生産性の条件付き収束と無条件収束

ダニ・ロドリックが表題の件について興味深い実証結果を報告している。


周知の通り、低所得国が高所得国にキャッチアップするという事象は、無条件に起きるわけではない。適切な教育や投資によって技術をスムーズに吸収する体制が国内に整備されていることが前提条件となる。即ち、国レベルでの生産性の収束は、無条件収束ではなく条件付き収束である。


しかし、産業レベルの収束に目を転じると話は違ってくる、とロドリックは言う。それを示すのが以下の図である。

これは1996-2006年の期間において、製造業の労働生産性の成長率を被説明変数、当初の労働生産性の対数値と業種ダミーを説明変数に取った回帰の結果である。国別の要因は説明変数に入れていないので、これは無条件の収束速度を推定していることになる。その結果得られた当初の労働生産性の対数値に係る回帰係数は-0.03であり、国レベルの条件付き収束で通常見い出される係数-0.02より絶対値が大きい(=収束速度が速い)、とロドリックは報告している。

ちなみに、この回帰に国別の固定効果を付け加え、産業の条件付き収束速度を求めると、(当然ながら)-0.07とより高い値が得られたという。


ロドリックは、この結果を、いかに労働力を製造業に移行させるかが成長の鍵となることを示すもの、としている。他の産業では製造業ほど外国の技術をスムーズに吸収できないが、製造業ならば上図に見られるようにほぼ自動的に外国へのキャッチアップ過程が発生する、というのがその理由である。その意味で、この実証結果は構造変化の重要性を改めて示しているのだ、とロドリックは述べている。