2022・1・26(水)新国立劇場 ワーグナー:「さまよえるオランダ人」
新国立劇場オペラパレス 7時
2007年にプレミエされ、今回が4度目の上演になる、マティアス・フォン・シュテークマン演出のプロダクション。
どんな特徴で、どんな印象を得たかは、上演の都度書いた(☞2007年3月7日、☞2012年3月14日、☞2015年1月21日)ので、ここではもう繰り返さないし、繰り返す気も起らない。私はこの演出、多くの部分で共感できないし、おまけに今回の上演では更に演技が緩くなり、舞台の緊迫度をいっそう薄めてしまっていたと感じられたからだ。
したがって今回の上演への興味は、ただその演奏者にあった。
指揮がジェームズ・コンロンに代わるガエタノ・デスピノーザ。歌手陣も外国勢の来日不可に応じて、すべて邦人勢で固められることになり、河野鉄平(オランダ人)、田崎尚美(ゼンタ)、妻屋秀和(ダーラント)、山下牧子(マリー)、城宏憲(エリック)、鈴木准(舵手)という顔ぶれとなった。それに新国立劇場合唱団(合唱指揮・三澤洋史)と東京交響楽団。
デスピノーザの指揮は、ワーグナーものとしてはやや素っ気ないものだが、そういう演奏は近年の世界的な傾向だろう。ただ彼の良さは、音楽を煽って盛り上げる呼吸の巧いところにある。その特徴は、第3幕で存分に発揮されていた。
歌手陣で気を吐いたのは、第一にゼンタの田崎尚美だ。力のある声で「ゼンタのバラード」や最終幕切れでの大見得などを聞かせ、オペラのカタストローフを鮮やかに決めた。
オランダ人役の河野鉄平は、この役にしては少し若々しい感だったが、絶望的な境地にいる男の苦悩を精一杯歌い演じていた、と言えようか。
ベテランの妻屋秀和と山下牧子はいつもながらの安定感であり、城宏憲もまっすぐな男としてのエリックを表現していた。ただ、鈴木准は、声の性質から、ワーグナーものにはあまり向いていないんじゃないかな、という気がするのだが如何。
新国立劇場合唱団は、第3幕では人数も増えたせいか、実力を発揮。これに対し東京交響楽団は、この劇場での「オランダ人」上演では毎回ピットに入っているのに、今回もこれまでと同様、音の響きが薄く、ホルンが肝心な個所で一度ならず音を外す、というケースが多い。このオケは、定期などステージ上での演奏は素晴らしいのに、ピットに入ると、どうしてこういう痩せた音になってしまうのだろう。
第1幕のあとにのみ20分の休憩が入り、あとの二つの幕は切れ目なしの版で上演された。終演はほぼ10時近く。
‥‥実は先週末から帯状疱疹に襲われ、激痛甚だしい。発症3日以内に治療を開始すれば事なきを得るそうだ(これは経験済みだ)が、今回は残念ながら、その「締切」に遅れたため、斯くの如し。この分では、しばらくコンサート通いを諦めなくてはならないかも?
2007年にプレミエされ、今回が4度目の上演になる、マティアス・フォン・シュテークマン演出のプロダクション。
どんな特徴で、どんな印象を得たかは、上演の都度書いた(☞2007年3月7日、☞2012年3月14日、☞2015年1月21日)ので、ここではもう繰り返さないし、繰り返す気も起らない。私はこの演出、多くの部分で共感できないし、おまけに今回の上演では更に演技が緩くなり、舞台の緊迫度をいっそう薄めてしまっていたと感じられたからだ。
したがって今回の上演への興味は、ただその演奏者にあった。
指揮がジェームズ・コンロンに代わるガエタノ・デスピノーザ。歌手陣も外国勢の来日不可に応じて、すべて邦人勢で固められることになり、河野鉄平(オランダ人)、田崎尚美(ゼンタ)、妻屋秀和(ダーラント)、山下牧子(マリー)、城宏憲(エリック)、鈴木准(舵手)という顔ぶれとなった。それに新国立劇場合唱団(合唱指揮・三澤洋史)と東京交響楽団。
デスピノーザの指揮は、ワーグナーものとしてはやや素っ気ないものだが、そういう演奏は近年の世界的な傾向だろう。ただ彼の良さは、音楽を煽って盛り上げる呼吸の巧いところにある。その特徴は、第3幕で存分に発揮されていた。
歌手陣で気を吐いたのは、第一にゼンタの田崎尚美だ。力のある声で「ゼンタのバラード」や最終幕切れでの大見得などを聞かせ、オペラのカタストローフを鮮やかに決めた。
