2024-12

2018・8・9(木)藤岡幸夫指揮日本フィル&反田恭平(ピアノ)
ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第5番」

     ミューザ川崎シンフォニーホール  7時

 これも「フェスタ サマーミューザKAWASAKI2018」の一環で、プログラムはラフマニノフの「ピアノ協奏曲第5番」とシベリウスの「交響曲第1番」。客席は大入り満員。

 ラフマニノフのピアノ協奏曲の「第5番」とは何だ? 
 すでにCDでも出ているから、御存じの方は御存じのはずだが、これは彼の「交響曲第2番」をピアノ協奏曲に編曲したものである。
 仕掛け人はブリリアント・クラシックスのプロデューサーであるピーテル・ファン・ヴィンケル、編曲はウクライナ出身のアレクサンドル・ヴァレンベルグという人。ステージ初演もマツーエフによって行われている。

 話題は確かに集まるだろうが、しかし、━━CDで聴き、また今回の日本初演を聴いた私個人の印象から言えば、これはやはり、一種のキワモノ的なものにしか思えぬ。
 一口に言えば、1時間の長さを持つ原曲の「第2交響曲」を抜粋して繋ぎ合わせて40分程度にまとめ、「それにピアノ・ソロを載せた」という域を出ていない作品なのである。しかもその編曲が、ピアノ・ソロが浮き出るようなバランスで行なわれていないので、ナマのステージで演奏された時には、ピアノがオーケストラに消されて聞こえない個所が多いのだ(この辺が、マイクでバランスがどうにでも変えられる録音とは違う)。敢えて言えば、ピアノ・コンチェルトとしては甚だ不完全なものと断じざるを得ないだろう。

 ただ、この編曲版の日本初演に情熱を傾けた反田恭平の意欲には、拍手を贈りたい。彼の演奏も━━といっても、カデンツァや、オケの咆哮の間を縫ってはっきり聞こえた個所の範囲でしか判断しようがないのだが━━体当り的な熱演だったのである。

 後半のシベリウスは、藤岡幸夫の十八番のレパートリーだ。クラリネットの最弱音には神経を行き届かせているように感じられたし、第4楽章大詰近くで弦楽器群がアンダンテでたっぷりと歌い上げるところも情感豊かな演奏だったことは疑いない。
 ただ概して、オーケストラを勢いに任せて煽り過ぎたのでは? 
 もっとも以前、彼がこの「1番」を関西フィルを指揮した演奏で聴いた時(2009年7月1日)にもやはりこういう演奏━━あの時には「ナニワの心意気というか、河内のオッサン的というか、そういうシベリウス」とか書いた覚えがある━━だったから、これは彼の一種の芸風なのである。エネルギッシュなのは大変結構だとは思うが、しかし、オーケストラがついて来られなければ何にもなるまい。

 日本フィル(今日のコンサートマスターは千葉清加)も、トランペットの粗い演奏をはじめ、定期の時の丁寧な演奏とはかなり異なり、まるでラザレフが首席指揮者に着任する以前の、十数年前の「荒々しい日本フィル」の亡霊が蘇ったような印象を受けた。勢いが良いことはいいけれども、乱暴な演奏は決して好ましいものではない。

コメント

お久しぶりです。このコンビを来年2月に大分で聴く予定の私にはちょっと気になる評価ですね。藤岡氏はTwitterを拝見してもBSで担当してるクラシック中心の音楽番組を拝見しても、男っぽく気取らない雰囲気で好感が持てますが、それがまた指揮する時の「芸風」にも繋がるのでしょうか。
 曲についての「キワモノ」との評価と反田氏への賛辞の区別が分かりやすかったです。

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