2021・11・8(月)リッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィル
サントリーホール 7時
全7回の日本公演のうちの5日目、東京公演の第2日。今日はプログラムの「B」で、シューベルトの「交響曲第4番《悲劇的》」、ストラヴィンスキーの「《妖精の接吻》によるディヴェルティメント」、メンデルスゾーンの「交響曲第4番《イタリア》」。アンコールはヴェルディの「運命の力」序曲。
久しく聞かなかった西ヨーロッパのオーケストラの音だ。やはりいいものである。ブリリアントで、独特の温かみを感じさせ、聴き手を魅惑する個性を備えていて、素晴らしい。
とはいうものの今日の演奏、歯に衣着せずに言えば、ウィーン・フィルにしてはちょっと弦がガサガサした音だな、という印象は拭い切れない。それにムーティにしては、かなりリズムが重い。
特にシューベルトの「4番」では、たっぷりと音符の長さを保って響く大編成の分厚い弦楽器群が楽曲全体のバランスを独占していて、それは極度に濃厚で重厚なシューベルトといったイメージを与える。まあ、これが最近のムーティの美学なのかもしれないが、率直に言うと、私はこういうシューベルトは苦手なので、些か辟易させられた。
メンデルスゾーンの「イタリア」も同じように分厚い響きの音楽づくりなので、中間の2つの楽章では主題の旋律の叙情的な美しさが多少犠牲にされた印象もなくはない。ただ終楽章は猛烈な演奏で、大編成の弦が嵐の如く荒れ狂うさまは物凄く、メンデルスゾーンが敢えてイ短調という調性を取ることによって描き出そうとしたサルタレロの魔性の情熱を、如実に浮き彫りにしていただろう。
結局、ストラヴィンスキーの「ディヴェルティメント」が、私には一番愉しめた。これも彼の新古典主義時代の作品の演奏としては、少し重いと言えば重いのだが、第2楽章(スイス舞曲)で管楽器群が聴かせた軽快なリズム、とりわけホルン群が奥の方から山びこのように響かせて来るリズミカルな主題の柔らかな美しさには、うっとりさせられた。
アンコールでのヴェルディ━━これはもう、別格だ。ムーティがここでは俄然奔放になり、思い切り解放感を漲らせてドラマティックな音楽を叩きつける。まあ、これが本来のムーティの姿かもしれなかった。
全7回の日本公演のうちの5日目、東京公演の第2日。今日はプログラムの「B」で、シューベルトの「交響曲第4番《悲劇的》」、ストラヴィンスキーの「《妖精の接吻》によるディヴェルティメント」、メンデルスゾーンの「交響曲第4番《イタリア》」。アンコールはヴェルディの「運命の力」序曲。
久しく聞かなかった西ヨーロッパのオーケストラの音だ。やはりいいものである。ブリリアントで、独特の温かみを感じさせ、聴き手を魅惑する個性を備えていて、素晴らしい。
とはいうものの今日の演奏、歯に衣着せずに言えば、ウィーン・フィルにしてはちょっと弦がガサガサした音だな、という印象は拭い切れない。それにムーティにしては、かなりリズムが重い。
特にシューベルトの「4番」では、たっぷりと音符の長さを保って響く大編成の分厚い弦楽器群が楽曲全体のバランスを独占していて、それは極度に濃厚で重厚なシューベルトといったイメージを与える。まあ、これが最近のムーティの美学なのかもしれないが、率直に言うと、私はこういうシューベルトは苦手なので、些か辟易させられた。
メンデルスゾーンの「イタリア」も同じように分厚い響きの音楽づくりなので、中間の2つの楽章では主題の旋律の叙情的な美しさが多少犠牲にされた印象もなくはない。ただ終楽章は猛烈な演奏で、大編成の弦が嵐の如く荒れ狂うさまは物凄く、メンデルスゾーンが敢えてイ短調という調性を取ることによって描き出そうとしたサルタレロの魔性の情熱を、如実に浮き彫りにしていただろう。
結局、ストラヴィンスキーの「ディヴェルティメント」が、私には一番愉しめた。これも彼の新古典主義時代の作品の演奏としては、少し重いと言えば重いのだが、第2楽章(スイス舞曲)で管楽器群が聴かせた軽快なリズム、とりわけホルン群が奥の方から山びこのように響かせて来るリズミカルな主題の柔らかな美しさには、うっとりさせられた。
アンコールでのヴェルディ━━これはもう、別格だ。ムーティがここでは俄然奔放になり、思い切り解放感を漲らせてドラマティックな音楽を叩きつける。まあ、これが本来のムーティの姿かもしれなかった。
コメント
ムーティの今
兵庫で拝聴しました!
兵庫のアクリエ姫路は、今年の9月にオープンしたホールです。そこに、ウィーンフィルが降臨してくださるとのことで、会場は割れんばかりの拍手でお迎えでした。昨年は、コロナ禍真っ最中の公演で、ピリピリした雰囲気でしたが、今年は演奏者側も聴衆も余裕やね。私は、ムーティーさんの最近しか知らないので、重いかどうか、わかりませんでした。が、最高峰の音色を堪能させていただきました。とりわけ、ストラヴィンスキーは素晴らしかったです。オケの方々のアイコンタクトも、ウィーンフィルらしくて。何より、コロナ禍での音楽大使としての役割を見事に果たしてくださることに、感謝で胸がいっぱいでした!
3日の初日と8日の公開リハを聴きました。やはり少し重々しい。ムーティの晩年のスタイルはこれか、と思ったが、精妙に音造りをしながら、沈潜とか、祈り、とかの方面に行ってしまう。カラヤンの晩年のスタイルに通じるものがあるように感じた。やはりストラヴィンスキーが色鮮やかな名演で、各楽器のソロも、間然とするところがない。
公開リハは、シューベルトとメンデルスゾーンで、シューベルトは、全曲通し、メンデルスゾーンは、1、4楽章は通して、2、3楽章は、冒頭からしばらく指示を出して、後は省略。