オランダ人役の河野鉄平は、この役にしては少し若々しい感だったが、絶望的な境地にいる男の苦悩を精一杯歌い演じていた、と言えようか。
ベテランの妻屋秀和と山下牧子はいつもながらの安定感であり、城宏憲もまっすぐな男としてのエリックを表現していた。ただ、鈴木准は、声の性質から、ワーグナーものにはあまり向いていないんじゃないかな、という気がするのだが如何。
新国立劇場合唱団は、第3幕では人数も増えたせいか、実力を発揮。これに対し東京交響楽団は、この劇場での「オランダ人」上演では毎回ピットに入っているのに、今回もこれまでと同様、音の響きが薄く、ホルンが肝心な個所で一度ならず音を外す、というケースが多い。このオケは、定期などステージ上での演奏は素晴らしいのに、ピットに入ると、どうしてこういう痩せた音になってしまうのだろう。
第1幕のあとにのみ20分の休憩が入り、あとの二つの幕は切れ目なしの版で上演された。終演はほぼ10時近く。
‥‥実は先週末から帯状疱疹に襲われ、激痛甚だしい。発症3日以内に治療を開始すれば事なきを得るそうだ(これは経験済みだ)が、今回は残念ながら、その「締切」に遅れたため、斯くの如し。この分では、しばらくコンサート通いを諦めなくてはならないかも?
コメント
お大事に!
帯状疱疹は、疲れからでも出てくるようですね。お見舞い申し上げます。どうか、お大事になさってくださいね!
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お身体を大事に
体調が優れないと伺い、心配しております。東条さんのことは、「伝説のクラシックライブ」を読んでいた時、「プロデューサーの証言」の項で、1974年秋に来日した、PJBEのコンサートを、「アンサンブルでは、PJBEが白眉であろう」と紹介されたことでファンとなりました。私にとって、このコンサートは、その後の音楽人生を変える、非常に大きなものでしたので、紹介されたエピソードに心震えるものがありました。これからも、我々の音楽生活が豊かになるコメントを、無理のなさらない範囲で送って下さるよう、楽しみにしております。
何が起こるかわからないのがオペラ劇場
帯状疱疹の具合はいかがでしようか。お見舞い申し上げます。
藤原オペラの「トロヴァトーレ」初日は今回もまた役者たちの動きを含めて興ざめでした。
どうして歌手たちがほぼ前方に向かって無意味に手を広げて歌い続けるのか理解に苦しみました。時代遅れというのか演出家の存在感がないというのか不思議な状態です。歌手力がとても上がってきている国内歌手の実力を大いに発揮できる舞台作りを期待せずにはいられません。
脱線してしまいましたが、オランダ人を昨日観てきました。
先生とほぼ同じ感想を抱きました。
指揮者歌手の変更が多すぎて、今回は全く期待していなかったのですが、
全体の演奏の充実には大いに満足感がありました。(オケも三回目なので結構頑張っていました)
マリー役の山下さんが急遽出られなくなったとのことで、対応は大変だったようです。舞台上での初めのコメントには事情の説明はなく、変更を伝えるのみでしたが・・・「何が起こるかわからないのがオペラ劇場なのです」と大野監督が以前劇場でお話しされた言葉を思い出しました。
お体ご自愛ください。
藤原オペラの「トロヴァトーレ」初日は今回もまた役者たちの動きを含めて興ざめでした。
どうして歌手たちがほぼ前方に向かって無意味に手を広げて歌い続けるのか理解に苦しみました。時代遅れというのか演出家の存在感がないというのか不思議な状態です。歌手力がとても上がってきている国内歌手の実力を大いに発揮できる舞台作りを期待せずにはいられません。
脱線してしまいましたが、オランダ人を昨日観てきました。
先生とほぼ同じ感想を抱きました。
指揮者歌手の変更が多すぎて、今回は全く期待していなかったのですが、
全体の演奏の充実には大いに満足感がありました。(オケも三回目なので結構頑張っていました)
マリー役の山下さんが急遽出られなくなったとのことで、対応は大変だったようです。舞台上での初めのコメントには事情の説明はなく、変更を伝えるのみでしたが・・・「何が起こるかわからないのがオペラ劇場なのです」と大野監督が以前劇場でお話しされた言葉を思い出しました。
お体ご自愛ください。