2024-12

2015・12・23(水)エリアフ・インバル指揮東京都交響楽団の「第9」

     東京芸術劇場 コンサートホール  2時

 3回公演の初日。協演は二期会合唱団、安藤赴美子、中島郁子、大槻孝志、甲斐栄次郎。コンサートマスターは矢部達哉。
 尖ったユニークな演奏の「第9」を続けて聴いた直後だけに、このオーソドックスな、正面切ったタイプの演奏がとてつもなく新鮮に聞こえる。

 一口に言えば、実に堂々たる「第9」である。ベートーヴェンの英雄的なイメージが押し出された、毅然たる風格にあふれた「第9」だ。16型の弦、倍管(4本)の木管という編成が、どっしりとした安定感のある音をつくり出す。インバルらしくがっしりと組み立てられた、一分の隙もない厳しい演奏であった。

 「歓喜の主題」が初めて全合奏で登場する個所など、その演奏の威容たるや驚くべきものだし、第4楽章最後のプレスティッシモでは、途中から一段、また一段と音楽の強度を上げて行くのだが、これがまた凄い。これだけ筋金入りの演奏の「第9」は、滅多に聞けない類のものではなかろうか。
 その一方で、第3楽章の第1主題など、率直かつ自然に演奏されているのだが、その不思議な美しさはたとえようもないのである。

 都響も、完璧に近いほどの見事な均衡をその演奏に保っていた。合唱もオケとよくバランスの取れた力強さを示していた。
 ソリストのうち、テノールにはもう少し「英雄的」な迫力が欲しかったところだが、アンサンブルとしての4人の均衡は良かったと思われる。

 演奏時間という点では━━第3楽章の前に合唱団とソリストらを入場させたので、それらの時間を差し引くと、正味64分程度か? 第2楽章前半のスケルツォは反復していない(トリオの指定個所はリピートされていた)。

 今日もこれ1曲。私などはこの方が「第9」に集中できて好いのだが、お客さんとしては、どうなのだろう。

コメント

第9

私も「第9」1曲だけの方がいいと思います。
昔マエストロ朝比奈(だったかな)はチューバとハープの出番がないので「第9」の前にマイスタージンガーの前奏曲を置いたとのことですが、もう今はそんな気を使う必要もないですしね。それにしても最近は早いテンポが多い。

とても感動しました。

いつもコンサート日記をワクワクしながら読ませていただいています。

第九は第1楽章が好きで、再現部辺りから、インバル&都響の底力に嬉しくなって、何と素晴らしい第九なんだろう!と夢中になって聴き惚れていました。
> 「歓喜の主題」が初めて全合奏で演奏される個所
ここで、私は涙腺がゆるみ胸が一杯になりました。このような緻密かつ正々堂々と熱意にあふれたベートーヴェンを聴いてとても感動しました。感動のあまり私事で恐縮ですが、私は突如ミーハーになり、年甲斐もなくサイン会の列に並び、iPhoneの裏にインバルのサインをいただきました。これはもう年末ミーハーになった私の宝物です。普段はカバーを付けているので見えませんが、激務に根をあげそうになったときはiPhone裏面のサインをそっと見て、この日の感動を思い出そうと決意しております。それぐらい深く感銘しました。

関東在住ですが元々関西出身の私にとっては、朝比奈隆、大阪フィルの年末の第九が大切な思い出です。朝比奈亡き後の今も変わりなく第九の後は、舞台を真っ暗にして、合唱指揮者、ペンライトを持った合唱団員の方々によって蛍の光が歌われる・・・。蛍の光はプログラムに記載されていませんが、曲が終わりに近づくにつれて一人また一人と退場して行く、あの名物イベントは趣深く、私は好きです。今回の素晴らしい二期会合唱団の演奏で、蛍の光のような何か気の利いた合唱曲を第九の後にぜひ一曲聴いてみたかった。私はこのように思いました。長文失礼いたしました。

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