2024-12

2016・4・24(日)大阪4大オーケストラの響演

    フェスティバルホール(大阪)  5時

 昨年4月22日の第1回に続いて今年も開催された、大阪オーケストラ界のユニークな大企画。「第54回大阪国際フェスティバル」の一環。

 今年は、最初に外山雄三指揮大阪交響楽団がストラヴィンスキーの「カルタ遊び」を、続いて井上道義指揮大阪フィルハーモニー交響楽団がラヴェルの「ダフニスとクロエ」第2組曲を演奏。
 そして第2部では、飯守泰次郎指揮関西フィルハーモニー管弦楽団がワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」からの「前奏曲と愛の死」を演奏、最後に飯森範親指揮日本センチュリー交響楽団がベートーヴェンの「交響曲第5番《運命》」で締めるというプログラムだった。

 1都市の4つのオーケストラが一堂に会し、順番に演奏して見せるなどというイヴェントは、多分他に例はなく、いわゆる「関西のノリ」ゆえに出来ることだろう。
 昨年同様、各団体や指揮者がそれぞれ「やりたいもの」を出して来たプログラムがよく出来ている。前半には20世紀の対照的な性格を持ったバレエ音楽があり、後半にはドイツものがある。しかも全体を通じ、音楽史を遡る流れになっている。

 大阪響(コンサートマスターは林七奈、以下同)を指揮した外山雄三は、そのミュージック・アドバイザーに就任したばかり。生真面目で隙のない指揮で、新古典主義の作品を整然と構築する。それは俗受けする面白味に少々不足したとはいえ、大阪響が極めて引き締まった演奏を聴かせたのが注目された。オケのアンサンブルをもう一度整えるには、このような路線が適切なのかもしれない。

 続く井上道義と大阪フィル(田野倉雅秋)は、4団体のうち唯一の16型4管の大編成で、奔放華麗な大絵巻の演奏を披露してみせた。一転して飯守泰次郎と関西フィル(岩谷祐之)は、息の長い厚みのあるワーグナーを聴かせ、7月の「トリスタン」第3幕演奏会形式上演の予告編とした。
 そして飯森範親と日本センチュリー響(客演の高木和弘)は、12型2管編成ながらコントラバスを6本とし、大トリを飾るにふさわしい渾身の大熱演を聴かせて、特に第4楽章冒頭と展開部での昂揚感は見事なものがあった。

 近年、大阪のオケのアンサンブルが荒れ気味になっているのではないか、という印象があり、内心危惧していたのだが、今日の演奏を聴くと、センチュリー響には「ハイドン交響曲ツィクルス」でアンサンブルを鍛えている成果が如実に感じられたし、大阪響も前述のように引き締まった演奏を聴かせてくれたのは嬉しい。関西フィルも飯守の大波のようなワーグナーをよく再現していたと思う。
 ただし大阪フィルは、「いっちょう派手にやったろかい」という雰囲気が見え見えの演奏で、それはそれで大変結構だし、井上らしい面白さもあって良かったのだが、ことアンサンブルという点に限って言えば、老舗の大オケの油断(?)のようなものがチラチラと・・・・と、感じられたのだが如何。

 今回聴いたのは、2階席正面最前列だが、そこでは概して金管が正面から炸裂して鋭い音になり、また低音があまり響いて来ないという癖があるようだ。
 ただその中で、日本センチュリー響が採っていたコントラバスを正面奥に、トランペット(2本)を上手側に、という配置が、最もバランスよく聞こえたように思う。とはいえ、下手側の席にいた知人はトランペットが正面から飛んで来て少々・・・・とのことだったから、聴く位置によりすべての印象が変わって来るのは致し方ないようである。

 なお、オケの入れ替えに伴う大変なステージ転換作業は、今回も人海戦術により鮮やかに進められていた。特に第1部での、大阪響が退場してから大阪フィルの演奏が始まるまでわずか10分━━という進行は、偉とするに足る。
 大勢のスタッフの流れるような動きとともに、椅子と楽器がステージいっぱいに拡がって配置されて行くさまは、一種スペクタクルで、爽快であった。その動きを楽しんだお客さんもいたと聞く。

 4人の指揮者のプレトークも、面白い。演奏終了後にはまた4人の指揮者がステージに登場、各オーケストラの定期のチケットが当たるという抽選会が行われた。そういう場での仕切りは、やはり飯森範親が一番上手い。
 また笑いや不満のつぶやきなど、聴衆の率直な反応が、いかにも関西らしくていい。

 この演奏会は、オーケストラの聴き比べという、千載一遇の好機ともなっていたので、聴衆がどのオケを選んでその定期会員になろうか、という選択にも役立ったのではないかと思う。
 7時半頃に終演。意外に早く終った。
        別稿 モーストリー・クラシック7月号 公演Reviews

コメント

私も拝聴しました!

はじめまして。私も、大阪フィルさんの老舗の油断をふと感じてしまいました。個人的には、関西フィルさんのまったり感が良かったです。配置転換の手際よさも退屈しなくてブラボーものでした。こういう関西のノリって好きやなぁ♪

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