2024-12

2015・7・17(金)ロシア国立響 チャイコフスキー3大交響曲

    りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館コンサートホール 6時30分

 「日本初の快挙、チャイコフスキーの交響曲4番、5番、6番《悲愴》を一挙演奏!」と大々的に謳い、ワレリー・ポリャンスキー指揮するロシア国立交響楽団がツアーを組んでいる。全14回公演のうち、11回がこの3交響曲を並べたプログラムである。

 これはしかし、前代未聞のプログラムだろう。快挙というより怪挙か? 正味約2時間20分、20分ほどの休憩を入れて計約3時間強。
 オペラなら並みの長さだし、続けて聴いてもどうということはないが、各々別個のアクの強い性格を備えた長大な交響曲を3曲続けて聴くとなると、音楽の構成が全く異なるがゆえに、いかに演奏時間が同じとはいえ、かなりの精神的重圧を感じてしまう。
 もっとも、熱烈なチャイコフスキー・ファンなら、平気で愉しめるだろう。私もチャイコフスキーは好きな作曲家だし、現にこの3曲は、自分がクラシック音楽を好きになった頃にはベスト1とか2とかに入れていた曲だから、今でもそれなりに好きではあるけれど、しかし・・・・。

 ロシア国立交響楽団と表記されているが、あのスヴェトラーノフが率いていたオーケストラとは違い、かつてロジェストヴェンスキーが指揮していた「モスクワ・シンフォニック・カペレ」または「ソビエト国立文化省交響楽団」の流れを受け継ぐオーケストラだとのこと。プログラム冊子掲載の英語表記には、State Symphony Capelle of Russiaという名称も見られる。

 さてこの、ロシア流に言えば「ポリャンスキーのオーケストラ」だが、いわゆる爆演を聴かせる面はあるものの、全てを野性的な荒々しさだけで押し切るタイプではない。
 「4番」は、たしかに大きな音だが、演奏の表情自体は意外に抑制されたものだった。あの第4楽章も、往年のソ連の巨匠たちがよくやったような猛烈な速度で演奏されたりはしなかった。
 とはいえ、「5番」第1楽章主部になると、途端に爆演、豪演に近くなる。荒っぽくなるところもある一方、非常に豊麗になる時もある。
 弦の艶は、さすがロシアのオケらしく、見事なものだ。「4番」第3楽章のピッチカートなど、なかなか壮麗なものだった。

 3曲を毎晩演奏するとなると、いかにタフな彼らでも、疲れたり、飽きたりするのではなかろうか。乱暴な演奏も時には現れる。弦の一人だけが突然大きな音を出すなどという奇怪なこともある。しかし、巧いバランスで響かせるなと感心させられるような演奏のところも、結構多い。

 ポリャンスキーが気合を入れると、途端に物凄い演奏になる。「悲愴」第1楽章再現部の、第2主題が出る前までの部分━━全管弦楽が最大級の咆哮を続ける個所など、大音響そのものが一種の魔性を帯びたものになる。まるで手負いの恐竜が最後のあがきを続け、ついに打ち倒れて息絶える(第301~304小節)といったような、猛烈な演奏だ。
 そのわりに第3楽章の行進曲は抑制したテンポを採って、あまり狂乱せずに結ぶ。第4楽章でも思いのほか淡々とした演奏だったのは予想外であった。

 3曲並べてプログラムを構築するからには、「5番」を頂点に持って来るつもりだったのかと思いながら聴いていたが、その第4楽章もごく普通の昂揚程度で結ばれていた。結局ポリャンスキーは、ただ3曲それぞれの特徴を生かしつつ続けて演奏してみせたということになるのだろう。

 「悲愴」終楽章最後のコントラバスの連続する3連音符の個所を、4分の3拍子のリズムをはっきりと保ったまま演奏して結んで行ったが、これは少し違和感がある。
 ともあれ、重量感とエネルギーの点では、やはり桁違いのものだ。オーケストラとしては、本気になれば、かなり高い水準に属する団体だろうと思う。
 9時40分頃終演。

コメント

7/20大阪ザシンフォニーホール。チャイコフスキーの交響曲1曲だけだったら行かなかったかも。結果は大正解、
弦は15,12のVN配置。ソロ楽器は交代しながらの演奏。悲愴は女性のティンパニー、〔見事}、指揮台を使わない指揮ぶりも珍しい。合唱指揮者の名残か。続けて聞くと5番が案外起伏が少ない曲に感じられるから不思議だ。クライマックスで指揮者があおると一番後ろの奏者まで必死の形相でひきまくる。日本のオケでは見られない風景だ。さすがロシアの楽団。
4番から聴衆の拍手が鳴り止まない。悲愴の終りでは指揮者の合図までの10秒ほどの無音がいい。3楽章の終わりで1人が声を出し拍手をしたが今日は許せる。
演奏者、聴衆、ホール〔日本で最初のシンフォニーホール〕三位一体の1夜だった。この曲目で11回もやるとはほとほと感心する。持ち込まれCDは5番の後に完売。皆さん耳が高い。

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