2024-12

2015・7・4(土)ロッシーニ:「ランスへの旅」2日目

    日生劇場  2時

 先ごろ大阪でも上演されたアルベルト・ゼッダ指揮、松本重孝演出の新プロダクション。
 共同制作として、藤原歌劇団、日生劇場、東京フィル、大阪国際フェスティバル、フェスティバルホール、ザ・カレッジ・オペラ・ハウス━━が名を連ねているが、東京公演プログラム冊子に見る雰囲気は、藤原歌劇団/日本オペラ振興会の主導だ。

 荒田良の舞台美術、前岡直子の衣装とともに、松本重孝の演出は、きわめてトラディショナルなスタイルだ。エンディングでも国王の戴冠式行列を客席から出すなどというお遊びもなく、ストレートに進めている。
 ただし演技はかなり細部まで神経が行き届いている。主役歌手はその都度正面を向いて歌うけれども、脇役や助演者は背後でいろいろ細かい芝居を繰り広げているという舞台構築は、なかなか良い。

 それになんといっても、この日生劇場の空間が実に手頃で、━━私がこの劇場が好きな理由は、アプローチとホワイエのいかにも劇場的な品のいい雰囲気と、舞台と客席のほど良い空間的広さにあるのだが、━━このロッシーニのオペラなどでは、劇場の適度な規模が十二分に生きる。

 音楽面では、87歳のゼッダが相変わらず元気で指揮をし、東京フィルも引き締まった演奏を聴かせてくれた。
 トリプル・キャストの今日の配役は、コリンナを砂川涼子、メリベアー侯爵夫人を向野由美子、フォルヴィル伯爵夫人を清水理恵、コルテーゼ夫人を平野雅世、ベルフィオーレを中井亮一、リーベンスコフ伯爵を岡坂弘毅、ドン・プロフォンドを安東玄人、トロンボノク男爵を森口賢二、ドン・アルヴァーロを谷友博、・・・・書き切れないのでここまでで失礼するが、みんな自分の出番はここぞとばかり張り切って歌うさまが面白い。特に砂川と中井の二重唱は、客席を大いに沸かせた。
 5時頃終演。

(この日のパンフレットに挟みこまれていた「配役変更」は、実は別の日についての「お知らせ」でした。そそっかしくも・・・・。リーベンスコフ伯爵役は当初の予定通り、岡坂さんです。最後の部分は、削除しました。お知らせ下さったⅰさん、御礼申し上げます)

コメント

雨の初日に行ってきました。(1階A列中央)

ゼッダのすぐ後ろで、ゼッダの表情の一コマ一コマも逃さないように聴き、眺めてきました。ゼッダの少しも無駄のない動き、ちょっとした表情の変化によってオケも、声も変わる魔法を見る思いがしました。アリア一曲分もあるフルートの長いソロは、この歌劇団の最高の「プリマ」以上に聴こえました。またピッツィカートひとつとっても、ロッシーニの躍動する活き活きとした鼓動が伝わってくるようで、私の胸まで躍るのでした。

この「ランスへの旅」の東フィルは、新国立で「沈黙」を担当した東フィルとは別働隊だった筈。ところがどちらの東フィルも、失礼ながらいつになく素晴らしい演奏を聴かせてくれました。東フィルの真の底力を初めて知った短期間での2公演でもありました。下野竜也とアリベルト・ゼッダという真に優れた指揮者の力と作品に対する気構え次第で、オケはこうも目覚ましく変わるのかと、改めて実体験した次第です。

オペラ「ランスへの旅」は、敢えて言えば筋らしい筋の無いオペラ。壮麗な「ガラ・コンサート」と思えばそれで充分楽しめます。特にアカペラで歌われる13重唱(!)のアンサンブルまであるのです。アカペラでもゼッダは顔の表情のほんの僅かな変化だけで指示を与え、歌手たちもその通りに表現する様は見物でした。いつもの藤原スタンダードを遥かに超えるレヴェルの歌唱が繰り広げられたことも特記しておきたいと思います。

尚、初日公演にはNHKのカメラ収録が入っていました。放映時期は未定でやや遅くになるようですが、「プレミアムシアター」枠で放送されることは確実です。

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