2024-12

2010・11・20(土)内田光子とヴィヴィアン・ハーグナー

  東京オペラシティコンサートホール  3時

 2人の協演によるモーツァルトの「ソナタ ホ短調K304(300c)」に始まり、ついでハーグナーのソロによるバルトークの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタSz117」からの「シャコンヌのテンポで」、およびバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番」からの「シャコンヌ」と続き、最後にブラームスのソナタ第1番「雨の歌」で終る――以上がメイン・プログラム。
 これらが休憩なしに約1時間15分を構成する。日本オーケストラ連盟青少年育成基金チャリティコンサートだから、ちょっと変則的なコンサート構成が採られたというわけだ。会場は超満員。

 ドイツの若手女性ヴィヴィアン・ハーグナーも、もちろん感性の鋭いヴァイオリニストだ。バルトークもバッハも、極めてスリムなイメージの若々しい演奏であり、きらきらとした音色の表情がこれらの曲から新鮮なイメージを引き出してくれる。

 だが、やはりこの日の主役は、内田光子であったろう。その演奏は、圧倒的な存在感だ。モーツァルトでは、彼女が完全に主導権を握っていた感がある。「ヴァイオリンのオブリガート付の鍵盤楽器のためのソナタ」というオリジナルのタイトルそのまま復活させているかのようなイメージだ。

 さらに印象的だったのは、ブラームスの冒頭の数小節におけるピアノの響きだ。特に2小節目から3小節目にかけ、オクターヴを二音まで下行したヴァイオリンが、再びホ――トと上って行く箇所で、それを支えるピアノの付点2分音符の和音群における、豊かでふくよかで壮大な拡がりは、内田ならではの雄弁さだろう。
 この時、ヴァイオリンとピアノとは、聴き手をハッとさせるほどの美しいハーモニーを形成していたのだった。卓越したピアニストでもあったブラームスが求めていたのは、この響きだったのだ――と感動させられる瞬間でもあった。
 この数小節を聴いただけでも、今日の演奏会を聴きに来てよかったと思ったほどである。

 腰と足の痛みのため、そのあと横浜へ行って6時から聴くつもりだった山田和樹と日本フィルの演奏会は、残念だが諦めた。今週は、月曜日の新国立劇場マチネー「アンドレア・シェニエ」も、治療のために欠席してしまった。痛みは、ハリと注射の治療でいっとき薄らいでも、長いコンサートを同じ姿勢で座ったまま聴き続けていると、たちまち復活してしまうのである。

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