2024-12

2015・12・4(金)オスモ・ヴァンスカ指揮読売日響のシベリウス(終)

      サントリーホール  7時

 シベリウス・ツィクルスの第3夜、最終回。交響曲の「5番」「6番」「7番」が演奏された。先日のラハティ響の演奏会の時と同様、シベリウス・ファンにとっては、このプログラムは至高のものと言っていいだろう。

 今のヴァンスカのシベリウスが、激しく攻撃的で、強い意志力にあふれた音楽づくりであることは、すでに書いた通り。今日の3曲もそういうタイプの演奏といえるだろう。読響(コンサートマスターはゲストの荻原尚子、ケルン放送響のコンサートミストレスである)も持ち前の馬力で完璧に応じた。

 「5番」が作品の性格からして壮大な表現になっていたことは当然だが、ふつうはやや軽い曲想と考えられている「6番」が、これほど激動を秘めている曲なのだと感じさせる演奏は、そうは多くないだろう。第3楽章から第4楽章にかけての追い込みは壮烈を極め、息をのませるほどの力にあふれていた。

 「7番」においても、緊張感を失わず、強力な弦の響きを中心に滔々と押して行く演奏が見事というほかはない。
 曲の冒頭、上昇するコントラバスが、チェロに対してシンコペートしていることをこれだけ明確に聴かせる演奏には久しぶりで出会ったような気がする。全曲の最後の音はスコアに比較的忠実に、あまり延ばさずに終ったが、これはそこのクレッシェンドがそれほど大がかりでなかったことと併せ、ちょっとあっさりし過ぎていて、なんか拍子抜けの感がなくもなかったが━━。

 しかし、ヴァンスカ&読響のこのシベリウス・ツィクルス、とにかく聴き応えがあった。願わくは、今回やらなかった「3番」と「4番」、それに「クレルヴォ交響曲」を、なるべく早い機会にやってもらいたいものである。

コメント

荻原さんってWDRのコン・ミスだったのですか。チャーミングな方ですね。ポニーテールが良く似合ってて素敵でした。キャハ・・・それはさておき、前半の5番は、この指揮者の演奏としては締まりが無いというか、どうも隙の多い演奏だったような気がします。ロマンチックな1番では情熱と勢いである程度は聴かせられますが(決してそれだけだったわけではないが)、さすがに後期の作品ではオケの透明感が本国のオケには及ばないのは致し方ないか・・・と思っていたら後半は幸いにも改善されていました。白眉は6番でした。アンサンブルの精密さ、響きの純度といった点でも本国のオケに勝るとも劣らず、この曲の叙情性を余すことなく伝えてくれていました。そして7番、やはりこの2曲は一緒に聴きたい。最後の終止音の長さですが、私は丁度良いと思いました(フィンランド放送響もそうでした)。まるで地平線の彼方へスウッ っと吸い込まれて消えていくように無くなる。今のは夢か幻か・・・、或いは気付かぬうちに自分が死んでいるような・・・(虚無)、「あれっ、終わっちゃったの・・・」といった感じがこの曲には相応しい気がします。確かにこんな音楽を書いてしまったらもう先へは進めません。

1階16列で聴きました。
日本における「シベリウス記念年」のオール・シベリウスプログラムによる諸公演中、その掉尾を飾る秀演に巡り合えた幸せに咽びました。作品の扱いの精緻さでも、響きの繊細さの限りを尽くした周到さでも、単なる感銘を超えたものを感じました。これまでの数多くのヴァンスカ指揮読響による公演の中でも、ひときわ優れた演奏だったと思います。

以下は余談です。
ヴァンスカは"BBCプロムス2015"でもBBC響を振って同じ「5・6&7番」を振っていますが、私はこの読響との演奏に止めを刺します。また、カム指揮ラハティ響の同じプログラムより、遥かに聴き応えと完成度の高さで優りました。

ところで聴衆の反応は、ヴァンスカ読響の感銘深いエンディングに対して、かなり早過ぎる拍手が気になりました。カム指揮ラハティ響ではもっと酷く、殆ど無神経と云うべき会場を覆うフライング拍手と蛮声とで感銘はかき消されていました。ラハティ響のプログラムノートには、ご丁寧にも「曲の感銘をじっくり味わってから」という旨の記述が添えられていたのですが。これが日本のシベリウスファンの中核たるラハティ響ファンたちの実体なのか、と暗澹たる思いで会場を後にした次第です。オケの音色には魅力を感じましたが、カムの指揮の大雑把さには???でした。

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