」の側(文中は『委託者』)に「全責任をとること」を強いており、対等な契約にはなっていません。法的にも問題のある文書です。
いちばん重大なのは、この私的な「仕様書」が、ホタル飼育業務の手順や方法を示したものにはなっておらず、ひたすら〝数合わせ〟を、受託者である「むし企画」に強いていることです。
これでは、たとえ飼育や繁殖に失敗し、累代飼育が途絶えたとしても、表面上は例年通りのホタル飼育規模が維持されることになります。飼育データーが対外的に「露出」した場合には「告訴する」とまで書かれているのですから、途中でホタルが死亡しても、正直に「何匹死んだ」などということは、区や区民には知らされないことになります。
そもそもホタルもカワニナも生き物ですから、毎年数に変動があっても当然です。それをこうした「仕様書」で人為的に報告数をコントロールしていたとすれば、これまで「区担当職員」が区や区民、マスコミに報告してきた数値(卵数、孵化数、幼虫数、上陸数、羽化数)はまったく根拠がなく、信用できません。
こんなホタル飼育事業に板橋区民は毎年3000~4000万円(うち「むし企画」への委託費は年1400万円)、25年間でゆうに10億円以上の税金を支出させてきたのです。
区民にはホタル館の真相を知る権利があり、区議会議員には区民に事態を説明する義務があります。
区議会のすべての会派、政党に沈黙することは許されません。
なぜ、こんなホタル館の実態を黙認してきたのか? きちんと説明すべきでしょう。