2024-12

2009・5・1(金)旅行日記第2日 ベートーヴェン:「フィデリオ」

  ウィーン国立歌劇場

 4時から国立歌劇場で「フィデリオ」。
 今回は、これが目当てで来たわけではない。例のオットー・シェンク演出のもので、かなり古いプロダクションだ。いまだに上演されているということは、定番として人気がある証拠なのだろう。オペラ入門篇としては、手頃なプロダクションかもしれない。
 幕が開いた瞬間に、伝統的な舞台装置が出現する。

 それはそれでいいのだが、やはりプロダクションが古くなれば、舞台進行もそれだけルーティン化するのだろう。
 如何にシェンク演出といえど、最初はもう少し綿密な演技が付加されていただろうと思うが、今は誰が舞台を取り仕切っているのか、演技も何か通り一遍で雑で、劇的緊張感に乏しい上に、歌手が客席を向いて歌うケースも少なくない。こうなると「定番」として長生きするのも良し悪しか。

 指揮はアダム・フィッシャー。序曲が始まった時には、ウィーン国立歌劇場管弦楽団も気乗りがしないような演奏で、これはやはりダメかと思ったが、序曲の途中から少しずつ引き締まり始めた。内声部の動きにハッとするような美しさが現われることも多かったし、「レオノーレ序曲第3番」などはなかなか壮烈な演奏であった。
 それでもやはり、ルーティン演奏の上の部、といった程度の出来か。ただルーティンと雖も、我が新国立劇場のオーケストラなどと比較すれば、天と地ほどの開きがあるのはもちろんである。

 フロレスタンはペーター・ザイフェルト。出番は少ないが、とにかく彼が一番声のある人だし、存在感もある。
 その妻レオノーレはペトラ・マリア・シュニッツァーで、まあ手堅く精一杯やっているという感だろう。
 刑務所長ドン・ピツァロを、このところ悪役専門のようなジョン・ヴェーゲナーが歌い演じているが、この人が少々迫力に欠けるのはドラマ全体のバランスにおいて痛い。
 他にロッコをワルター・フィンク、マルツェリーネをイルディコ・ライモンディ、ヤキーノをアレクサンダー・カイムバッハー、大臣をアレクサンドル・モイシウク。

 あまり尖った騒々しい舞台も煩わしいが、古色蒼然たる舞台も退屈を招く。いずれにせよ、こういう平凡な上演では、この作品は固有の弱点を露呈してしまう。
 日本人観客も多い。国籍問わず、記念写真を取り捲っている人たちが多いし、カーテンコールではフラッシュの砲列乱発。6時45分終演。

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