2024-12

2021・11・12(金)ロリー・マクドナルド指揮東京シティ・フィル

      東京オペラシティ コンサートホール  7時

 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の11月定期に、スコットランド生れの指揮者ロリー・マクドナルドが客演。ティペットの「チャールズ皇太子の誕生日のための組曲」、ヴォーン・ウィリアムズの「揚げひばり」(ヴァイオリン・ソロは南紫音)、シベリウスの「4つの伝説曲(レンミンカイネン組曲」)を指揮した。
 英国の指揮者は概してシベリウスが巧いものだし、それを英国(連合王国)の作品と組み合わせるという選曲方針は面白いだろう。コンサートマスターは荒井英治。

 ティペットの組曲は1948年の作の由で、いかにも英国の作曲家だなと思わせる作風だが、率直に言うと━━どうもあまり面白くない曲である。一方「揚げひばり」は、これはもう名曲だし、南のソロともども極めて美しい。

 「4つの伝説曲」は、私の愛してやまない曲だ。昔チャールズ・グローヴズが指揮したレコードをカセットに入れ(そういう頃のことだ)、カーステレオで「レンミンカイネンとサーリの乙女たち」を鳴らしながらどこまでも続く海岸線を走っていた時、打ち寄せる波頭の上に無数の白い海鳥が舞い続ける光景と音楽とが見事に合致して、陶然たる気分に浸ったことがある。

 ただし今日のマクドナルドの指揮はそれより遥かにテンポも速く、ダイナミックで劇的で荒々しい。この第1曲がこんなに速いテンポで演奏されたのを聴いたのは初めてで、オーケストラがよくついて行けるものだとさえ思ったが、しかしシベリウス特有のひた押しに押す迫力が普通以上に見事に再現されていて、極めてスリリングで、面白かった。
 これは終曲「レンミンカイネンの帰郷」でも同様で、しかも大詰めの━━おそらくは主人公の目の前に故郷が開けた瞬間の━━音楽がぱっと明るくなる個所(練習番号Oから)が、少し荒っぽかったけれども明快に表現されていたのには感嘆。

 また緩徐テンポの中間2曲、「トゥオネラの白鳥」(今日は2曲目に置かれていた)での深みのあるイングリッシュ・ホルンを包む弦と、「トゥオネラのレンミンカイネン」を主導する弦の不気味でミステリアスな音色と表情も際立っており、シティ・フィルの弦がチェロを筆頭に、実に鮮やかに躍動していたことを特筆しておきたい。

 このマクドナルドという指揮者、かなり激しい演奏をつくるけれど、音楽の容は見事に守っている。いい指揮者だ。

コメント

なかなかの好演だと思いました。

 ティペットの曲については、よくある曲なのかな、と私も思いましたが、分かりやすい曲なので、演奏自体は意外と面白く、楽しめました。
 南さんの「揚げひばり」は、一刻一刻、大事にメロディーラインを美しく奏でて、鳥の様々な動きや情景が目に浮かぶようで、素晴らしかったです。南さんの演奏は、昨年は、清水和音さんとのデュオでベートーヴェンを聴きましたが、今年も拝聴の機会をこうした素晴らしい内容で得ることができて、大変、満足できました。
 シベリウスは、東条先生のおっしゃるように、また、個人的には分かりやすく、メリハリが効いた、快演だったと思いました。早い時期の再来日を、マクドナルド氏には期待したいと思います。

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