2024-12

2009・5・30(土)沼尻竜典指揮日本フィルの「アルプス交響曲」

   サントリーホール

 マーラーの「交響曲第10番」の「アダージョ」と、R・シュトラウスの「アルプス交響曲」の組み合わせ。

 日本フィル、久しぶりに聴く快演である。完全な復調というには未だしだが、この調子で数年間、力を積み重ねて行ってくれれば、先は明るいだろう。
 ただし、緻密にオーケストラをまとめる力のある沼尻は、すでに指揮者陣から外れている。次のシーズンの東京・横浜定期には、彼の名は見られない。それゆえ、ラザレフ、ビエロフラーヴェク、ジークハルト、インキネン、飯守、広上、上岡といった首席や客演の指揮者たちがオーケストラをどのように引っ張って行くか、だ。

 「アダージョ」は、かなり集中力に富む演奏だった。
 一方の「アルプス」はすこぶる壮烈な「登山物語」になった。トランペットとホルンが今日はなかなか好調で、そのため華やかな高音域での叫びが映える。狩の場面のホルン群はP席後方、オルガンの下にずらりと並んで一斉に咆哮したが、これも今日は快調であった。嵐をついての下山の場面で、いろいろなモティーフがもう少し――特にホルンがもう少し壮絶に浮かび上がればいっそうスペクタクルな描写音楽になったろうが、もともとこの曲はどんなオーケストラがやっても散漫になることが多いから、贅沢はいえまい。

 それでも、今日の沼尻と日本フィルの演奏での響きのバランスは、私がこれまでナマで聴いた「アルペン」の中では、かなり良い方に属する。「頂上」や「日没」での管楽器群の響きは、とりわけ優れていた。
 あえて注文をつければ、たとえば全曲冒頭の小節や、「日の出」に入る個所(練習番号7前)、嵐が去った後で「山」が再び偉容を現わす瞬間(練習番号128)など、かんじんな個所でオーケストラの呼吸がどうも合いにくいように聞こえるのだが――このあたりに日本フィルの基本的な問題が絡むのかもしれない。
 
 とはいえ沼尻は、オーケストラをよくここまでまとめたものだ。テンポの設定も適切だ。特に頂上場面から日がかげる場面への流れがいい。「嵐」直前の緊迫感も、なかなかのものであった。

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