2024-12

2016・4・29(金)準・メルクル指揮新日本フィルハーモニー交響楽団

      サントリーホール  2時

 先週のフランス・プロは、残念ながらスケジュールの関係で聴けず。
 今日は「スコットランド特集」で、ドビュッシーの「民謡の主題によるスコットランド行進曲」、ブルッフの「スコットランド幻想曲」(ヴァイオリン・ソロは豊嶋泰嗣、ハープは平野花子)、メンデルスゾーンの「交響曲第3番《スコットランド》」というプログラム。コンサートマスターは西江辰郎。

 この数年来、メルクルが新境地を示しはじめていることは、いくつかの演奏会を聴いて承知していたのだが、今日の「スコットランド」などを聴くと、明らかにそれが確認できるような気がする。

 弦をかなり硬質な響きで弾かせているのは私の好みに合わないけれど、それに管の独特のバランスが加味されると、オーケストラの音色にある種の透明感が生れるのは事実で、これはなかなか面白いものがある。
 しかも、木管群を明確に響かせ、ふつうなら弦の背後に隠れるようなフレーズをはっきりと浮き出させつつ交錯させるため、特に第3楽章を中心に、音楽が聴き慣れたものとは異なった様相で立ち現れて来ることも多く、新鮮なイメージを与えてくれるのである。

 何より感嘆させられたのは、メルクルがメンデルスゾーンの音楽を、極めて緊迫感に満ちた推進性のある世界として再現していたことだ。第1楽章主部での、たたみかけるような猛烈な追い上げの迫力には息をのまされたし、嵐の個所での攻撃的なクレッシェンドとデクレッシェンドにも驚かされる(その迫力は、部分的に、1941年録音のトスカニーニ=NBC響の演奏を思い出させるところもある)。

 このメルクルの指揮は、「スコットランド交響曲」の全曲が、エディンバラの古城での悲劇的な事件のイメージで覆われていること、そしてもう一つ、メンデルスゾーンが一般に考えられているような、おっとりした「幸福な天才」では必ずしもないこと━━という、彼の解釈を示しているようにも聴き取れるのだが。

 ドビュッシーの行進曲も、硬質な弦と、強く響く木管との不思議なバランスの音色によって、バグパイプを思わせるサウンドを巧く再現していた。
 またブルッフの「幻想曲」でも、オーケストラ・パートは、ふつうの演奏によくある憂愁感というより、一種の剛直な精神に支えられているような感を受けた。そういえばこの曲の第4楽章の主題は、ベルリオーズも「ロブ・ロイ」序曲に取り入れている、スコットランドの「戦いの歌」でもあった・・・・。
      別稿 モーストリー・クラシック7月号 公演Reviews

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