2024-12

2022・6・25(土)調布国際音楽祭8日目
鈴木雅明指揮フェスティバル・オーケストラ&河村尚子

        調布市グリーンホール 大ホール  6時30分

 鈴木優人がエグゼクティブ・プロデューサーとして率いる調布国際音楽祭、今年は10周年。
 昨年は読響が出演、今年はN響や河村尚子も登場。郊外の街の音楽祭でありながら、出演者陣は豪華なものである。鈴木優人のプロデュースの力量は並々ならぬもので、さながら「調布のカラヤン」というところか。

 今日はフェスティバル・オーケストラを聴く。このオケは、メンバーの大半は若手集団ながら、コンサートマスターの白井圭をはじめ、瀧村依里、柳瀬省太ら、N響や読響、BCJなどの大物奏者たちがずらりとトップに座って全体を引き締めているところが特徴だ。「教育活動」としての側面もあるのだろう。
 今日の指揮は鈴木雅明で、メンデルスゾーンの「フィンガルの洞窟」、シューマンの「ピアノ協奏曲」(ソリストは河村尚子)、ブラームスの「交響曲第1番」というプログラムだった。

 鈴木雅明の指揮するロマン派音楽は如何なるものか、と、それにも興味津々だったのだが、すこぶるユニークである。
 「フィンガルの洞窟」など、これほど各声部の交錯が明快に響かせられ、アクセントやデュナミークの対比なども丁寧に再現され、各フレーズが旋律美に富んで再現された演奏は、聴いたことがない。まるでバロック音楽の時代にスリップしたメンデルスゾーン、といった感である。
 その代わり、言っちゃ何だが、これほど海の雰囲気━━大岩壁に打ち寄せる波濤、吹き荒ぶ風、海鳥の舞う光景といったような━━を感じさせなかった「フィンガルの洞窟」の演奏もまた、珍しい。それはそれで興味深い解釈であることは事実だが、聴いていてあまり楽しさが感じられなかったのも確かだ。

 シューマンの協奏曲でも、オーケストラと河村尚子のピアノが妙にチグハグに聞こえるようなところもあり、彼女のピアノも何かいつもと違う。ソロ・アンコールで彼女が弾いたシューマン~リストの「献呈」で、やっといつもの彼女の顔が見えたような。

 ブラームスの「第1交響曲」でも、ふだんあまり聞こえないような声部が浮き彫りになったりして、その推進性豊かな演奏とともに、鈴木雅明の指揮に興味を惹かれる部分は確かに多い。だが、それを云々するのは、また別のプロ・オーケストラとの演奏を聴いてからの方がよさそうだ。

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