2024-12

2017・3・14(火)ラドミル・エリシュカ指揮札幌交響楽団東京公演

     東京芸術劇場 コンサートホール  7時

 昨年6月以来、久しぶりに聴く札響。名誉指揮者ラドミル・エリシュカとの今回の東京公演は、メンデルスゾーンの「フィンガルの洞窟」、シューベルトの「交響曲第5番」、ブラームスの「交響曲第1番」というプログラム。

 エリシュカは満85歳だが、元気なこと! 姿勢も良く、歩くのも速いし、指揮姿が活発で、何よりオーケストラから引き出す音楽がエネルギッシュで若々しい。
 シューベルトの「5番」第1楽章での闊達なテンポ、引き締まってアクセントの強いリズム感、ヴィヴィッドな躍動感は、驚くほどである。そしてブラームスの「1番」での、これまた水際立った颯爽たるテンポ感は鮮やかそのものだし、中間2楽章での叙情性をこれだけ瑞々しく浮き彫りにする指揮者は決して多くない、と思わせる。

 全体に真摯で率直な音楽づくりだが、たとえばシンフォニックな構築で滔々と押して行った「フィンガルの洞窟」の幕切れで、突然大きくテンポを落し、終結和音を劇的に繰り返し叩きつけるといった術にも事欠かない。とりわけ、ブラームスの第4楽章の終結で、劇的なアッチェルランドを経てティンパニの壮絶な強打、毅然たる終結和音の反復にいたるまでの昂揚感は卓越したものがあった。
 アンコールで指揮したドヴォルジャークの「ユモレスク」も、不思議な懐かしさを醸し出して、さすがにチェコの名匠の指揮だなと感じさせる。

 札響も、素晴らしい演奏をした。エリシュカのヒューマンな音楽性を、今や完璧にその演奏の中に一体化しているといえるだろう。コンサートマスターには田島高宏、トップサイドには大平まゆみが座る。
 弦の良さは以前からの札響の特徴だが、この日も生き生きとした表情に富んでいた。欲を言えば、メンデルスゾーン、シューベルト、ブラームスの3曲とも、いずれも同じ音色で演奏されていたのには少々疑問があるが━━その音色が最もぴったり曲想と合っていたのは、多分ブラームスに於いてであろう━━それはしかし、今のところはどうでもよい。各都市のオーケストラが真摯に音楽に取り組んでいるさまを視て、聴くのは、大いに喜ばしいことである。

 今月は、この他にも各都市のオケを、名フィル、広響、群響、オーケストラ・アンサンブル金沢、京響、仙台フィル、関西フィルを聴く予定だ。おそらくどれも期待を裏切らないであろう。

 終演後の出口では、いつものようにスポンサーの「ホクレン」から「てんさい糖」100g入りの袋が土産に配られる。これを貰うのが目的で札響東京公演を聴きに行くわけではないけれども、オリゴ糖を多く含んだこの「てんさい糖」は美味しいので、貰えるのはやはり嬉しい。

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