シャインマスカットとマスカット香とわたくし
ぶどう界のスーパースターになりつつある「シャインマスカット」
ちゃんとしたマスカット香が強く出てるものやそうでもないものなど
バラつきがまだかなりあります。お値段なりということのようです。
「香りの立つもの」が好きだ。
独特なフレーバー(食べものを口に入れて空気が鼻に抜ける際に感じる香り)を
持つものが大変とても好きなので、すっぱいすももと評価の低いサンタローザ
(熟すと洋梨のようなフレーバーが出てくる)が大好きと言ったりして
すもも農家に「味がわからん変なやつ」と思われたりする。
ワインも日本酒も、もったりした田舎臭いフレーバーのものはダメで、
華やかな、花のようなスパイスのような香りがあるものが好き。なので、
味重視の方々にやはり「味のわからんバカなやつ」と言われる。
某D社時に担当したりんご農家がつくっていた「アキタゴールド」という
マイナーなりんごは、熟すとクローブのようなフレーバーを持つりんごで、
わたくしだけが「すげーおいしいから増やして!!」と感動して提案したが
皆の賛同は得られなかった。もちろん増えもしなかった。
農家の皆様にはわたくしの嗜好が変だとわかっていたらしい。
「華やかな香り」にヒジョーに弱いわたくしが、
さらに弱くなってしまう香りが「マスカット香」である。
マスカット香はその名のとおり、大変高価なぶどう
「マスカット・オブ・アレキサンドリア」様が持つフレーバーだが、
アレキ様の血を引くぶどうでも出たり出なかったりする。
マスカット香を持つぶどうには「ルビーオクヤマ」「甲斐路」などがあるが、
天候や熟度によって強く出たり出なかったりして
そういう不安定な香りなのか気難しいのか技術の問題かは不明だ。
甲斐路からマスカット香なんて感じたことないんだが、ある人いるんだろうか。
去年生まれて初めて食べた「タネありオリンピア」。
タネなしならまだしもタネありはほぼ稀少品。「幻のぶどう」と
言われる通りでめっちゃおいしかったなー。もいちど食べたい。
これはハネ出し品で形悪いけど、それでも激ウマでした。
さて、マスカット・オブ・アレキサンドリアは高温多湿の日本では
作りづらい「欧州系ぶどう」で、これらは病気にも雨にも弱く手間がかかる。
ということもあり、欧州系ぶどうはおおむね高級品である。
欧州系ぶどうに対してアメリカ系ぶどうというのもあって、
これは病気に強く作りやすいが独特の香りがあり「狐臭」と呼ばれる。
なぜキツネ? どんなニオイなんだか不明だ。
現在日本一の栽培面積を誇り儲からなくなってきたぶどう「巨峰」は
欧州系ぶどうとアメリカ系ぶどうを交配してできた品種だが、
これを筆頭とする巨峰群(藤稔とかピオーネとか)の香りはとてもよく似ていて
わたくしのバカな鼻にはピオーネと巨峰の香りの違いがわからない。
わたくしにとっては「安芸クイーンも高雄も全部巨峰じゃん!」って感じだから
「スーパーの売場には巨峰しかないじゃん!!!」ってのが最近までの話。
そんな日本の巨峰群まみれのぶどう界に、マスカット香華やかな
すんばらしい品種「シャインマスカット」が登場した。
さて、わたくしがシャインを初めて食べたのは2007年か2008年の12月である。
「12月まで貯蔵できるぶどうがあるよ。味見してみる?」と食べさせてもらったのだ。
12月にぶどうが食べたいかどうかは別として、貯蔵性の高いぶどうは
当時はスチューベンしかなかったから、これはイケる! と思った。
その時食べたシャインマスカットはひたすら甘く香りもなく、
砂糖を食べてるみたいだった。
2年後、再びシャインマスカットを食べたときには
マスカット香はそんなにしなくて、しかも甘くもなかった。
今一番食べたいぶどう「ルビーロマン」。昨年は一房1万円とかだった。
これはまだ色が来てないので小汚いけど、ピンポン球くらいの玉になり
ルビー色になる。親が巨峰群だからやっぱり狐臭がするのかしら。
黄色くなるまで熟すと甘いけど香りがなくなる。だから早くもぐのだが、
そうすると味が乗らないと農家は言う。さらに、
熟度に応じてマスカット香が出たり出なかったりするらしい。
意外と気難しいなー。だったらルビーオクヤマのほうがいいなー。
当時のわたくしは「タネありぶどう推進派」であり、
ジベ処理でタネなしになるシャインマスカットにとくに愛は無かった。
そうしたら、3年ほど前ふと気づくと、スーパーのぶどう売り場が
シャインマスカットまみれになっていたではありませんか。
その拡散(高接ぎ?)力の速さにぶどう界の絶大な期待を感じたわたくし。
巨峰以来のスター選手登場!!!って感じだ。
デビュー当初は400g程度の小房だったが最近は800g位の大房になり、
黄色かった果実が緑色に、そしてどんどんでかくなってきた。
この緑色を保持するためにぶどうにかける袋には青い色がついている。
黄色くすると商品価値がなくなるのかな。でも熟度がわからないよな。
さらにマスカット香の出方にはバラつきがありアタリハズレが大きい。
マスカット香を出せる人と出せない人がいるのかもしれない。
そして昨年。わたくしは生涯最高のシャインマスカットを食べたのである。
糖度は17度とたいして高くないのだが、マスカット香が強く、
うまみがあって、いくらでも食べられてしまうこのシャインを作ったのは、
以前「60歳からのすんばらしいぶどう栽培」で紹介した五十嵐晴夫さんだ。
http://hontabe.blog6.fc2.com/blog-entry-340.html
マンソン仕立ての改良型。果実ひとつに葉っぱが何枚と
ちゃんと数えられてしかも作業性が良く、葉におひさまが
じゅうぶんに当たるというすんばらしい仕立て。
これが味に影響してるんじゃないかと思うわたくし。
なぜこんなにおいしいのか。本人は「土づくり」だと言う。
土がもっとできてきたらますます味が良くなると言う。
わたくしは改良マンソン仕立てによる葉数の確保が理由かもと考えている。
タネありぶどう推進派としてはあんまりにも悔しいので、
タネありのシャインマスカットも食べてみたが、なぜか
マスカット香が薄く「うんうんおいしいね」とは思うが
ぼんやりした味で、わたくしは愕然としてしまったよ。
タネあり推進派、五十嵐さんのシャインに完敗。。。。うううううう。
しかし全てのシャインマスカットからこの強烈なマスカット香がするかというと
そうではなく、うっすらとしか感じられないものもある。
おいしいくだものはつくる人によるのよね、ということがよくわかる、
技術があからさまになってしまうぶどう、シャインマスカット恐るべし!!!
ということで、ここんとこ毎日五十嵐さんのシャインマスカットを食べ、
食べてる間、世界にはわたくしとシャインマスカットとマスカット香だけ
という忘我の世界に没頭している自分はやっぱり変なのかと思ったりしております。
そして最近では「シャインマスカットはおいしいからジベつけOK!!!」などと口走り、
知り合いのすもも農家に「なんちゅうことを。ダメじゃん、それじゃあ」とか言われ、
「タネありぶどう推進派」としての立場が危うくなっているわたくしですが、
決して「タネありぶどう」をおろそかにしているわけではないことを
ここに宣言しておきます。キリッ
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