2024-12

2010・11・3(水)キエフ・オペラ ムソルグスキー:「ボリス・ゴドゥノフ」

  オーチャードホール  3時

 ウクライナ国立歌劇場(キエフ・オペラ)が持って来た得意の「ボリス」は、何と、最近では珍しい存在となった「リムスキー=コルサコフ版」だった。

 この華麗極まる改訂編曲版をナマ上演で聴くのは、何年ぶりか。
 そもそもこのオペラを初めて聴いて夢中になり、隅から隅まで聴いて覚えこんでしまったのがイザイ・ドブロウェン指揮(主演はボリス・クリストフ)のリムスキー版演奏による古いLPだったから、私にとってこの版は懐かしい。
 ムソルグスキーのオリジナルとは似ても似つかぬ華美なオーケストレーションだが、これはこれでリムスキー=コルサコフの面目躍如、いかにも巧みであり、良く出来ている。第3幕のサンドミル城内の場など、よくもまあこれだけ派手にオケを鳴らしたものだと感心する。

 舞台装置と衣装はもちろん伝統的なスタイル。それほど豪華ではないが、丁寧に作ってある。
 タラス・シュトンダ(ボリス)、セルフィ・マヘラ(ピーメン)、ボフダン・タラス(ワルラーム)が重厚な声で堂々たる歌唱を示したのをはじめ、歌手陣はすべて優秀だ。ヴォロディミール・コジュハルの指揮(例のごとくイン・テンポだが)する安定した響きのオーケストラの演奏とともに、音楽的にはかなり満足できる出来であった。

 ただし、演出(ドミトロ・スモリチ)は極度に常套的で、演技などあって無きが如し。
 それに今回は、日本語字幕の質が非常に悪い。意味不明瞭な表現や誤訳が随所に見られ、読んでいて苛々させられた。

 リムスキー=コルサコフ版使用といっても、今回は「聖ワシーリイ寺院前の場」が第4幕第1場として挿入され、その代わりに第4幕の「クロームイの森の場面」がカットされるという方法が採られていた――もっともこれは、プログラムに掲載されていた筋書を読んで知ったことであり、私は親戚の通夜に出席するため第3幕まで観ただけで失礼してしまったので、自分でそれを確認したわけではない。

 もしその通りの上演だったとしたら、これはすこぶる変則的な幕構成だろう。前者(リムスキー版には無い)を復活させる上演は、他版使用の場合にはしばしばある。が、このオペラの一方の主役である群集の蜂起の場面である後者をカットするというのは、珍しい。
 招聘元に確認したら、このプロダクションはふだんウクライナで上演しているものと同じだとのこと。世界にはいろいろなやり方があるものだ。

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